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立川直樹のエンタテインメント探偵

芸の凄味を実感! 東劇で観た“人間国宝”坂東玉三郎のシネマ歌舞伎『鷺娘』

隔週水曜

第28回

19/7/10(水)

『《シネマ歌舞伎》坂東玉三郎・鷺娘〈サウンドリマスター版〉』ポスター (C)福田尚武 (C)松竹

 “水先案内”で紹介したシネマ歌舞伎『坂東玉三郎・鷺娘』を観に行った。東銀座・東劇の客席は11時の回なのに7割ほどの入り。年令層が高いとは言え、いいものを観たいという人々の熱気が凄く、大画面の中の玉三郎もその期待に十分過ぎるほど応えていたが、平成17年5月に歌舞伎座で収録された『鷺娘』は平成21年には踊り納められており、「この映像のようにはもう踊れないので、残せてよかった」という玉三郎の言葉を思い浮かべながら、芸の凄味というものを実感させられた。

 同時上映された『日高川入相花王(ひだかがわいりあいざくら)』も素晴しい作品で、1時間たっぷり夢の世界に遊ばせてもらったが、玉三郎と同様、“人間国宝”に認定されている新内仲三郎、竹本駒之助、宇治紫文、堅田喜三久、野村万作の5人が一堂に会して6月16日に国立劇場小劇場で開催された『第13回 人間国宝の会』も掛け値なしに素晴しく、練り上げられた芸に唸らされた。

 特に見応えがあったのが新内節と女流の義太夫節という全く性質の違う語り物が掛け合いをするというとても珍しい『関取千両幟(せきとりせんりょうのぼり)』。人間国宝の新内仲三郎の構成で、後継者の新内多賀太夫と人間国宝の竹本駒之助が仲三郎の弾く三味線をバックに語り、“ふれ太鼓”や本物の“呼出”“相撲甚句”も出る豪華な舞台で終了時の拍手の大きさが人間はいいものには素直に反応するんだなということを改めて思わされた。

大野えり&大口純一郎が出演『ベロビスト スイート サーズデイ』、マドンナの4年ぶりのスタジオ・アルバム『マダムX』

『ベロビスト スイート サーズデイ(2019年6月13日)』チラシ

 それは6月13日に毎月第2木曜日の夜、セルリアンタワー東急ホテルのバー“ベロビスト”でプロデュースしているイベント『スイート サーズデイ』に出演してくれた大野えりのステージに熱っぽく反応したお客さんの姿ともダブる。ヴォーカリスト兼フリューゲルホーン奏者のTOKUとジャズをベースにしながらも40階から見える抜群の夜景に合わせたライヴをやろうというアイデアから昨年スタートさせたイベントだが、ライヴがあることも知らずに飲みに来たお客さんが素晴しいパフォーマンスに素直に感動し、入り込んでいく姿を見ているといろいろなアイデアも浮かんでくる。

 選曲も含めて、ふとした思いつきを形にできてしまう実力とセンス。その夜もピアノの大口純一郎と大野えりの掛け合いは抜群だったが、6月15日の夜にBS-TBSで偶然観ることができた『秘蔵映像!美空ひばり 時代を超える名曲たち』で、90歳で未だ健在、6月26日には村上春樹がディスクジョッキーを務めるラジオ番組『村上RADIO』(TOKYO FM)の公開収録イベント『村上JAM』にもゲスト出演したクラリネット奏者、北村英治が「歌の天才!」「バケモンですよ」と言いながら明かしていたエピソードも強力だった。

 時代は昭和31年。北村英治率いるバンドをバックにした美空ひばりの沖縄公演で、コンサートの後に行った店で流れていたジュリー・ロンドンの『クライ・ミー・ア・リヴァー』を聴いたひばりが「あたし、これ歌いたい」と言って、翌日のステージで歌ってしまったという。バンドのメンバーはあわてて譜面をおこして大変だったというが、さらにおもしろかったのは感動した米軍将校が本人に会いたいと言ってきた時に、関係者が「本人、英語が話せないから」と言って断ろうとしたら「嘘つくんじゃない。あんなにきちんと歌ってるんだから……」と将校が言葉を返したというのは巷間言われている美空ひばりの耳の良さ、天才ぶりを裏付けていると痛感した。

 あと印象に残ったのはマドンナの4年ぶり14枚目のスタジオ・アルバム『マダムX』。数年前から暮らしているポルトガルのリスボンに影響されて作られた新作は世界中の音楽とカルチャーからの影響が見事に映し出されており、ある種の凄味も漂っている。

 その普通ではない感覚。僕はそうしたものにジャンルを問わずひかれるが、美術館「えき」KYOTOで開催されていた『安珠写真展 Invisible Kyoto―目に見えぬ平安京―』も非日常の空間が表出されていた。

マドンナ『マダムX』/ユニバーサル ミュージック合同会社

作品紹介

『《シネマ歌舞伎》坂東玉三郎・鷺娘〈サウンドリマスター版〉』

2019年6月21日公開
配給:松竹
出演:坂東玉三郎
※同時上映『日高川入相花王』

『第13回 人間国宝の会』

日程:2019年6月16日
会場:国立劇場小劇場

『ベロビスト スイート サーズデイ』

日程:2019年6月13日 ※毎月第2木曜日に開催
会場:タワーズバー「ベロビスト」(セルリアンタワー東急ホテル 40F)
出演:大野えり(Vo.)/大口純一郎(Pf.)

『秘蔵映像!美空ひばり 時代を超える名曲たち』

放送日:2019年6月15日
BS-TBS

マドンナ『マダムX』

発売日:2019年6月14日
ユニバーサル ミュージック合同会社

プロフィール

立川直樹(たちかわ・なおき)

1949年、東京都生まれ。プロデューサー、ディレクター。フランスの作家ボリス・ヴィアンに憧れた青年時代を経て、60年代後半からメディアの交流をテーマに音楽、映画、アート、ステージなど幅広いジャンルを手がける。近著に石坂敬一との共著『すべてはスリーコードから始まった』(サンクチュアリ出版刊)、『ザ・ライナーノーツ』(HMV record shop刊)。

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