ZENGA　白隠と仙厓展

江戸時代中期に活躍した臨済宗の禅僧・白隠（1685-1768）と仙厓（1750-1837）。両者ともに、衆生済度（迷いの苦しみから衆生を救い悟りの世界に渡し導く）の精神で、禅の普及に努めた。そして禅の教えや体験を時に厳しく、時にわかりやすく伝えようと、数多くの書画を残す。彼らの描く自由で豪放な書画は、一見するとユーモア溢れる筆致で描かれているが、そこには痛烈な社会諷刺や謎掛けといった様々な仕掛けが散りばめられている。彼らの書画の根幹には、禅的真理の様態が表現されているのだが、一口に「白隠・仙厓」といっても、その実態は似て非なるものだ。
白隠は達磨や祖師、白隠漫画と称されるさまざまな書画を手がけている。その中でも特徴的なのが、漢文の古典や禅録のみならず当時流行した謡曲や狂言歌謡まで、さまざまな賛が加えられているところ。「画（絵画）」と「賛（言葉）」、2つの要素から構成されることで、「形を超えた」禅の真理を表現することに成功したのだ。
一方、仙厓の手がけた書画は、白隠同様に神仏や聖人は勿論のこと、風俗画、動物画、果てには戯画に至るものまで、聖俗あらゆるものがモチーフとして描かれている。「世の中の絵画には法があるが、仙厓の絵には法は無い」という「厓画無法」を宣言したように、様々なモチーフを用いて、白隠よりも親しみやすく禅的真理を視覚化したと言える。
本展では、現代人にとって単純に「ゆるくてかわいい」と思える彼らの書画から、本来伝えるべきそのメッセージを読み解くことで、禅画（ZENGA）の魅力をご紹介するとともに、改めて二人の禅僧の違いをご覧いただく。