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立川直樹のエンタテインメント探偵

Bunkamura ザ・ミュージアム『ドアノー/音楽/パリ』、ワタリウム美術館『まちへ出よう展』…会場に足を運んでこそ味わえるアート作品のパワー

隔週水曜

第68回

21/3/15(月)

『まちへ出よう展 〜それは水の波紋から始まった〜』チラシ

1カ月も経つと本当にいろいろなことが起きて、忘れ去られていく。1カ月前は森さんの進退問題で大騒ぎしていたと思ったら、今度は菅首相の長男の接待問題で大騒ぎ……おっと今これを書いているのは3月2日の午前中……そうした生臭い騒ぎから遠く離れたところで作られたチャーリー・ヘイデン with マイケル・ブレッカーの、参加ミュージシャン全員がストリングス・オーケストラをバックに、ひたすら美しいメロディを紡ぐことにこだわったロマンティックなバラード・アルバム『アメリカン・ドリームス』(2002年作品/ユニバーサル ミュージック クラシック)がBGMとして流れているが、2月26日に偶然テレビで観た『日本侠客伝 昇り龍』の中で、片岡千恵蔵演じる大立物がやくざの親分衆と港の荷受け業者の幹部がそろっている中に「中々、国会で暇にならなくてなぁ……」と言いながら顔を出すシーンには思わずビクッとした。

『日本侠客伝 昇り龍』DVD発売中
3,080円(税込)
販売:東映
発売:東映ビデオ

日本映画界の名称の1人、山下耕作監督、高倉健、藤純子(ふるいたつほど凄絶な美しさを漂わせていた)共演で天津敏の敵役がピタッとはまる任侠映画でウィキペディアを見ると、1970年12月3日公開となっているが、今だったら絶対にあり得ないシーンだろう。でも、その後の東映の人気シリーズになった『仁義なき戦い』で名をはせた笠原和夫の脚本は抜群によくできているし、荒木道子演じる“どてらばばあ”と呼ばれる女侠客を観るだけでも十分過ぎるほどの値打ちがある。

『写真家ドアノー/音楽/パリ』チラシ
ロベール・ドアノー 《サン=ジェルマン=デ=プレのジュリエット・グレコ》 1947年 ゼラチン・シルバー・プリント ©Atelier Robert Doisneau/Contact

そして、値打ちがあると言えば、水先案内でも紹介したがBunkamura ザ・ミュージアムで3月31日まで開催されている展覧会『写真家ドアノー/音楽/パリ』と、ワタリウム美術館で6月6日まで開催されている『まちへ出よう展 〜それは水の波紋から始まった〜』が絶対にその場に足を運ばない限りは、その魅力を味わうことが出来ない素晴しいものだった。

フランスの国民的写真家ロベール・ドアノーがパリの街角にあふれるシャンソンやジャズなど様々な音楽シーン(これがまたアートといい感じでつながっている)を題材に、1930年代から90年代にかけて撮影された作品約200点から伝わってくる生々しいパワー。

キース・ヘリング 壁画( 部分) 1983 年

それは若き日のキース・ヘリングからアーティスト・グループChim↑Pomまで“まち”で起きていたアートのおもしろさと意義がダイレクトに伝わってくる展示ともシンクロする。ワタリウム美術館の地下1階に新設されたライトシード・ギャラリーでは3月21日までフランスのアーティストJRの新作リトグラフ展も観ることができ、またアンディ・ウォーホルから奈良美智までの現代アーティストとのコラボレーションを展開するTHE SKATE ROOMからリリースされたスケートボードも販売されていて、そうして出来上がった地上4階地下1階のワタリウム美術館では、アートの理屈抜きの楽しさを体感できるが、青山のブティックJUNKO KOSHINOで2月9日から3月5日まで開催されていた『Cuba 25 Anniversary写真展』も街とアートがとてもいい感じで交歓しているという点で申し分ないものであった。

