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菅田将暉、要潤、瀬戸康史、加藤雅也らが幸福な恩返し 『まんぷく』“朝ドラ出戻り組”の活躍

リアルサウンド

19/1/17(木) 6:00

 2019年に入り、視聴率・評価ともに高水準を維持したまま、後半戦が進んでいるNHK連続テレビ小説『まんぷく』。

 福子(安藤サクラ)の姉・克子を演じる松下奈緒は、『ゲゲゲの女房』のヒロイン・布美枝だし、母・鈴を演じる松坂慶子は、同じく『ゲゲゲの女房』で、戦争で傷ついた夫を支え、たくましく生きる貸本屋の女主人を演じていた。

 このように、『マー姉ちゃん』ヒロインの妹→『おしん』ヒロイン→『わかば』ヒロインの母→『まれ』ヒロインの祖母を演じた田中裕子を筆頭に、年齢の変化とともに役割を変えながら朝ドラに戻ってくる役者は多数いる。

 それは男性の俳優についても同じであり、今回の『まんぷく』では、男性の「朝ドラ出戻り組」の活躍が目立つ。

【写真】『まんぷく』に出演する“朝ドラ出戻り組”

 その筆頭は、菅田将暉だろう。朝ドラデビューは、『ごちそうさん』のヒロイン・め以子(杏)の長男・泰介役。甲子園を目指す高校球児を演じていたが、昭和のニオイ漂う坊主頭が朝ドラの世界観にあまりにしっくりきていたことから、それが菅田将暉だったことに気づいていなかった人も多数いたようだ。

 もともと『仮面ライダーW』(テレビ朝日系)のW主演・フィリップ役で役者デビューを果たした当初から、華奢で中性的でまっさらな、強い印象があった。さらに、『泣くな、はらちゃん』(日本テレビ系)ではおバカでユルいニートの弟役をナチュラルに演じた。しかし、同年に公開された主演映画『共喰い』の演技があまりに生々しく達者だったことから、その後は文芸・単館系の映画俳優になって行くのではないかと思えた。そんな翌年に出演したのが『ごちそうさん』である。ここでは、強すぎる個性や浮き立つ演技力を抑え、世界観に溶け込む器用さを発揮。菅田が特に突出しているのは、文芸系やインディペンデント系作品とメジャー作品との間を自由自在に行き来できることであり、その後は『民王』(テレビ朝日系)でのブレイク、「au三太郎シリーズ」の鬼ちゃんなどを経て、演技派に加えて「お茶の間の人気者」という箔までつけて、まさに故郷に錦を飾るかたちで『まんぷく』に出演したわけである。

 理不尽な理由で逮捕された萬平(長谷川博己)を助けるため、福子が依頼した弁護士・東太一役として登場した。東京帝大法学部を首席で卒業したエリートながら、オドオドしていて、気弱で頼りない雰囲気の若者は、これまでの菅田が演じたどの役とも違う。

 しかし、栄養失調で死にかけた妹を救ってくれた栄養食品「ダネイホン」の生みの親・萬平を救いたいという思いから、「国を訴える」という大胆な計画を打ち出す。本来、頼りなかった若手弁護士が、目に熱い情熱を宿らせ、覚醒し、強く大きく成長していく姿は、ほとんど主役のようだった。

 また、福子の姉・克子の夫で画家の克彦を演じている要潤の場合、朝ドラデビューは『まんてん』だった。演じたのは、アカツキ重工の社員・中島隆役。すでに『仮面ライダーアギト』(テレビ朝日系)出演で知られていたこともあり、ヒロインとの共演シーンは多くはなかったものの、甘いマスクと声の良さ、初々しい演技が人気に。

 実は『まんてん』は彼が「師匠」と仰ぎ、役者としての目標に掲げる大杉漣と出会った場であり、役作りや現場での居方、調和の大切さなどを学んだ作品でもあったと後に語っている。

 当時は「イケメン俳優」枠だった要潤が、やがて絵を描くことへの執念から狂気を帯びた目を朝ドラで見せることになるとは。ちなみに、NHKではドキュメンタリードラマ風歴史教養番組『タイムスクープハンター』という珍妙な味わいの異色作で「怪人」的魅力を発揮し続けてきただけに、そうした経験も一つの武器になったのではないかと思う。

 さらに、『まんぷく』で、泥棒としての登場→萬平の仕事のパートナー&福子の姪・タカちゃん(岸井ゆきの)との恋仲→タカちゃんと結婚し、親族になる、大阪帝大卒の神部を演じている瀬戸康史。彼の朝ドラデビューは『あさが来た』だ。

 ディーン・フジオカ演じる「五代様」が亡くなり、視聴者たちのぽっかり空いた心の穴を埋めるように登場したのが、瀬戸康史演じる成澤泉である。

 アメリカへの留学経験があり、知性や教養・学問に対する熱意はあるのに、お金には全く無頓着で、身なりも気にせず、ボロをまとったキャラクターを魅力的に演じきった。初対面で「3日間何も食べていない」と言って、あさ(波瑠)の前でぶっ倒れるところ、学問も熱意もあるのにお金がないところ、ヌケているところなどは、神部に通じるものがある。ちなみに、同じNHKでも『透明なゆりかご』で演じた小さな産院の院長役は、淡々としていて冷静ながらも、熱い信念を秘めたタイプ。それぞれのキャラは、情熱の表出の仕方が異なるものの、「瀬戸康×NHK=知性と情熱」という方程式は、もはや鉄板にも思える。

 さらに、後半戦に、ヒロインのパート先であり、憩いの場となる「パーラー・白薔薇」の店主・川上アキラ役で出演している加藤雅也も、朝ドラ出身者。前作は『青春家族』で、なんと30年ぶりの朝ドラ出演であり、俳優生活30周年の加藤にとって原点のような作品であった。かつてはクールなイケメン俳優枠だったが、今ではコテコテの「お笑い」要員。時を経て、年齢を重ねて、「面白い関西人」という素顔の魅力をキャラクターに反映させた出演となっている。これもまた一つの朝ドラへの幸福な「恩返し」のかたちだろう。

(田幸和歌子)

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