簪

下部温泉のある旅館は身延山への参詣人でごった返している。ある朝、帰還兵・納村が湯につかっている時に足に簪を刺して大ケガを追う。やがて東京からケガのことを知った簪の落とし主・恵美が詫びにやってくる。納村は恐縮し、彼女の身の上も知らぬまま、ほのかな思いを抱く。恵美は東京での妾としての生活に嫌気がさし、ここに逗留して将来を考えることに……。原作は田舎生活をユーモラスに描く作風で知られる井伏鱒二。斎藤達雄、日守新一らのコメディアンぶりがかなり笑わせる。