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賭博師ボブ

ヌーヴェル・ヴァーグの先駆者といわれるメルヴィル初期の作品で、モンマルトル界隈に棲息する暗黒街の人々の人間模様をメルヴィル特有のダンディズムを漂わせ、シニカルに描いた秀編。夜のとばりがおりるころ、老賭博師ボブは、モンマルトルの賭博場に顔を出すのが日課だった。ある時カジノの金庫が夜間になると手薄になることを知ったボブは彼を慕う若者パウロとその恋人、それに昔の仲間を巻き込んで、その金を強奪する計画を立てる。ところが決行の当夜、ルーレットのツキがまわり勝負にのめり込んでしまう。一方仲間は警官と撃ち合いとなり、パウロは息をひきとる。警察に連行されるボブの手の中には、今までにないほどの大金が残されはしたが……。いっさいの努力が無になるという結末に、「男の争い」や「筋金〈ヤキ〉を入れろ」で犯罪ものを大ヒットさせたブルトンの脚色がさえる。美術にメルヴィル自らがあたり、黒白の画面が実に美しい仕上がりを見せているのも、特筆すべきだ。

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