Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

ヒプノシスマイク 全ディビジョン参加の新曲は“無敵のパーティーチューン”に スチャダラパーの手腕が光る、その全貌を聴き解く

リアルサウンド

20/9/4(金) 6:00

 音楽原作キャラクターラッププロジェクト『ヒプノシスマイク』(以下、『ヒプマイ』)——声優による本格的なラッププロジェクトとして話題になり、熱心なファンによる口コミでじわじわと支持を集め、ドラマCDとしては異例のヒットとなった。その後、ゲーム・舞台・アニメと幅広く展開し、人気コンテンツとして定着したこの作品も、9月2日で3周年を迎えた。これを記念し発売された公式ガイドブック『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle- Official Guide Book』は、あらゆる層のファンを唸らせる充実の内容となっている。

 リスナーの好奇心や探究心を刺激する隠された設定や過去のエピソードは、『ヒプマイ』の人気の理由の一つ。リリックやMV、ドラマトラックのセリフなどにどこか意味深で伏線めいた謎が散りばめられており、ファンによる考察や独自の見解も多く散見される。今回のガイドブックでは、これまで知りえなかった事実や設定がいくつか明かされている。新規絵や相関図など見所が多数あり、初回限定版には、新曲とドラマトラックが収録されたCDも付属している。

 この付属CDに収録された、『ヒプマイ』の世界に君臨する女性陣・中王区 言の葉党による初めての楽曲「Femme Fatale」は、気鋭のクリエイター、Reolが楽曲提供。YouTubeにトレイラーがアップされると同時に“中王区の女”が続々と誕生してしまうほど、リスナーに衝撃を与えた。リリックにある通り、まさに“隙のない”サウンドとラップはスタイリッシュなリズムが心地よく、彼女たちの強大なるパワーを感じさせる一曲だ(関連記事:ヒプノシスマイク 中王区が体現する“楽曲でねじ伏せる”コンテンツの強さ Reol書き下ろし「Femme Fatale」を考察)。

 また、同時に収録されているドラマトラック2本は、この中王区にスポットが当てられており、かつてないほどディープかつヘヴィに彼女たちの物語が描かれている。3年目にして、各ディビジョンと敵対するように描かれていた中王区の裏側が明かされたことで、それぞれのディビジョンやキャラクターの複雑な関係性が今後より深く描かれていくことだろう。

中王区 言の葉党 Drama Track「流転は篠突く雨ですら流せない」

 そんなドラマトラックや「Femme Fatale」と相対するような作風の「SUMMIT OF DIVISIONS」は、全ディビジョンのキャラクターが参加した楽曲。これまでもナゴヤとオオサカは既存のオールスター曲にパートが追加される形では参加していたが、今回は彼らを含めた全キャラクターが初めから参加している記念すべき1曲だ。日本語ラップをメジャーに定着させた第一人者であるスチャダラパーが楽曲提供したことで、新旧のジャパニーズヒップホップファンの間でも大きな話題となっている。

ヒプノシスマイク Division All Stars『SUMMIT OF DIVISIONS』Trailer

 『ヒプマイ』には、これまでも多くの著名なアーティストが楽曲を提供してきた。スチャダラパープロデュースによる今作も徹底したキャラクター研究がなされており、声質やキャラの持つ背景にフィットしたリリックが連なっている。その上でユーモアや遊び心のある楽しいフレーズも数多く織り込まれており、キャラクターたちの新たな一面が垣間見られる嬉しい新曲だ。これまでのオールスター楽曲とは少し違い、ハードコアなバトル色は少し抑えられ、〈楽しまなきゃ意味がねーぜ〉というフレーズに代表されるように3周年を記念した明るいムードのマイクリレーになっている。これはスチャダラパーのプロデュースならではのテイストと言えるだろう。〈とにかくパーティーを〉というフレーズにニヤリとするファンも多いはずだ。

 2次元コンテンツへの楽曲提供のイメージがなかったスチャダラパーだが、たくさんの個性的なアーティストとコラボレーションし、それぞれのファンを歓喜させてきた彼らにとって、『ヒプマイ』の個性豊かなキャラクターたちを活かしながら一曲をまとめ上げることは、ある意味得意分野と言えるのかもしれない。

 昨今のラップバトルブームに加え、『ヒプマイ』の世界観や設定上、ラップが戦いのツールとなっているのは当然としても、ヒップホップやラップには言葉で遊ぶ文学・ポップカルチャーとしての側面もある。普段熱いバトルを繰り広げている彼らも時にはタッグを組んで、バトルとは違うテイストのパフォーマンスをすることもできるのだと、この「SUMMIT OF DIVISIONS」は伝えてくれる。

 3周年を迎えて明らかになった世界観やキャラクターの複雑さに加え、音楽的にもさらなる充実を見せる『ヒプノシスマイク』。「SUMMIT OF DIVISIONS」という無敵のパーティーチューンを得たことで、ファンのボルテージもこれまで以上に高まるだろう。物語の新たな展開やメディアミックス、ライブ、次なる楽曲にも期待が集まる。クリエイター、キャスト、ファン、それぞれの熱意はこの作品の可能性をどこまで広げられるのだろうか。4年目の『ヒプノシスマイク』にも注目したい。

■草野英絵
ライター。アニメ、ゲームなどのエンタメ記事を中心に雑誌・WEBで活動中
Twitter

新着エッセイ

新着クリエイター人生

水先案内

アプリで読む