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BEYOOOOONDS、それぞれの個性が輝く初ワンマンライブ 寸劇を駆使したステージの魅力も

リアルサウンド

19/12/9(月) 7:00

 BEYOOOOONDSが12月2日、Zepp DiverCity Tokyoにて初ワンマンライブを行った。今年の8月にメジャーデビューし、11月には1stアルバム『BEYOOOOOND1St』を発売したばかりのハロー!プロジェクト期待の新星だ(BEYOOOOONDSは令和を映す鏡となるか 1stアルバムを構成する3つの要素とともに解説)。この日はそのアルバムに収録されている曲を中心に、持ち前の”演劇”を所々に挟み込むことで、いわゆる普通の音楽ライブとはひと味違った、彼女たちならではの公演を見せた。

(関連:【ライブ写真】煌びやかな衣装をまとったBEYOOOOONDS

 ライブ前の囲み取材でも「先輩方はまだ遠い存在なんですけど、私たちは先輩方がやってきたパフォーマンスとはちょっとずれたパフォーマンスをしているので、“負けたくない”というよりは“こんな表現の仕方もあるんだ”って思ってもらえる存在になれたら」(高瀬くるみ)、「演技が楽曲に入っていることが多いので、そこを極めていきたいです。すごい先輩方がたくさんいらっしゃるんですけど、“勢いは一番”っていうぐらいに頑張っていきたい」(一岡伶奈)と、自分たちの独特の表現スタイルにどこか自信を持っているようだった。ライブの序盤はその”演劇”成分多めで展開していく。「すべてはここから始まった……」と前田こころが唐突に話し始め、以下のように続けた。

「すべてはこの曲から始まった。こんな始まりは誰も予想していなかった。寸劇スタートなんて開いた口が塞がらなかった。だけど、嫌いじゃなかった。思い切って髪も切ってみた。この物語は大きな川となり、激流を生んだ。今、万感の思いを込めてこの曲を歌おう。今、万感の思いを込めて――」

 そして披露したのが、グループ結成のきっかけになった楽曲「眼鏡の男の子」。清野桃々姫が原曲の通りに前口上を始めると、最初は穏やかなやり取りも徐々に動きが生まれ、一気にイントロへ雪崩れ込む。それまでの雰囲気が一変、大音量とともに会場のボルテージが急上昇。その曲からスピンオフ的に誕生したという「恋のおスウィング」と「文化祭実行委員長の恋」の2曲は歌の合間にも寸劇が挟まる。それによりステージには、他のライブではあまり感じられないようなエネルギッシュな躍動感が生まれていた。その後、男子役の前田に思いを寄せるヒロイン役・山﨑夢羽の妄想(前田がひとりで人形と踊るパフォーマンス)が繰り広げられると、会場からは笑いが起きた。

 ところで、こうして演劇が曲中や曲間に挟まることでライブ全体がひとつの物語になっているかのような印象を与えるが、だからと言ってそこまでガチガチにストーリーで固めているわけではない。ミュージカルというよりは音楽ライブ寄り。あくまで楽曲の披露の場であって、観客へ向けてしっかりと”音楽”を届けているのが舞台から伝わる。つまり、楽曲の世界を膨らませるために台詞があるようなバランスだ。いわば、寸劇を駆使してライブの可能性を拡張するライブと言えるだろう。

 中盤はユニット曲を披露していく。まず最初に登場したのたは、5人組の雨ノ森 川海。妖艶な衣装に身を包み、怪しげなライティングの中「GIRL ZONE」を歌唱。その後、この日はじめてとなるMCコーナーで高瀬が「序盤はなんじゃこりゃって思ったでしょ?(笑)」と笑いを誘いつつ、「あの手この手を使って皆さんに楽しんでもらって、お腹いっぱいになってもらえたら」と話す。高瀬は演技力はもちろん、しゃくりやこぶし、音程の正確さや声量などすべての面においてハイレベル。公演中何度も彼女の表情がカメラに抜かれるが、その度にステージのギアが一段階上がる印象を受ける。続いて「そこらのやつとは同じにされたくない」を歌い、ユニット名のない3人組(平井美葉、小林萌花、里吉うたの)へとバトンを繋いだ。

 緑の衣装で登場した彼女たちはまずラップを披露する。リズムに乗せて「What your name?」「I don’t know.」との掛け合いをラップで何度か繰り返すと、突然トラックが鳴り止み「ワチャワチャをうるさいよ!」とツッコミを入れ、そこから寸劇タイムへ。ヒップホップダンスやワックダンスを特技に持つメンバーのいる彼女たちらしい登場の仕方だ。また、今回のライブの見所のひとつでもある小林によるピアノの生演奏は、このパートだけでなく終始現場に臨場感をもたらしていた。まだ名前のない彼女たちだが、こうした特技を活かして今後も成長していくのだろう。

 次にステージに立ったのは4人組のCHICA#TETSU。カズーのパフォーマンスからスタートし、グループ名のCHICA(=スペイン語で”女の子”)の通り王道アイドル衣装の可愛らしい姿に身を包みながら歌ったのは「高輪ゲートウェイ駅ができる頃には」と「都営大江戸線の六本木駅で抱きしめて」の2曲。曲中に挟まれる”一岡豆知識”をしっかりと再現すると、観客からひと際大きな声援が上がった。こうした三者三様のユニットが、まるで和解するかのような流れで「きのこたけのこ大戦記」を歌い、次曲へ繋いだ。

 終盤は力強い楽曲で畳み掛ける。「アツイ!」「恋愛奉行」の2曲で会場の温度はさらに上昇。ただ、そんな怒涛のラストスパートの最中にも「Go Waist」のエクササイズコーナーを欠かさず行うのが彼女たちらしい。会場が一体となって身体を動かし”ダイエット”に励む光景は壮観であった。そして16曲目は「伸びしろ~Beyond the World~」。この曲の最後には、12人全員が集まって腕をびよーんびよーんと動かすことで”スライム”を表現し、歌から演技に至るまで、まさに”スライム”のように変幻自在なパフォーマンスを見せた公演であった。

 その後、再度ステージに現れた彼女たちはファンへ向けてひと言ずつ挨拶した。「初めての単独ライブということで緊張だったり不安だったりあったんですけど、そんなのも全部吹っ飛んじゃうくらい、メンバーだったり皆さんの笑顔をたくさん見ることができて、今日はとっても幸せな一日でした」(平井)、「今日は私たちのできる最高のパフォーマンスを皆さんに届けることができたんじゃないかなと思います。ラグビーワールドカップは終わってしまったんですけど、これからもBEYOOOOONDS全員で堅い”スクラム”を組んで、”ONE TEAM”となって頑張っていきますので、応援よろしくお願いします」(岡村美波)。

 最後は「ニッポンノD・N・A!」を披露し、終演。グループの特徴である”演劇”を活かし、途切れることなく一気に駆け抜けた一夜であった。ステージからメンバーが捌けても、会場にはライブの余韻を噛み締めるような雰囲気があり、それがこの公演の完成度を物語っているようだった。感動という言葉は簡単には使いたくないが、彼女たちから発せられる若さと勢いに、ガツンと打ちのめされたような一日だった。また、彼女たちの特筆すべき点は、デビュー初年度ながらすでにそれぞれの個性が輝いているところだろう。一人ひとりが埋もれることなく、全員がそれぞれの良さを活かしてステージに立っている。奇しくもこの日の会場名は”ダイバーシティ(多様性)”。この場所で初ワンマンが開催されたことも何かのめぐり合わせだろう。やはりアイドル界は今、BEYOOOOONDSがアツイ!(荻原梓)

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