海外映画取材といえばこの人! 渡辺麻紀が見た聞いた! ハリウッド アノ人のホントの顔
テリー・ギリアム
連載
第22回

── 今回はテリー・ギリアムです。彼の念願の作品『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』が1月24日(金)に公開されます。ギリアムはこの企画をずーっと持っていて、やっとこさ完成したんですよね?
渡辺 プレスによると“構想30年、企画頓挫9回”とありますからね。企画がスタートしたのは1989年で、02年にはそれが頓挫するプロセスを追ったドキュメンタリー、『ロスト・イン・ラ・マンチャ』まで作っている。決してタダでは起きないギリアム(笑)。でも、世紀をまたいで完成したこの作品、私はとても好きでした。何だか彼の人生が凝縮しているような感じで切なくなる。
── イギリス人のようですが、実はアメリカ人なんですよね?
渡辺 イギリスに渡り、モンティ・パイソンの連中と出会って才能が開花したというところでしょうか。当時はアニメーターとして参加し、ときどき出演もしていたけど、『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』(75)で映画監督デビューを飾ってます。『バンデットQ』(81)で注目を集め、『未来世紀ブラジル』(85)でブレイクした。
私がインタビューしたのは『12モンキーズ』(96)です。『バンデットQ』(81)のLD(レーザーディスク)のジャケットにサインをしてもらった。『バンデットQ』の原題は『Time Bandits』なんですが、日本語風な発音で『バンデットキュー』と言ってました。
── 『12モンキーズ』はブラッド・ピットがオスカーにノミネートされました。
渡辺 そうでしたね。インタビューのとき、私が印象的だったのは、ギリアムがマデリン・ストウのことを熱っぽく喋っていたことです。彼女をすごく褒めていて、それから随分経って彼女のインタビュー映像を観たことがあるんですが、やはりギリアムのことを、他の人たちとはまるで異なる言葉で賞賛していた。このふたり、現場で相当惹かれあっていたんじゃないかと思ったんですよ。『12モンキース』の切なさはその関係性から生まれたのかって(笑)。
── そこまで感じたわけですね(笑)。
渡辺 ギリアムって、私の印象だとすごく正直な人なんです。忖度しない人。自分を曲げることができたなら、それこそティム・バートンと並ぶファンタジーの人気監督になっていたと思いますよ。ディズニーとも仕事してたかもしれない(笑)。