暗黒街〈1927年〉

アル・カポネが暗躍した禁酒法下のシカゴを舞台に、ギャングたちの姿を真正面から描いてフィルム・ノワールの草分けとされる傑作。一匹狼を気どる悪漢ブルは、金庫破りの現場を酔っぱらいのロイスに目撃されたが、なんとなくこの男が気に入って逃がしてやった。ある時、酒場で彼は、このロイスを笑い者にし、親分風を吹かす乱暴者マリガンに盾を突く。あげくにはマリガンが自分の情婦フェザースに手を出すにおよんで、彼は発作的に殺してしまう。死刑を宣告されたブルはすぐさま脱獄して女の家に急ぐが、到着するなり警官隊に包囲されてしまった。ロイスとフェザースがいつしか愛し合っていることに気付いた彼は、二人を逃がすため警察への投降を決意する……。巨匠Ｊ・Ｖ・スタンバーグ監督の出世作となった無声映画。トーキー前夜の製作ということもあり、サイレント演出の完成度はきわめて高い。とりわけ構図の美しさが特筆に値する。