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MACOの歌声に宿る多くの人の心を掴む“伝える力” 初のアコースティックライブをレポート

リアルサウンド

20/2/26(水) 7:00

 MACOが2月22日、ツアーファイナルとなる東京公演を開催した。

 昨年末よりスタートし、全国11箇所で開催された今回のツアーは『My Acoustic Tour 2019-2020~Home Sweet Home~』と題した自身初となるアコースティックライブ。最終日の会場となった竹芝ニューピアホールは映画館のような落ち着いた雰囲気に演出された。

(参考:MACOが語る、“今だからこそ”楽曲で伝えられる思い「みんなの背中をそっと押せるようになりたい」

 会場の雰囲気も相まって、ライブは特別な空気感からスタートした。ステージに登場したMACOは、舞台中央で椅子に座りながら歌い、観客も座りながらペンライトをゆらゆらと揺らす。目線も距離も客席と近いアットホームな空間だ。

 アコースティック編成による生演奏は、彼女の息づかいまで伝える。歌詞の言葉ひとつひとつに感情を乗せる彼女の繊細な歌声が会場へ響き渡る。

 1曲目の「22」から「HERO」、そして「存在」までは彼女を含むヴァイオリンとキーボードの3人編成だったが、最終日のみその後の「マフラー」からパーカッションとギター、ヴィオラを加えた計6名によるバンド編成となり、より豊かなアンサンブルを奏でていた。

 MACOは、裏声でも声量が落ちない。たとえば、「LOVE」のサビで最高音を畳み掛けるように更新していくところ、普通の歌手なら声量が落ちていわゆる“切ないラブソング”なりそうなものだが、彼女の歌声はバンド演奏にかき消されず、しっかりと〈あなた〉へ思いを伝えるように歌うことができる。だから彼女には、多くの者の心を掴む“伝える力”があるのだろう。

 今回のツアーは、メジャーデビューから振り返るセットリストで構成されている。リリース順にアルバム収録曲を披露するため、昔からのファンは当時を懐かしみながら、最近知ったファンは今までの流れを感じ取りながら、歌にひたることができる。

 「今日はMACOが出したアルバムごとにセットリストを組んでます。なので、昔から応援してくれてるファンのみんなも、いろんなアルバムからファンになってくれたみんなも、一緒に思い出を重ね合わせて、それぞれに思い出を振り返っていきたいなと思います」とは彼女の言葉。そして「自分の作品の中で1位2位を争うくらい好きなアルバム」と言って歌い始めたのは2ndアルバム『love letter』の収録曲。「love letter」から「恋人同士」「恋心」と歌い繋いでいく。

 中盤で披露された「Home Sweet Home」は、ツアーで訪れた各地で観客から言われたお題を使って即興で歌唱したという。たとえば福岡公演では“明太子”、“一蘭”、“ラーメン”、“うまかっちゃん”といったワードを用いて歌ったそうだ。参考としてその日の音源を流すと会場からは笑いが。ラブソングのイメージが強い彼女だが、こうしたお茶目な一面も持っている。

 開演から1時間ほど経ったあたりで、衣装チェンジの時間へ。昨年、古巣を離れてソニーミュージックへと移籍した彼女。後半はそんな彼女の“第二章”を象徴するかのように、ウエディングドレスのような真っ白な衣装に身を包んで新たな一面を見せていく。

 『交換日記』収録曲の披露後に歌ったのは、ライブであまり歌ったことのないという「0時過ぎてもシンデレラ」。この曲について「今思うとすごい歌詞書いてるな自分って」と振り返る。貴重な選曲に会場は聴き入っていた。

 移籍後第1弾シングルの「タイムリミット」は跳ねたリズムが印象的なアップテンポな一曲。この日だけの特別アレンジは、コード感もジャジーで少し大人な雰囲気がある。これまでのMACOのイメージを刷新するような一幕であった。

 「ライブは幻だと思ってたんです。1から100まで覚えられないから。でも、幻なんかじゃないなと思ったんです。デビューから5年迎えて……」と前置きして次に歌い始めたのは新曲「愛する人」。繊細なピアノのイントロから豪華な演奏へと移り変わっていくミディアムバラードで美しい。

 次に歌った「恋蛍」では照明の演出が印象的だった。ステージ上に散りばめられたランプがゆっくりと明滅し、幻想的な空間を作り出す。〈きっと私は恋蛍〉と歌うと、ちょうどMACOの頭上にあるランプだけが、まるで“ホタル”のように光り出す。客席の無数のペンライトと一体となったのを感じた。

 続いて披露したのはレミオロメン「3月9日」のカバー。これを歌った動画がTikTokで現在100万回再生を突破。最後に歌った「桜の木の下」と同じく、ドラマ『僕だけが17歳の世界で』(AbemaTV)の挿入歌に決定しているという。

 最後は「歌い終わるのがすごくもったいないなと思いながら歌ってました。今日はいろいろある中、ここに遊びに来てくれてどうもありがとうございます」と挨拶し、鳴り止まない拍手の中で深々とお辞儀して終演した。

 アンコールはあえてせずに、本編の二部構成で挑んだアコースティックツアー。デビュー期から、終盤は“今のMACO”へ。前半のアットホームな空気感に対して、後半の歌いながら羽ばたいていくような姿が印象的な一夜であった。

 “シンデレラ”のような輝きと同時に、確かな才能を持ったアーティストであり、人びとに“伝える力”を持っている。ツアー最終日、そこには“第二章”を着実に歩んでいるMACOの勇敢な姿があった。(荻原 梓)

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