愚なる妻

サイレント期の異才Ｅ・フォン・シュトロハイムが監督、出演など５役を務めた監督第３作。当時としては破格の110万ドルの費用と一年以上の撮影期間が費やされたといわれ、そのセットの豪華さと上流階級に対する辛らつな風刺などが議論を呼んだ。舞台は地中海の歓楽地モンテ・カルロ。そこを訪れたアメリカの富豪ヒューズ夫妻がカラムジン伯爵と名乗る男に出会う。金持ちに取り入ろうと画策していたカラムジンはヒューズ婦人に紳士らしい態度で接近し、婦人の信頼を勝ち取る。やがてカラムジンは卑劣な手段で婦人からカネを巻き上げていくが……。当初のオリジナル版は５時間以上の大作だったが、公開時にはユニバーサル社の意向で３時間半程度に再編集され、さらに現在はその原版も散逸し、断片から復元された110分のバージョンのみ現存している。