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パリ、18区、夜。

97/3/22(土)

アンスティチュ・フランセ東京

C・ドゥニの長編第4作。女優としてのチャンスをつかむため、リトアニアからパリ18区にやって来た若い娘ダイガ。彼女が遠縁の親戚を頼りに身を寄せた安ホテルには、老女ばかりを狙う連続強盗殺人犯カミーユが暮らしていた……。1987年にパリを震撼させた凶悪犯罪“ティエリー・ポーラン事件“がベースになっているが、いわゆるサイコ・スリラーの類とは大きくかけ離れている。リトアニアからの異邦人の視点を通して浮き彫りにされるのは、様々な階級や人種の人々が共存するパリ18区の都市観そのもの。意図的な感情描写を排したA・ゴダール撮影によるブルートーンの映像が、夢幻的なまでに美しい叙情性を醸し出す。ゲイの殺人鬼カミーユの日常描写からは、ドゥニの次作「ネネットとボニ」で強烈に発揮されるなまめかしい官能性も感じ取れる。オンボロ車でブラリとパリに現れて平然と立ち去っていくヒロイン、ダイガに扮したK・ゴルベワのタフな存在感も忘れられない。

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