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多田圭佑「Beautiful Dream」

20/11/27(金)~20/12/26(土)

MAHO KUBOTA GALLERY

人が毎日見る夢の正体は脳の中にランダムに浮かび上がる映像やイメージを後付けのストーリーでつなげているものだという説がある。真偽のほどは解明されていないが、人が日中膨大な数の視覚情報を自動的に処理し、それらのフラグメンツを記憶し、夜眠っている間に再生するのだと考えると、そのメカニズムはアナログというよりデジタル的な質感を多分にもっているように感じられる。夢とは恐るべき虚構世界であり、そこではどんなことも起こりうる。壁面が割れて別の世界が広がったり、空間ごと回転したり、体が宙を浮いたり、次の瞬間には別の空間に瞬間移動したり。多田圭佑の新作シリーズ「trace/dimension」の大作の前に立つと夢の中で起こりうるような=すなわちデジタルの虚構世界のバグのような、質量を持たない空間との関係性の中で唐突に自らの身体の平衡を失い無防備なまま未知の世界に放り出されたような、そんな感覚を覚えてしまう。
多田が仕掛けたこの巧妙なギミックの狙いは本人の言葉からも明らかだ。
「今回展示するtrace / dimension という作品は、床と壁、つまり水平と垂直をモチーフにしている。それらが一つの画面の中で共存し、展示されることで、重力やテクスチャがバグったイメージを作りだし、空間そのものを変容させたいという思いから、壁一面を覆い尽くす、大きな作品を制作した。」
その前に立つと、もはやこれは絵画なのだろうか、という疑問さえ湧いてくる。目に飛び込んでくるイメージのフラグメンツはすべて過去に見慣れた何かを参照していることは間違いない。イメージ単体では特に新しいものは存在しないのだ、、、しかし、それらが表面上「過去に見慣れた何か」に似ているとしても、その素性は鑑賞者の知覚を軽く裏切るだろう。木の板に見えるそれ、錆びた鎖のように見えるそれ、タイルのように見えるそれ。それらはすべて多田のもとに計画された、絵具による造形であり、均一にフィクションの皮膜に覆われている。そしてたとえ言葉でその事実を説明したとしても鑑賞者には説明されたトリックが真実なのか、あるいは嘘を告げられているのか判断することは難しいだろう。しかし面白いことに、その「何かの物体に見える絵画」が発する無言のメッセージは無意識のうちに鑑賞者の認知のシステムに微細な波を与え続けているのかもしれない。それは言葉で表現することが難しい違和感として感じとられ、その違和感こそがその「絵画」の強度を確かなものにしているのではないだろうか。

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12:00~19:00
日・月・祝休み

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