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岸辺露伴の「だが断る」だけじゃない! 『ジョジョの奇妙な冒険』珠玉の名言5選

リアルサウンド

21/1/6(水) 9:00

  2020年の年末に放送されたドラマ『岸辺露伴は動かない』(NHK総合)の反響を受け、漫画『ジョジョの奇妙な冒険』が再び脚光を浴びている。

 オンエアでは岸辺露伴の名ゼリフ「だが断る」が実写オリジナルとして付け加えられたり、原作では伏字になっていた「XXXX野郎がァーッ!」が「ビチグソ野郎がァーッ!」(第3部『スターダストクルセイダース』に出てくる名ゼリフ)と表現されていたりと製作陣によるジョジョ愛が炸裂した脚本、演出となった。

 そこで本記事では、「だが断る」にも負けないジョジョの名言を紹介。中でも、知る人ぞ知る「PLUCK(勇気をッ!)」を与えてくれる名ゼリフ5選を2021年の始まりにお届けしたい。

逆に考えるんだ(第1部『ファントムブラッド』 第4巻より)

 ジョナサン・ジョースターとブラフォードとの決闘で登場するセリフ。闘いは水中戦となり、ジョナサンは波紋に必要な呼吸が出来ない不利な状況に。溺れ死にそうなジョジョの脳裏に浮かんだのが、愛犬ダニーと遊んでいた際に父のジョージ・ジョースターから言われたアドバイスだった。

「なにジョジョ? ダニーがおもちゃの鉄砲をくわえてはなさない? ジョジョ、それは無理矢理引き離そうとするからだよ。逆に考えるんだ。『あげちゃってもいいさ』と考えるんだ」

 普通の人間は追い詰められ、息が苦しければ水面に出ようと考える。しかし、ジョナサンは湖底へと潜り、地盤沈下によって岩と岩の間に閉じ込められた酸素を吸い、青緑波紋疾走(ターコイズブルーオーバードライブ)を放ったのだ。

 この“逆に考える”発想は、後のジョジョのストーリーにも色濃く息づいている。例えば、第4部『ダイヤモンドは砕けない』の最終決戦で、東方仗助はキラークイーンが放つ空気弾から逃げるのではなく自ら向かっていき、川尻早人は爆弾に変えられた虹村億泰を救うために彼に触れ運命に立ち向かっていく。第6部『ストーン・オーシャン』で厳正懲罰隔離房(ウルトラ・セキュリティ・ハウスユニット)にブチ込まれた空条徐倫は、クソをひっかけられようと、虫だらけのパンを与えられようと逆に強くなっていった。どれもブッ飛んだ根性が可能にする行動かもしれないが、発想の転換はどんな場面にも応用できる考え方である。

違うね……「道」というものは自分で切り開くものだ(第3部『スターダストクルセイダース』 第17巻より)

 空条承太郎がホイール・オブ・フォーチュンの本体ズィーズィーに言うシンプルにかっこいいセリフ。これは前振りとしてズィーズィーの「おまえらには文字どおりもう『道』はない。逃げ『道』も、助かる『道』も、エジプトへの『道』も、輝ける未来への『道』もない」というセリフがあってのアンサーである。この後に、手本としてスタープラチナのオラオララッシュで道を切り開く承太郎は、ジョジョシリーズの中でも王道と言っていい主人公キャラと言えよう。「道」と言えば、後に、第5部でジョルノ・ジョバァーナが言う「『覚悟』とは!! 暗闇の荒野に!! 進むべき道を切り開く事だッ!」という名ゼリフもある。

 ちなみに、ズィーズィーが承太郎一行に宣言する「勝ったッ! 第3部完ッ!」は、ジョジョの中でも珍しいメタ発言。これに承太郎も「ほーお、それで次回からは誰がこの空条承太郎の代わりをつとめるんだ?」「まさか、てめーのわけはないよな!」とメタ発言で返す、登場キャラ全員がノリノリな回でもある。

「ブッ殺す」と心の中で思ったならッ! その時スデに行動は終わっているんだッ!(第5部『黄金の風』 第53巻より)

 その端正なビジュアルと、兄貴としての面倒見の良さからカリスマ的人気を誇るプロシュートのセリフ。まだマンモーニ(ママッ子野郎)な弟分のペッシにギャングとしての心構えを行動で教えるため、グイード・ミスタの脳天を拳銃で打ち抜く前に放つ一言だ。後に、プロシュートはブローノ・ブチャラティとの一騎打ちで叩きのめされるが、列車にしがみつき瀕死の状態でスタンドのザ・グレイトフル・デッドを発動する。その覚悟ある行動にペッシは言葉の意味を心で理解し、急成長。自信に満ち溢れた風貌のペッシはプロシュートの意志を遂げようと、ブチャラティを苦しめることとなる。

