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Perfume、最新作『Future Pop』で示した“未来のポップ” J-POPの可能性開く楽曲構成を分析

リアルサウンド

18/8/24(金) 8:00

参考:2018年8月27日付週間アルバムランキング(2018年8月13日~2018年8月19日・ORICON NEWS)

 2018年8月27日付のオリコン週間アルバムランキングでは、Perfumeの新作『Future Pop』が初登場1位を獲得。3位の浜崎あゆみや6位のFischer’sのほか、5位のアリアナ・グランデの新作『Sweetener』が初登場だ。『Sweetener』は、ポップスの枠組も現行のヒップホップの文脈も逸脱したファレル・ウィリアムスのプロデュース曲に、ポップスのネクストレベルはここから? と思わせる快作。広く聴かれてしかるべき一枚だ。

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 さて、ここからは1位のPerfume『Future Pop』に焦点を絞る。先行するシングル曲「If you wanna」「無限未来」ではEDM(特にフューチャーベース)を大胆に取り入れて話題を呼んだ。本作も引き続きダンス寄りのエッジーなサウンドかと思いきや、「超来輪」「宝石の雨」「天空」などポップなメロディが印象的な曲も収録され、まさに“未来のポップ”といった作品になっている。

 中田ヤスタカによるダンスサウンドはPerfumeのトレードマークであり、時代の潮流を巧みに取り入れつつもJ-POPとしての親しみやすさを維持するバランス感覚は、常にリスナーを惹きつけてきた。エレクトロハウスからケレン味の強いEDM風のサウンドまで、PerfumeはJ-POPのなかでも「攻めた」音作りに挑戦してきた。それでもなお「If you wanna」でのEDMへの接近は大胆なものだったと言える。それは、サウンドの特徴よりも、曲の構成に関わる。

 ゼロ年代末以降のEDMをそれ以前と隔てる最大の特徴は、ビルドアップードロップという構成に重点を置いたところにある。高揚感のあるシンセやドラムのフィルインからなるビルドアップで観客を煽り、ドロップで一気に展開を変化させてフロアを盛り上げるのがEDMのセオリーだ。EDMの流行がすっかり落ち着き始めた今では、この構成に対するアプローチも(この構成を採用するか否かも含めて)多様化している。しかし、未だ現在のダンスミュージックを考える重要な基準であることに変わりはない。

 Perfumeはこれまで、サウンド面ではEDMを取り入れつつも、ビルドアップードロップのEDM的な構成を採用することはほとんどなかった。この構成がJ-POPになじまないためだろう。EDMのドロップではしばしば大胆に音数が減らされ、個々のサウンド自体の強度が盛り上がりを生む。対して、J-POPで最も盛り上がるのはサビであり、たいてい平歌よりも音数が増えリッチになることで楽曲のドラマを演出する。この差異から、J-POPとEDMは微妙にすれ違ってきたし、Perfumeもそうだった。

 前作『COSMIC EXPLORER』に収録されたシングル曲「FLASH」はそのいい例だ。映画『ちはやふる』の主題歌としてヒットしたこの曲は、シングルバージョンでは平歌からサビへと盛り上がっていくJ-POP的な展開になっている。対して、アルバムに収録されたバージョンでは、1分以上の長いビルドアップに平歌からサビまでが収められ、ドロップにはほぼボーカルが挿入されていない。シングルでは親しみやすいJ-POPを、アルバムではEDMの王道を選んだ結果だろう。

 それを踏まえて本作に目を向けると、前述したシングル曲のほか、ドラムンベース調の「Future Pop」やトロピカルハウス的なプラックが響く「Let Me Know」では、明確にEDM的構成が用いられている。一方「TOKYO GIRL」のようにEDMとJ-POPを折衷した構成の曲も収録されており、にもかかわらずPerfumeの名のもとに一貫した世界を提示できている。

 シングルとアルバムでアレンジを変えてまでJ-POP的な構成を守ってきたPerfumeが、EDM的な構成をポップスとして日本でリリースする機が熟したと判断したのが「If you wanna」であり、いまやEDMもJ-POPも違和感なく一貫性を持ってパッケージングできることを証明したのが『Future Pop』なのだ。本作が“未来”的なのは、単に表面的にフューチャリスティックな装いをしているからではなく、サウンドも楽曲のあり方もJ-POPの次の可能性を開いているからにほかならない。(imdkm)

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