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嵐の魅力はアルバム曲にこそあり 『ARASHI No.1』『ARASHIC』『Are You Happy?』‥‥…サブスク解禁を機に解説

リアルサウンド

20/2/20(木) 7:00

 嵐がこれまで発表した全アルバム曲のデジタル配信、サブスクリプションサービスでの配信を開始した。「Love so sweet」や「Happiness」「GUTS !」をはじめとするヒットシングルのある嵐だが、シングル以外のアルバム収録曲にも隠れた名曲は多い。ソロ曲含め、彼らの魅力はアルバム曲にあると言っても過言ではない。これを機に、嵐のアルバム曲の魅力に触れてみよう。

(関連:嵐『ARASHI No.1~嵐は嵐を呼ぶ~』試聴はこちら

●個性と王道が交錯したデビュー作『ARASHI No.1~嵐は嵐を呼ぶ~』
 今でこそ揺るぎない人気を誇る嵐だが、はじめからそうだったわけではない。デビューシングルと2ndシングルの2作はオリコン週間シングルチャート1位を獲得こそすれ、3枚目~4枚目は首位を逃している。1stアルバム『ARASHI No.1 ~嵐は嵐を呼ぶ~』(2001年)はそんな時期の彼らの作品で、オリジナルアルバムとしては唯一ポニーキャニオンからのリリースである。

〈たぶん僕はフェイクなんだね/好きなのは他のヤツ〉(「サワレナイ」)

 と歌詞に描かれる恋愛もどこかうまくいっていない。まだ軌道に乗り切っていない時代の彼らの“もがき”が表れているようだ。今の嵐には十二分に感じとれる安心感や包容力。そうした魅力を得るには、嵐と言えど時間と経験が必要だったのだろう。

〈胸をはだけた どこまでも君の/野性を知りたい 猛る野性を〉(「野性を知りたい」)

 このアルバムにあるのは大人の余裕や落ち着きというよりむしろ荒々しい“若さ”。「DANGAN-LINER」や「アレルギー」、スケボーキングのメンバーが曲を提供したこともあった初期のミクスチャーロック路線のサウンドも作用して、嵐が文字通りの“嵐”たる所以を感じ取れる一枚になっている。ただ、そんな中にひっそりと忍び込む「愛と勇気とチェリーパイ」や「Deepな冒険」といったソウル~AOR路線の楽曲に確かなジャニーズの王道の血脈が流れている。彼ら独自の個性とジャニーズの王道が織り混ぜられた一枚だ。

●飛躍の時代ーー『One』から『ARASHIC』へ
 軌道に乗り出した2000年代中盤、『One』(2005年)に収録されている全14曲のうち、シングル曲は「サクラ咲ケ」のみ。そういう意味でも“嵐のアルバム曲”を楽しみたいのならまずこの一枚をオススメする。メロウなフュージョン調の「Overture」でゆったりとはじまり、「夏の名前」で爽やかに駆け出し、高速ファンクチューン「ROMANCE」で一気に加速、パワフルなディスコ曲「Lai-Lai-Lai」で爆発させ、優しいピアノバラード「Days」へと着地。その先にあるのは「素晴らしき世界」……と前半の流れだけでも非常に高い完成度。後半にはメンバー5人のソロ曲も収録され、バラエティに富んだ展開を見せる。ストーリー性を持ちつつ、多様性も併せ持つ。本作で何かを掴んだのか、嵐はこのアルバムの発売後から立て続けにヒットソングを連発。ある意味、その後の快進撃のきっかけとなった一枚だ。

 翌06年にリリースした『ARASHIC』は音楽性の幅にさらなる広がりを見せる。全体的にサウンドもクリアに響いており、ストリート感の滲んでいた初期の彼らからしたら考えられないほどの進化だ。リード曲「COOL & SOUL」の野心的な作りもさることながら、音楽通も唸ること必至のグルーヴィーな「Ready To Fly」や「Secret Eyes」、ライブで盛り上がること間違いなしのぶち上げソング「CARNIVAL NIGHT part 2」までどれも聴き応え充分。裾野を広げはじめた中期の嵐を象徴する一枚である。

