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パリ、テキサス

新文芸坐

ヴェンダースが、S・シェパードの脚本を得て完成させた、充実期を代表する一作。テキサス砂漠に実在するといわれる地“パリ“を探して放浪の旅に出たトラヴィス。疲労こんぱいのあげく、飢えと渇きで、とあるガソリンスタンドに倒れ込んだ彼を、知らせを受けて飛んできた弟が引き取る。何を聞いてもひと言も発しないトラヴィスを連れて、彼はロサンゼルスの我が家へ帰ってきた。そこには、4年前にトラヴィスが置き去りにした息子ハンターがいたが、妻の姿はどこにもない。始めはぎこちなかった父と息子も、次第に父子の情を取り戻し、二人して妻=母捜しを始める……。原風景的荒野を貫く1本のハイウェイや、街から街へ、妻=母を捜して車の旅を続けるトラヴィス父子を映し出す映像空間は、“ロード・ムービー“作家、ヴェンダースの面目躍如。ラストに母子の再会を確認して一人去って行くトラヴィスのうしろ姿が哀しい。カンヌでグランプリを受賞し、ヴェンダースの名前を決定的なものにした。

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