魔女〈1922年〉
“これを作ったのは天才か狂人だ!”と観た者を興奮させ、カトリック教会を激怒させた問題作。“悪魔や魔術とは何かを扱った文化史的論説”と監督自らが語るフィルム・エッセンスでありながら、その内容はファンタスティックの一語につきる想像力ほとばしるもので、凡百のSFやホラーは束になってもこの白黒無声映画にかなわないだろう。前半はナレーションによって中世の悪魔観が語られ、後半はドラマ仕立てで悪魔や魔女が人間をたぶらかしたり、魔女狩りや宗教裁判が行われる様が描かれていく。どのシーンも厳密な時代考証に基づいたリアリズムあふれるもので、それだけに悪魔の饗宴や拷問の場面には異様な迫力がある。この作品が認められてハリウッドに招かれた監督のB・クリステンセンはもともとオペラ歌手兼俳優で、全編にわたり悪魔に扮して怪演を見せている。あまり上映される機会のない作品だが、映画ファンなら一度は目にしておきたい知られざる傑作だ。
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