黄瀬戸・瀬戸黒・志野・織部 －美濃の茶陶

桃山時代には、茶の湯のためのやきもの「茶陶」が日本各地の窯で創造された。岐阜県の美濃（東濃地域）では、力強い姿、鮮やかな色、斬新な意匠をもつ茶陶「黄瀬戸・瀬戸黒・志野・織部」が大量に焼かれ、おおいに流行した。
しかし実は、「黄瀬戸・瀬戸黒・志野・織部」が美濃で焼かれたと分かるのは昭和のことで、それ以前は瀬戸（愛知県）で焼かれたと考えられていた。昭和５年（1930）、荒川豊蔵（あらかわとよぞう・1894－1985）が岐阜県可児市久々利大萱の古窯跡から志野筍絵筒茶碗の陶片を発掘したことにより、志野が瀬戸ではなく美濃で焼かれたことが明らかになる。この大発見は、美濃焼に人々の関心が集まる契機になった。また、この頃から近代数寄者、目利き、陶芸家、古陶磁研究家などがそれぞれの立場から活発に古陶磁を蒐集し、研究し、意見を交わし、審美眼を鍛えた。やきものを愛する彼らにとって、美濃焼は憧れの存在になっていった。
本展覧会では、個性的で生き生きとした美濃焼の造形の魅力をお楽しみいただければと思う。同時に、近代数寄者旧蔵の名品や、近代陶芸家の荒川豊蔵と加藤唐九郎（かとうとうくろう・1897－1985）の代表作を通じて、近代以降の美濃焼の人気や評価の高まりを感じていただけましたら幸いである。
※作品保護のため、会期中展示替を行う