 「ブチャラティ VS プロシュート&ペッシ」戦は名言の宝庫であり、かの有名なブチャラティの「覚悟はいいか? 俺はできてる」「アリーヴェデルチ(さよならだ)」もこのバトルに出てくるセリフ。「覚悟」とは第5部に通底している精神であり、その心のあり方はプロシュートのセリフにも滲み出ている。言わば、覚悟の強さが上なのはブチャラティだったというわけか。

わたしは「結果」だけを求めてはいない(第5部『黄金の風』 第59巻より)

 死にゆく意識の中で、レオーネ・アバッキオに警官時代の同僚が投げかけるセリフ。以下、全文。

「そうだな…わたしは『結果』だけを求めてはいない。『結果』だけを求めていると、人は近道をしたがるものだ…………近道した時、真実を見失うかもしれない。やる気も次第に失せていく。大切なのは『真実に向かおうとする意志』だと思っている。向かおうとする意志さえあれば、たとえ今回は犯人が逃げたとしても、いつかはたどり着くだろう? 向かっているわけだからな……………違うかい?」

 相棒を死なせてしまった汚職警官として、外すことのできない十字架を背負い、身も心も暗黒へと落ちていったアバッキオ。けれど、彼は決して正義の心を捨ててはいなかった。死に際にはボス(ディアボロ)の大きな手がかり(真実)を残し、魂となって消えてゆく。そして、相棒の言葉はこう続く。

「アバッキオおまえはりっぱにやったのだ。そしておまえの真実に『向かおうとする意志』はあとの者たちが感じとってくれているさ。大切なのは…そこなんだからな…」

 これは、「結果」だけを残すディアボロのスタンド「キング・クリムゾン」に対するアンチテーゼのような言葉だ。「真実から出た『誠の行動』は決して滅びはしない」。ディアボロとの最終決戦でジョルノ・ジョバァーナは、旅路で亡くなっていった仲間の行動や意志を受け継ぎ、ディアボロをどこへも向かうことすらできなくする。「苦難の道」にも何か意味があるかもしれない。運命に抗う奴隷というのは、第5部の大きなテーマ。そして、受け継がれる意志とは現在も連載中の『ジョジョリオン』にまで継承されている魂、人間讃歌である。

「納得」は全てに優先するぜッ!!(第7部「スティール・ボール・ラン」 第8巻より)

屈指の名バトルとなるリンゴォ・ロードアゲイン戦での、ジャイロ・ツェペリのセリフ。死刑を執行する宿命を背負ったジャイロは国家反逆罪で捕まったマルコの無罪を信じ、彼を救う手段である「国王の恩赦」を得るためにレース「スティール・ボール・ラン」に参加した。リンゴォを前に、幻影となって現れた父・グレゴリオ・ツェペリが全ては「感傷」が原因であると、ジャイロを引き止める。そこでジャイロが言い放つのが下記のセリフだ。

「オレは「納得」したいだけだ。「納得」は全てに優先するぜッ!! でないとオレは「前」へ進めねえッ! 「どこへ」も!「未来」への道も! 探す事は出来ねえッ!!」

 ジャイロの過去が描かれる第4巻で「この任務を我が心の『誇り』としたい!」「『納得』は『誇り』なんだ!」と発言している通りに、彼の中での「納得」はレースにおける最重要テーマ。「納得」のために、公正なる「果し合い」を申し込んできたリンゴォの「男の世界」へと足を踏み入れていく。激闘の末、「対応者」から一歩「光輝く道」に進んだジャイロは、やがて「納得」に通じる遺体集めをレースの目的としていく。

 また、ドラマ『岸辺露伴は動かない』で岸辺露伴を演じた高橋一生は、この「『納得』は全てに優先するぜッ!!」のセリフに感銘を受け、「僕は『自分がどれだけ納得するか』こそが説得力だと思っているので、それをいつも自分の根底に据えてお芝居をしてきたつもりです」とインタビュー(『ウルトラジャンプ』2020年12月特大号より)で答えている。荒木飛呂彦が描くキャラクターはみんながマイノリティ、だからこそ自分たちの世界観をぶつけ合う登場人物に勇気付けられるのだと。

■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter

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