サロン展「渋谷区立松濤美術館所蔵　南 薫造　日々の美しきもの」

南薫造《西洋女性》1909年 油彩 カンヴァス 渋谷区立松濤美術館蔵

南薫造（1883-1950）は、近代日本洋画壇に大きな足跡を残した画家。1883（明治16）年に広島県内海町（現・安浦町）に生まれ、東京美術学校で西洋画を学んだ。卒業後にはイギリスへ留学し、フランスなどヨーロッパを巡り、1910（明治43）年に帰国。同年の第4回文部省美術展覧会（文展）で渡欧作《坐せる女》［1908（明治41）年、広島県立美術館蔵］が三等を受賞し、一躍、画壇にデビューする。その後も受賞を重ね、洋画家として活躍を続けるとともに、水彩画会の創立や文展や帝展の審査員、さらに帝国芸術院会員および帝室技芸員も務めた。また、1932（昭和7）年から11年間、東京美術学校で教鞭をとり、後進の指導にもあたっている。
本展は、ご遺族からご寄贈いただいたスケッチ、水彩、油彩の作品、約230点から、前回2019年に開催した南薫造展では紹介しきれなかった、人物画や静物画を中心に紹介する。日々の風景や生活、そこに暮らす人々を描いた南の作品は詩情にあふれ、あたたかく、彼の柔和な人柄がにじみ出ているようだ。これまで過ごしていた日常が当たり前でなくなった現在、何気ない生活の美しさを描いた南の作品は、見ている私たちをも癒してくれる。2020年は没後70年という節目の年だった。同館所蔵の作品を通して、南薫造の魅力を楽しんでほしい。