故郷〈1972年〉
山田洋次は“男はつらいよ“シリーズのほかに、素朴な庶民を描いたリアリズム映画を何本か撮っている。「家族」(1970)、「同胞」(1975)、「幸福の黄色いハンカチ」(1977)などとともに本作品もそちらの系譜に属するもの。瀬戸内海の小島に住む夫婦は、家族ぐるみで楽しく砕石運搬船の仕事をしていたが、産業の近代化によって、自営ではやっていけなくなる。呉の造船所を見学して島を離れる決心を固めたあと、一家は最後の運搬のために船に乗り込むのだった……。美しい自然とそれを脅かす工業化社会とを対比させながら、日本の高度経済成長とは何だったのかを問い直す力作。
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