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和田彩花の「アートに夢中!」

上村松園と美人画の世界

月2回連載

第33回

20/2/5(水)

現在、山種美術館(東京・広尾)で開催中の『上村松園と美人画の世界』(3月1日まで。会期中、一部展示替えあり)。生涯にわたり美人画を描き続けた女性の日本画家・上村松園。同館創立者であり、初代館長の山﨑種二は、松園と親しく交流しながら作品を蒐集。計18点の所蔵作品は、屈指の松園コレクションとして知られている。同展では、京都で生まれ育った松園が描く、江戸や明治の風俗などに取材した女性像をはじめ、松園と同時代に活躍し「西の松園、東の清方」と並び称された鏑木清方や、その弟子の伊東深水などの日本画家による、多彩な女性像を紹介。日本画における美しい女性たちの姿を和田さんはどう見たのだろうか。

誰が見ても美しい

なんといっても、松園の作品はきれいです!

描かれた女性がきれいというのはもちろんなのですが、着物の色の美しさや鮮やかさにもすごく惹かれましたね。私は普段あまり日本画を見ることがありません。見るとしても浮世絵などが多くて。浮世絵は着物の柄や色が派手だったり、色が強かったりしますが、それとはまったく違った色の美しさに驚きましたね。こんな色があったんだ、こんな色が出せるんだって。

一見すると、パステルみたいな色が多いんですが、決して甘くなりすぎたり、ぼんやりしたり、メルヘンチックになったりということがない。鮮やかでありながらも淡かいという絶妙な色の表現は、日本画ならでは、そして松園ならではの美しさだな、と思わされました。それにしっとりした女性たちのイメージに寄り添った色使い。パステルに近い淡い色の持つ力に気付かされる展覧会でもありました。

今回の展覧会は、いままで見てきた日本画の展覧会の中で、一番楽しいと言っても過言ではないものでした。

構図が面白い!

上村松園《牡丹雪》 1944(昭和19)年 絹本・彩色 山種美術館蔵

松園作品を見ていくと、構図の面白さにも惹かれました。

特に会場の最初に展示されている《牡丹雪》。灰色のちょっと重そうな雪空の下、傘をさす二人の女性が、中央ではなく左下に描かれています。

基本的に西洋絵画は中心にドンっとモチーフが描かれることが多いと思いますが、こんなふうにメインのモチーフと考えられる女性を中央から外して配置するのが面白いなと思いました。

でもこの二人が左下に描かれることによって、どんな情景かっていうことがすごく伝わってくるんですよね。どんよりした空から舞い落ちる牡丹雪。冬のとても寒いある一日の一情景が、構図と色使いによって見事に表現されています。

しかも雪の描かれ方も素晴らしいんです。モタッとした牡丹雪の質感が手に取るようにわかるようです。ぜひ間近で見てもらいたいところでもあります。

上村松園《新蛍》 1929(昭和4)年 絹本・彩色 山種美術館蔵

そして構図が面白いといえば、この《新蛍》という作品も好きでしたね。

簾越しの女性。この簾の透け感がすごい! こういう繊細な日本画の表現方法にも驚かされました。

普通、簾越しの女性や、団扇で口元を隠す仕草、それに簾の曲線に沿うようにS字を描くような体の曲線というのは、男性目線で描かれるとどうしても性的な意味合いであったり、女性の色っぽさが強調されることが多いと思います。でも松園の作品には艶っぽさは若干あるかもしれませんが、あくまでも日常の一風景というか、洗練された美しさが漂うな、とも思いました。

「待つ女性」の表現

上村松園《砧》 1938(昭和13)年 絹本・彩色 山種美術館蔵

そしてほかに好きだったのが、世阿弥作の能の謡曲『砧』に取材したこの作品です。

長年、都へ上ったまま帰ってこない夫を待ち続ける妻。その妻を心配した夫は、三年目にやっと帰ると連絡するも、結局は帰ってこなかった。悲しみに暮れる妻は、せめてもの慰めにと、砧を打ちながらこの音が自分の思いを乗せて夫へと届くようにと念じます。妻は恋焦がれ、夫を恨んだまま死んでしまい、死後、帰国した夫の前に亡霊となって現れるというお話です。

「砧」というのは、洗濯した布や、織物の布をたたいて柔らかくすると同時に、目をつめて艶を出すのに用いる道具、または、この道具を使った布打ちの作業のことを指すそうです。

