いま、最高の一本に出会える

史実に基づくオリジナルストーリー
正統派時代劇『武蔵-むさし-』が登場

5月25日(土) 全国公開
『武蔵-むさし-』作品情報 |
公式サイト

『蠢動-しゅんどう-』で高評価を集めた三上康雄監督の最新作『武蔵-むさし-』が公開になる。本作は剣の道に生きた男・武蔵の姿を史実に基づくオリジナルストーリーで描く本格時代劇だ。日本を代表する名優のひとり松平健が武蔵と対峙する小次郎を演じるほか、目黒祐樹、水野真紀、中原丈雄、清水紘治、原田龍二、遠藤久美子、そして武蔵役に細田善彦ら総勢12人の豪華俳優陣が集まった。なぜ、三上監督は製作着手から公開まで6年という長い時間をかけて “本物の武蔵”を描こうとしたのか? 作品にどんなメッセージを込めたのか? 監督へのインタビューを通じて、スクリーンで何度も堪能したくなる『武蔵-むさし-』の魅力と核心に迫る!

“本物の武蔵”を描く本格時代劇

“宮本武蔵”はこれまでも繰り返し時代劇や小説で描かれてきたが、本作は史実に基づき“本物の武蔵”を描いた作品だ。「ずっと剣道をやっていましたから、武蔵は憧れの存在でした」と三上監督は振り返る。「過去に描かれた映画や小説では武蔵は剣聖で剣豪。こんな人、本当にいるのか?と思うぐらいのヒーローですから、いつかは映画化することにより体感してみたいと思っていました。そこで『蠢動-しゅんどう-』を完成させて、みなさんから評価していただいたところで、この映画に取り掛かりました」

本作の舞台は関ケ原の戦いが終わり、徳川家が天下を掌握しようとしていた頃。幼い頃から父に厳しく鍛えられてきた若者・武蔵は剣術の名門・吉岡家に挑むため、京を訪れる。武蔵は吉岡家の当主と試合するつもりでいたが、様々な思惑が重なり、当主の弟や一門の数十人を巻き込んだ熾烈な戦いになってしまう。戦っても、斬っても進むべき道を見いだせずに悩む武蔵。やがて彼は豊前細川家の重臣・沢村大学の勧めで、細川家の剣術指南を務める小次郎との試合をすることに。

これまでのイメージと違い、本作に登場する武蔵は迷い、悩み、苦しむリアルな人間として描かれている。三上監督は「だからこそ、この映画の武蔵は今の若い人にとっては身近なキャラクターかもしれません」という。「彼はすごくピュアな人で、近づきがたい人ではなく、我々と同じように悩むし、同じように苦しむ。彼は強くはなりたいけど、人を斬りたくはない。でも、斬らざるを得ないので斬ってしまう。その複雑さがドラマチックと思ったのです」

誰もが名前は知っている男の“知られざる実像”を描いた作品が『武蔵-むさし-』だ。

リアルな人間ドラマと
緊迫のアクション

史実に基づいたストーリーを描き出すため、三上監督はシナリオハンティングから脚本の決定稿を書き上げるまで4年間を費やした。「調べれば調べるほどに“なるほど!そういうことだったのか”ということが積み重なっていく。だから人物を調べることでドラマが生まれてきた感じで、ロケハン、キャスティング等の製作準備と脚本の執筆は並行して進んでいきました。丹念に調べることで剣豪でも剣聖でもない武蔵の姿が見えてきましたし、これまで“紅顔の美少年”と言われてきた小次郎も実際は違うとわかってきた。僕がこの映画をつくる中で見つけた“意外な発見”をお客さんにも楽しんでもらえると思います」

その一方で、三上監督は登場人物の背後にある時代の流れや当時の倫理観、政治の動きなども巧みに作品に取り込んでいる。「僕は家業を継いで社長をやっていたこともあるので、“組織”の単位で物事を見ることもしてきたわけですが、この映画もある意味では組織を描いている。そういう意味では家業をやってきたことは決して無駄ではなかったと思っています」

個人の想い、組織の思惑、時代のうねりが絡み合い、それらが衝突する場面で剣が交わる。本作のアクションシーンは緊迫感のある場面の連続で、登場人物たちの荒々しい息遣いや迷い、決断がつぶさに描き出され、すべての要素が積み重なって“武蔵と小次郎の試合”につながっていく。「僕の撮影現場はテストを1回やったら、もう本番です。僕も俳優さんもスタッフも事前に準備をしっかりとしていますから“何となく撮ったカット”はひとつもないですし、撮影は基本的に“真剣勝負”だと思っています」

とことん作品! 三上康雄監督の情熱

長い時間をかけて自作に取り組む三上監督は「脚本も自分で書きますし、ロケ地も小道具も自分で選びます。チラシもデザインも自分でやりますから、映画を準備して、完成させて、宣伝するところまでが“本番”なんですよ」と笑顔を見せる。

「ピカソの絵はピカソのものであって、絵の具屋さんのものではないですよね?だから映画も様々な要素が統合され、おおぜいの方々の協力はありますが、やはり作家である僕のものでないとおかしいと思っています。だから事前にしっかりと準備して、俳優さん、スタッフから何を質問されてもすべて答えられる状態にしています。僕はスタンリー・キューブリック監督を尊敬しているのですが、彼は映画づくりの全工程を自分でやりますよね?僕にとっては彼が先人なんです。だから、僕も自分ですべてをやるし、『2001年宇宙の旅』のように何度観ても新しい発見のある映画を作りたいと思っています」

自身のキャリアや家業を継いで得た知識や技術を総動員して制作された『武蔵-むさし-』は、監督の言う通り“三上康雄の作品”だ。だからこそ三上監督は前作『蠢動-しゅんどう-』に続いて本作でも“戦う人々のそれぞれに正義がある”というテーマを取り上げている。「一人が善人で、他の人々が悪人ということはないんですね。その部分はいつも描きたい思っていますから、この映画を武蔵の目線で観る人もいるでしょうし、小次郎の目線、細川家の目線で見る人もいると思います。いろんな見方があっていいですし、本当にたくさんの伏線をはり、いろんな設定や感情を織り込んだので、1回観ただけではすべてがわかるような映画ではないと思います。観れば観るほど新しい発見があり、解釈もかわるかもしれません。なぜなら作品だからです(笑)」