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坂本真綾、ワルキューレ、May’n、中島 愛……フライングドッグ10周年記念『犬フェス!』を振り返る

リアルサウンド

19/3/1(金) 12:00

 2019年2月2日、武蔵野の森 総合スポーツプラザで『フライングドッグ10周年記念LIVE−犬フェス!−』が開催された。アニメ関連の楽曲を中心に、数多くの優れた作品と個性豊かなアーティストを輩出してきた音楽レーベル・フライングドッグ。10周年を記念したこのイベントには、坂本真綾、ワルキューレ、May’n、中島 愛など豪華なアーティストが出演し、レーベルの歴史と豊かな音楽性を改めて実感できるステージが繰り広げられた。また、日本、香港、台湾、韓国の映画館でライブビューイングも行われ、アジア全域のファンがこの貴重なフェスをリアルタイムで共有した。

 開演前、スクリーンにはさまざまな年代のアニメのオープニング/エンディングの映像が映されていた。庵野秀明監督による名作アニメ『トップをねらえ!』の主題歌「アクティブ・ハート」(酒井法子)、『ラストエグザイル-銀翼のファム-』OPテーマ「Buddy」(坂本真綾)などが流れるたびに、会場からは「おお!」という歓声が上がる。フライングドッグ設立から10年、その前身となるビクターエンタテインメントのアニメ制作部から数えると約40年。アニメとアニソンの歴史を振り返った後、ついにイベントがスタート。最初に登場したのは、フライングドッグと縁の深い作曲家の田中公平。「フライングドッグ、10周年記念ライブにようこそ!」と挨拶した後、『トップをねらえ!』『サクラ大戦』など自身が関わった作品のエピソードを紹介し、「1曲やっていいかな?」とピアノの前に座り、TVアニメ『勇者王ガオガイガー』の主題歌「勇者王誕生!」を演奏。サプライズゲストの遠藤正明が「ガガガッ ガガガッ ガオガイガー!」とシャウトし、観客も大合唱で応える。

 続いて登場したのはMay’n。デジタルロックチューン「Chase the world」を4人の男性ダンサーを率いてパフォーマンスし、会場の熱気を一気に引き上げる。さらにTVアニメ『マクロスF』関連の楽曲へ。「射手座☆午後九時Don’t be late」ではステージの端から端まで走り、観客のボルテージを上げる。「この曲と出会って、(作曲者の)菅野よう子さんと出会って、May’nが生まれました。たくさんの出会いをくれる、特別な曲です」というMCの後は、「ダイアモンド クレバス」。エモーショナルな歌声を高らかに響かせ、最初のクライマックスを演出してみせた。

 この後も独創的な世界観を持ったアーティストが次々と登場。ロックとエレクトロが絡み合う「SAVIOR OF SONG」(TVアニメ『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』)をシャープなボーカルで描き出したナノに続いては、梶浦由記/ FictionJunction YUUKA。クラシカルなピアノと壮大なバンドサウンドのなかでオペラ歌手の笠原由里が神々しいメロディを歌い上げた「salva nos」によって、独自の雰囲気を生み出す。

 「私たちアーティストとレーベルの関係は、同じ地平を目指してはいるけれど、違う場所で戦っている戦友のような感じだなと思っていて。視点がズレることもあるんだけど、だからこそ視野が広がるし、そうやって音楽を作ってきたんだと思います」(梶浦)という言葉の後、シンガーのYUUKAが姿を現し、「暁の車」(TVアニメ『機動戦士ガンダムSEED』挿入歌)を歌い上げた。エキゾチックな旋律と緻密に構築されたサウンドは、まさに梶浦由記ワールドだ。

 続いて、マクロスシリーズ、アクエリオンシリーズを手がけてきた河森正治がプレゼンターとして登壇。「80年代はアイドルが全盛で、“どうしてアニメにアイドルがいないのか?”というところから、マクロスの歌姫が生まれた」とマクロスシリーズがはじまったきっかけを語り、最後に新居昭乃を紹介。神秘性と透明感をたたえた「VOICES」(OVA『マクロスプラス』主題歌)ボーカルが響き渡り、続いてバンドを率いての「キミヘムカウヒカリ」(TVアニメ『ゼーガペイン』OPテーマ)で会場を異空間へと導いた。

 唯一無二としか言いようがないステージを繰り広げたのはALI PROJECT。軍服衣装に身を包んだ宝野アリカとドラッグクイーンのパフォーマーを中心に「亡國覚醒カタルシス」(TVアニメ『.hack//Roots』EDテーマ)「勇侠青春謳」(TVアニメ『コードギアス 反逆のルルーシュ』)をシアトリカルに表現し、独自の世界観を強く押し出す。日本刀をふりかざす宝野のステージングも刺激的だった。

 前半の最後に登場したのは、中島 愛。「みんな抱きしめて、銀河の果てまで!」というシャウトから、まずは「星間飛行」を披露。『マクロスF』のなかで“ランカ・リー=中島 愛”として歌唱した名曲が響き渡り、ステージと客席に心地よい一体感が生まれる。ダンサブルな「サタデー・ナイト・クエスチョン」における、80’sアイドル直系のステージングもめちゃくちゃキュートだ。

 ここでインターバル……と思いきや、突然「ライオン」(『マクロスF』新OPテーマ)のイントロが始まる。May‘nと中島に照明が当たり、この名曲デュエットソングを感情豊かに歌い上げる。感極まったふたりの表情、奥深い感情表現と心地よいダイナミズムが共存するボーカルは、観客ひとりひとりの胸に強く刻まれたはずだ。