私は作品を見ている時に、ほかの絵を思い浮かべたりするんですね。この「待つ女性」ということで思い浮かべたのが、フェルメールの《窓辺で手紙を読む女》(1657年頃、アルテ・マイスター絵画館蔵)でした。フェルメールが描いた女性も、それがどういった経緯の手紙かはまだ明らかにされていませんが、明らかに男性からの手紙を読む女性であることは間違いありません。この二つの作品に共通するのは、「待つ」「相手と自分を結ぶ」ことを象徴するモチーフが描かれていること。松園は砧、フェルメールは手紙がそれにあたります。

でも松園のこの女性からは、恋焦がれ、夫を待つ女性像というのは、一見するだけではわかりません。寂しさも感じませんし、ずっしりと大きな作品ということもあって、ある種、芯の強い女性のようにも見えます。でも『砧』というお話しをもとにしていると知ると、一気にこの女性は「待つ女性」になるのも、面白いなって思いました。

髪の毛の質感がすごい!

上村松園《娘》 1942(昭和17)年 絹本・彩色 山種美術館蔵

あと皆さんに注目してみていただきたいのが、髪の毛の表現です。

松園は、びっくりするぐらい細い線一本一本で髪の毛を描いているんです。後れ毛はもちろん、結われた髪の毛のフワッとした感じや、頭皮が透けて見えるようなリアルな表現は、皆さんを驚かせること間違いありません。

例えばこの《娘》という作品は、針に糸を通そうとしている娘さんを描いた作品。

糸を通そうとしている集中力を描き出しているのもすごいと思ったのですが、この生え際のふわふわとした感じもすごいんです。

ここまで描けるんだ、どうやって描いてるんだろうと、私も作品に近寄ってまじまじと見てしまいました(笑)。そうするとだんだん、まつ毛や眉毛もどうやって描いているんだろうと気になってきます(笑)。

女性目線の女性像

今回は、松園のほかにもたくさんの日本画家が描いた女性像が展示され、比較しながら見ることができます。その中でも松園の作品は別格。とにかくうまいですし、美人を描くための技術というのがあるんだなっていうことがよくわかりました。

髪の毛の一本一本はもちろん、着物の柄、色のセンス。そのすべてに意味があり、バランスの良さが素晴らしいんです。それに描かれた女性は、同性の私が見ても、ただただきれいだと思えたんです。

基本的に描かれた女性というのは、男性目線の、男性のための作品であることが多いですよね。《新蛍》でも少しお話ししましたが、男性が描く女性というのは、性的な意味合いを持ってしまう。どこか男性を誘惑するような魅力的な姿であったり、儚かったりと、どうしても「男性」の目線というのを感じてしまうことが多々あります。

女性である私は、そういった男性目線で絵を見ることは絶対にできないわけです。でも松園の作品はそういった誘うような、媚びるような、どこか儚いと感じさせるような美人ではなく、誰が見ても美しい、きれいと思わせる女性像であると改めて気付かされました。

松園の女性たちは「気品」「上品」という言葉がぴったり合います。気高いとも言えるかもしれません。

女性像は古今東西これまで数多描かれてきました。私は松園の作品が本当に美しいと思い、大好きになりましたが、これだけたくさんの日本画家の女性像が並ぶので、皆さんもご自分の好みの女性なんかを探すのも楽しいかもしれませんね。

ぜひ美しい女性たちに会いにいってみてください。


構成・文:糸瀬ふみ 撮影(和田彩花):源賀津己

プロフィール

和田 彩花

1994年生まれ。群馬県出身。2004年「ハロプロエッグオーディション2004」に合格し、ハロプロエッグのメンバーに。2010年、スマイレージのメンバーとしてメジャーデビュー。同年に「第52回輝く!日本レコード大賞」最優秀新人賞を受賞。2015年よりグループ名をアンジュルムと改め、新たにスタートし、テレビ、ライブ、舞台などで幅広く活動。ハロー!プロジェクト全体のリーダーも務めた後、2019年6月18日をもってアンジュルムおよびハロー!プロジェクトを卒業。一方で、現在大学院で美術を学ぶなどアートへの関心が高く、自身がパーソナリティを勤める「和田彩花のビジュルム」(東海ラジオ)などでアートに関する情報を発信している。

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