●それまでの“嵐サウンド”をアップデートする『僕の見ている風景』
 2010年発売の『僕の見ている風景』は彼らの“前傾姿勢”が感じ取れる一作。エネルギッシュなロック調の「movin’ on」や、「マダ上ヲ」で大胆に導入されたエレクトロニクス、壮大なオーケストレーションの施された「リフレイン」といった序盤のパワフルなサウンドを聴けば、初期に比べて格段にパワーアップした彼らの姿を堪能できる。その中で、歌詞の前へ前へと突き進むイメージが印象的。

〈カラダが目覚めれば Over the border 恐いものは無いさ〉(「マダ上ヲ」)

 時代はEDM全盛期。しかし、安易にそれに寄りかからずに積み上げてきた“嵐サウンド”をアップデートするにはどうすればよいのか? その答えのひとつが代表曲「Monster」であり、“アルバム曲”で言えば次曲の「Don’t Stop」である。リズミカルなブラスセクション、優雅な弦の響き、楽曲に物語性をもたらす転調、適材適所の歌割り……どこかそれまでの嵐を感じさせる曲調でありながら、確実に今へと繋がる新しい音を手に入れている。それまでの”嵐サウンド”をアップデートするアルバムだ。

 ちなみに、「Monster」にも「Don’t stop」にもクレジットされ、この時期から深く関わっているアレンジャーの佐々木博史の存在は大きい。クラシックやプログレッシブロックなど様々なジャンルを吞み込み、前衛的になり過ぎないバランスで一曲のポップソングへとまとめ上げるのは彼の手腕によるものだろう。『「untitled」』収録の「つなぐ」や「「未完」」などはその最たる例である。まだ“若さ”のあった嵐が、国民的グループへと登り詰めるまでに至る中期~後期を語る上で欠かせないクリエイターのひとりだ。

●“今の嵐”の中にこれまでの歳月が詰まった『Are You Happy?』
 名実ともに日本一のグループに成長した嵐。この頃の彼らは『THE DIGITALIAN』(2014年)、『Japonism』(2015年)と明確なテーマを持った作品をリリースしている。そんななかで、“嵐が思う今の嵐”をコンセプトにしたのが2016年発売の『Are You Happy?』だ。

 そうしたテーマでも、Earth, Wind & FireとThe Jackson 5を掛け合わせたような松本潤のソロ曲「Baby blue」、マーク・ロンソン「Uptown Funk」への嵐からのオマージュ的な「Don’t You Get It」など、時代性ともリンクしたヴィンテージサウンドはどことなく初期~中期の嵐を彷彿とさせる。「Tokyo Lovers Tune Night」(『HERE WE GO!』2002年)、「身長差のない恋人」(『How’s it going?』2003年)、「JAM」(『いざッ、Now』2004年)あたりの昔の彼らのアルバム曲の世界観を膨らませて現代に蘇らせたようなテイストの一枚だ。

 また、情熱的かつコミカルなダンスナンバーの相葉雅紀ソロ曲「Amore」は「Disco Star」(『THE DIGITALIAN』)や「Mr.FUNK」(『Japonism』)から一貫したモチーフで、あるいは「Lucky Man」(『How’s it going?』)などとも近いものがある。レイドバックしたリズムの「DRIVE」や韻シストが制作に参加した「To my homies」からは、“後期・嵐”の余裕や充実ぶりが伝わる。“今の嵐”をテーマに掲げた中にもこれまでの歳月を思い出させつつ、時を経て獲得した落ち着きが同居する一枚だ。

 今回の記事で紹介できたのはほんの一部だが、まだまだ聴くべき曲は多い。シングル曲だけでは掴み取れない魅力がアルバム曲にはあるため、これを機にアルバム曲から“まだ知らない彼らの魅力”を掘り当ててみてはいかがだろうか。(荻原 梓)

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