年令を感じさせないエネルギッシュな活動を続けているコシノさんが1996年に行ったトロピカーナ・サロンロサードショウと2009年のHotel National国交80周年記念ショウをリハーサルや舞台裏まで撮影した鈴木弘之さんの写真は、コシノさんがリーフレットにも書いている「本番直前アルフォンソが『今は夢、明日は歴史だよ』と……」通り、夢と歴史の記録であり、僕達がそれを展覧会という形で観られるのはとても幸福なことだと思う。ブティックで販売されていた写真集『夏の夜の夢の記憶』も良い出来で、ドアノー展の図録と一緒にすぐ手の届くところに置かれている。

フランク・デュボスク監督・主演『パリ、嘘つきな恋』、“町山智浩のVIDEO SHOP UFO”で取り上げられたオーソン・ウェルズ監督『審判』

『審判』(写真:Album/アフロ)

あとは家にいる時間が多いため、テレビのチェックができるために出会えた映画についても書いておきたい。未公開ものや中々観る機会のない映画を放映してくれるCATVの“ザ・シネマ HD”で観て大いに楽しめたのがフランク・デュボスクという人(不勉強ながら全く知らなかった人)が監督・主演している2018年のフランスのコメディ映画『パリ、嘘つきな恋』と、独自の視点で発掘、また抜群の知識と情報量による解説が最高の“町山智浩のVIDEO SHOP UFO”で取り上げられたオーソン・ウェルズ監督の『審判』(1962年・フランス/イタリア・西ドイツ合作)は今すぐに映画館で上映して欲しいくらいにおもしろく、レベルが高いもの。

とりわけカフカの傑作をハリウッドで映画が撮れなくなったウェルズが映画化した『審判』は出演俳優の顔ぶれ、撮影、美術も超一流で、本当にどこかの配給会社が劇場公開してくれることを心から願っている。

データ

チャーリー・ヘイデン with マイケル・ブレッカー『アメリカン・ドリームス』
発売日:2016年11月23日
価格:1,650円(税込)
発売元:ユニバーサルミュージック クラシック

『日本侠客伝 昇り龍』(1970年/日本)
DVD発売中
価格:3,080円(税込)
販売:東映
発売:東映ビデオ  原作:火野葦平
監督:山下耕作
脚本:笠原和夫
出演:高倉健/藤純子/中村玉緒/伊吹吾郎/遠藤辰雄/荒木道子 ほか

『写真家ドアノー/音楽/パリ』
会期:2021年2月25日~3月31日
会場:Bunkamura ザ・ミュージアム(東京/渋谷・東急本店横)

『まちへ出よう展 〜それは水の波紋から始まった〜』
会期:2021年2月6日~6月6日
会場:ワタリウム美術館

『JRのリトグラフ展 Unframed_JRSA』
会期:2021年1月26日~3月21日
会場:ライトシード・ギャラリー

『Cuba 25 Anniversary写真展』
会期:2021年2月9日~3月5日
会場:LA BOUTIQUE JUNKO KOSHINO

『パリ、嘘つきな恋』(2018年・仏)
監督:フランク・デュボスク
出演:フランク・デュボスク/アレクサンドラ・ラミー/エルザ・ジルベルスタイン/ジェラール・ダルモン ほか
放送日:2021年2月28日
洋画専門チャンネル ザ・シネマ

『審判』(1963年・仏=伊=西独)
監督・脚本・出演:オーソン・ウェルズ
出演:アンソニー・パーキンス/ジャンヌ・モロー/ロミー・シュナイダー/エルザ・マルティネリ ほか
放送日:2021年2月23日
洋画専門チャンネル ザ・シネマ

プロフィール

立川直樹(たちかわ・なおき)

1949年、東京都生まれ。プロデューサー、ディレクター。フランスの作家ボリス・ヴィアンに憧れた青年時代を経て、60年代後半からメディアの交流をテーマに音楽、映画、アート、ステージなど幅広いジャンルを手がける。近著にSUGIZO、TAKUROとの対談集『CONVERSATION PIECE ロックン・ロールを巡る10の対話』(PARCO出版)、『I Stand Alone』(青幻舎)、『ラプソディ・イン・ジョン・W・レノン』(PARCO出版)。

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