 インターバルは、kz(livetune)のDJタイム。「Now or Never」(ナノ)「ワタシノセカイ」(中島 愛)「吹雪」(西沢幸奏)などをつなげ、会場を盛り上げた。

 後半は、サプライズゲストの福山芳樹とチエカジウラによるFire Bomberのハードロックナンバー「PLANET DANCE[Duet Version]」(『マクロス7』挿入歌)からスタート。さらにAKINO with bless4が登場し、「創聖のアクエリオン」」を披露。AKINOのダイナミックなボーカル、AKASHI、KANASA、AIKIのフラッグを使ったパフォーマンスとともにサビのフレーズ「愛してる」という大合唱が響き渡った。

 石川智晶は、〈不完全燃焼なんだろ? そうなんだろ? そうなんだろ?〉というフレーズで始まる「不完全燃焼」(TVアニメ『神様ドォルズ』OPテーマ)、独特のエキゾチズムをたたえた「アンインストール」(TVアニメ『ぼくらの』OPテーマ)をしなやかな歌声で披露。さらにステージの上にキーボードが用意され、梶浦由記が登場。梶浦、石川による伝説的ユニット“See-Saw”による「あんなに一緒だったのに」(TVアニメ『機動戦士ガンダムSEED』EDテーマ)が演奏されると、この日、もっとも大きな歓声が巻き起こった。

 ここで姿を見せたのは、3人目のプレゼンター、山寺宏一。自身が参加したビクター関連の作品(『攻殻機動隊』『カウボーイビバップ』)などセリフとともに紹介。さらに「菅野よう子さんの音楽なくして『カウボーイビバップ』の成功はなかったんじゃないかと思います。今日演奏するかもしれなかったOPテーマの『Tank!』。これを、犬フェスなんで、犬で歌いたいと思います!」と宣言、「Tank!」を“ワンワンワン!”と犬の鳴き声で披露するなど芸達者ぶりを思い切り発揮した。そして「惜しまれながら3年前に解散してしまったユニットが、なんと!一夜限り、一曲限りの再結成でございます!」と紹介し、Trident(渕上舞、沼倉愛美、山村響)のステージへ。「ブルー・フィールド」(TVアニメ『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』EDテーマ)によって、会場は青のペンライトで染め上げられた。

 ここからイベントはクライマックスに突入。まずはワルキューレ。TVアニメ『マクロスΔ』の劇中に登場する“銀河系最強の戦術音楽ユニット”として結成された5人組ユニットだ。

 「いけないボーダーライン」「一度だけの恋なら」と『マクロスΔ』関連の楽曲を続けて披露し、オーディエンスの興奮をさらに引き上げる。美雲ΔJUNNAのパワー溢れるボーカル、フレイアΔ鈴木みのりのしなやかな歌声が絡み合い、さらにカナメΔ安野希世乃、レイナΔ東山奈央、マキナΔ西田望見もソロパート、コーラス、パフォーマンスでそれぞれの魅力を放つ。ユニットとしてのさらなる進化が実感できる素晴らしいステージだ。MCで西田望見のソロデビュー決定が告げられた後(他のメンバー4人はすでにソロ活動を行っている)、「ワルキューレがとまらない」へ。『マクロスΔ』の新作劇場版も公開予定。彼女たちの新たな躍進にも大いに注目してほしい。

 『犬フェス』のラストを飾ったのは、坂本真綾。菅野よう子のプロデュースのもと、‘96年に「約束はいらない」(TVアニメ『天空のエスカフローネ』OPテーマ)でデビュした彼女は言うまでもなく、フライングドッグというレーベルを象徴するアーティストのひとりだ。ステージは最新曲「逆光」(スマートフォン向けゲーム『Fate/Grand Order』第2部主題歌)からスタート。エッジの効いたサウンドと起伏に富んだメロディをしっかりと乗りこなし、シンガーとしてのポテンシャルを改めて体現。そのパフォーマンスはまさに圧巻のひと言だ。さらにアッパーチューン「Be mine!」(TVアニメ『世界征服〜謀略のズヴィズダー〜』)を放ち、MCコーナーへ。

 「“フライングドッグのアーティストって、こんなに素晴らしいんだ”と再確認して、想像以上に収穫の多い1日だったと思います」というコメントの後、話題はインフルエンザのため出演をキャンセルした菅野よう子のことへ。「私は何も悪くないけど、ごめんなさいね(笑)。最後の曲、本当はもう一度ここに呼んで、一緒にやるつもりだったんですよ。菅野さんはお客さんに歌わせる大好きなんです。最後の曲も、フェスを楽しみにしてくれたお客さんと一緒に歌えたらいいなということで、一生懸命に考えていました。菅野さんに届けるような気持ちで口ずさんでくれたらと思います」と「プラチナ」(TVアニメ『カードキャプターさくら』OPテーマ)へ。〈見つけたいな〉〈叶えたいな〉そして「菅野よう子」「お大事にね」というシンガロングが巻き起こるなか、イベントは終了。アーティストの個性、楽曲のクオリティの高さ、音楽に対する愛に溢れたレーベルのスタンスをたっぷりと体感できる有意義なイベントだったと思う。秋に開催されるフェス第2弾『犬フェス2!』にも期待したい。

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

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