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中村倫也の“間に合ってしまった”告白 『恋あた』仲野太賀演じるマコっちゃんの運命やいかに?

リアルサウンド

20/12/16(水) 6:00

 「僕には君が必要だ」その告白に街から音が全て奪われた――。

 『この恋あたためますか?』(TBS系)第9話。「拓実は樹木ちゃんが好きだよ」そう里保(石橋静河)に言われた浅羽(中村倫也)は、樹木(森七菜)への気持ちを確かめようと共に時間を過ごしてみることに。

 焼き肉を食べに行けば、肉を焼くペースから乱される。美術品を見ても、音楽を聞いても、まるで話が噛み合わず、デートらしい雰囲気には一切ならない。“これのどこが好きなんだ”と、全く自覚できずにいる浅羽。里保といるときの自分のほうがよっぽど自分らしくいられて、居心地が良かったとさえ思うのだ。

 そんな浅羽に里保は「好きの種類が違うのでは?」と笑う。浅羽との恋、そして別れをきっかけに、里保はひとつ成長をした。人はカッコいい自分ではいられないときがある。いや、むしろ長い人生を生きていれば、そんなシーンばかりで、そのときそばにいてほしいのが恋愛相手だと学んだのだ。

 自分も、浅羽も、相手の前でカッコつけずにはいられない2人。もしかしたら好きは好きでも、その相手といるカッコいい自分のことが好きだったのかもしれない。カッコ悪いところもさらけ出して、包み込み合える間になれないと悟った。

 浅羽がいまいちその違いにピンと来ないのも仕方ないのかもしれない。両親の仲が良くなるように、クリスマスケーキに願いを込めたような少年時代。もしかしたら、刃のような言葉をぶつけ合う姿に、本音を出すコミュニケーションがいいものとは思えなかったのではないだろうか。

 両親のように傷つけ合うくらいなら全てさらけ出さず、穏やかなときだけ会うくらいがちょうどいい。もう誰のことも心の中に入らず入れようともしなければ、傷つくことも傷つけることもせずに生きていきたい。そう願ってしまったのではないかと、想像してしまった。

 そうして触れてはいけない美術品のごとく整然と作り上げた自分というイメージ。いつだって冷静で、本音を人に見せず、淡々と生きていく。だが、そんな浅羽を「意味わかんない」と、樹木はいとも簡単に手を伸ばしてしまう。

 スノードームのようにガシャガシャとかき乱したと思ったら、じっと覗き込んで本音を探ってくる。樹木と出会ってからというもの、自分らしさがどこかに飛んでいってしまった浅羽。机の上で数字を操作するだけだと頭脳で仕事をしていたはずが、気づけば嬉々として移動販売車に乗り込み心のふれあいを楽しんでいた。

 トップから、いちアルバイトへ。スーツからコンビニスタッフのユニフォームへ。カッコ悪くて、情けなくて、でも心が弾む。そんな自分に気づかせてくれたのは、間違いなく樹木だった。

 あの日、両親に食べてもらえず、床に落ちた不格好なクリスマスケーキ。望んで傷つくのなら、最初から望まない。そう決めたはずだった。でも、自分が本当に欲しいものは、どんなにカッコ悪くても、どんなに傷つく結果になったとしても、手を伸ばさなければならないと知った。

 それに気づいてからは、なりふりかまっていられなくなってしまったのだろう。親友の新谷(仲野太賀)との間を割ってでも、自分の想いを告げずにはいられない。必死で走り、寒さと愛しさで目には涙がにじむ。ひょっとしたら、その涙には「もっと早く自分の気持ちに気づいていれば」と悔しい気持ちもあったかもしれない。親友が育んできた好きをぶっ潰すようなタイミング。まとまらない考え、容量を得ない言葉。最高にカッコ悪い告白だ。これは浅羽にとって初恋といえるかもしれない。

 恋はタイミング1つでガラリと状況が変わってしまう。電気が通った途端、先程までの暗闇がウソだったかのように明るく照らされる。それくらい世界が変わってしまう瞬間がある。もしかしたら、新谷が「タイム、タイム」と言っていなければ、浅羽はこの場に間に合わず、樹木は新谷と結ばれていたかもしれない。でも、間に合ってしまった。

 浅羽に勉強も、サッカーも、敵わなかった新谷だが、樹木に対する必死な想いだけは勝っていると確信があった。実際、この瞬間まではそうだった。でも、今目の前にいるのは、見たこともないくらいに取り乱した浅羽だ。きっとその浅羽の姿は、新谷さえ見たことのない必死さだったのではないか。

 かつてヒロインが想い続けた本命のヒーローが、こんなにもカッコ悪いラブストーリーがあっただろうか。でも、そのみっともない姿をさらけ出せたことが、浅羽にとってどれほど勇気のいる行為だったかを想像すると、グッときてしまう。もちろん、これまでたこ焼きを丁寧にひっくり返すように、1つずつ積み上げてきた新谷が報われてほしい思いもある。

 次回、樹木がどんな答えを出すのか。気になって仕方ないが、予告映像を見てもこれまでの思い出を振り返るような作り。これは、1つのシーンもネタバレできないことなのか。願わくば、誰もがスイーツを食べた後のような心温まるラストになることを。ドキドキしながら、クリスマス間近の最終回を待ちたい。

■放送情報
『この恋あたためますか』
TBS系にて、毎週火曜22:00~22:57放送
出演:森七菜、中村倫也、仲野太賀、石橋静河、飯塚悟志(東京03)、古川琴音、佐藤貴史、長村航希、中田クルミ、佐野ひなこ、利重剛、市川実日子、山本耕史
脚本:神森万里江、青塚美穂
プロデュース:中井芳彦
演出:岡本伸吾、坪井敏雄
主題歌:SEKAI NO OWARI「silent」(ユニバーサルミュージック)
製作著作:TBS
(c)TBS

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