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ニコラ・フィリベールが河瀬直美と映画制作語る「私は学んでいる途上で、修行中」

ナタリー

19/10/10(木) 21:38

「人生、ただいま修行中」トークイベントの様子。左から河瀬直美、ニコラ・フィリベール。

「人生、ただいま修行中」のトークイベントが本日10月10日に東京・日本シネアーツ社試写室で開催され、監督のニコラ・フィリベールとゲストの河瀬直美が登壇した。

本作はフランス・パリ郊外の看護学校で学ぶ、年齢、性別、出身も異なる生徒40人の150日間を収めたドキュメンタリー。河瀬の監督作「萌の朱雀」がカメラ・ドールを受賞した第50回カンヌ国際映画で審査員を務めていたフィリベールは、まず河瀬と自身の作品について「すごく違うように見えて共通項が多いんです」と考えを明かした。「その1つを挙げるとすれば撮影時に役者や普通の日常を生きている人たちに、こうしてほしい、ああしてほしいとは言わずに撮影の環境作りをするところ。彼女だったら俳優、僕ならその対象となる人たちには、『作品を君たちの自由にしてくださいね』と言う」と続けて説明。「僕も彼女も、意外性や偶然が侵入してくる余地を持つようなアプローチをするんです」とほほえんだ。

一方の河瀬は「ドキュメンタリーを撮る際、カメラという存在は人々の日常に入り込む“脅威”になります」と始め、「でもニコラの作品ではカメラが本当にあるのかなってくらい自然で日常通りに会話しています」と考察。「そこまでの関係性を結ぶということがとても大切で、ただカメラを置いているだけでは撮れないものだと思うんです」とニコラの制作現場を想像した。河瀬の横でうなずくニコラは「その通りです。僕は彼らを観察して考えようなんてことはしない。社会学者のような視点ではなく、彼らに近付いていくという方法を取るんです。同時代に生きる他者や彼らを取り巻く世界を発見しつつ、自分自身との出会いでもあるわけですね」と述べる。

また「劇中に登場した看護学生たちは映画に対してどのような反応をしましたか?」と尋ねられたフィリベールは「“僕らがいる”と感情移入できた作品だと言ってくれました」と答え、編集段階でカットせざるを得なかったシーンに登場していた学生に関しても「彼らは自分の姿が見えなくても、“これは僕らの映画だ”と誇りに思ってくれているような反応がありました」と回想する。また本作について「舞台は看護学校ですが、専門家の作品ではなく皆さんに開かれた作品なんです。若い人も歳を取ったら病気になるかも。そうしたら若い人が献身的に看護してくれるかもしれない。これは世界すべての人に関わるお話です」と説明した。

最後にMCから「お二人にとって映画を作ることとは?」と質問されると、河瀬は「人生を成長させるもの。観客に届けたいという思いで作っています」と述懐。フィリベールは「私が生きている世界へ出会いに行くということでしょうか。カメラを持つことで他者に歩み寄っていくことが可能になります」と話し、「私はいつも確信を持ち、観客を説得しようという強い心を持って映画を作っているわけではありません。他者に近付くのがちょっと怖くて、映画作りに疑問や悩みを持つ人間なんです。私は学んでいる途上で、修行中。それを少し踏み出させてくれるのが映画なんですね」と映画制作への思い入れを口にした。

「人生、ただいま修行中」は11月1日より東京・新宿武蔵野館ほか全国で順次公開。

※河瀬直美の瀬は旧字体が正式表記

※記事初出時、日付に誤りがありました。お詫びして訂正します。

(c)Archipel 35, France 3 Cinema, Longride -2018

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