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遠山正道×鈴木芳雄「今日もアートの話をしよう」

早世のカリスマ・アーティスト ジャン=ミシェル・バスキア

月2回連載

第8回

18/12/21(金)

左:遠山正道、右:鈴木芳雄

鈴木 ここ最近お互いが見た映画が、『バスキア、10代最後のとき』。

遠山 そうそう、芳雄さんも私もコメント求められて、私は短く「自ら掴む、そして時代も自ら作るということ。」ってコメントした。芳雄さんは長い文章を寄稿したんだよね?

鈴木 うん、僕は「英雄(ヒーロー)は突然あらわれ、身近なところにいて、やがて足早に立ち去ってしまうものだ。」ってタイトルで、2400文字ぐらいの文章を寄稿しました。パンフレットで見られます。

映画『バスキア、10代最後のとき』(C)2017 Hells Kitten Productions, LLC. All rights reserved. LICENSED by The Match Factory 2018 ALL RIGHTS RESERVED Licensed to TAMT Co., Ltd. for Japan

遠山 映画の話に入る前にちょっと聞きたいんだけど、数多の有名アーティストと会ってきた芳雄さんだけど、バスキアに会ったことある?

鈴木 いつか会えるでしょって簡単に思ってたら、早世してしまって、会えなかったという。

遠山 でも会えると思ってたということは、近しい存在だったわけだ。

鈴木 知り合いの知り合いではあったんだけどって感じ。それについて話す前に、バスキアという人は、1960年12月22日生まれで、1988年8月22日に亡くなってるのね。17歳くらいからスプレーペインティングを始めて、そのあとにバーバラ・クルーガーとかに見出されて、ニューヨークで個展を開くようになる。で、1980年頃にアンディ・ウォーホルと出会って、83年から本格的に共同制作をするように。

遠山 ということは、バスキアの活動期間ってたった10年ぐらいってことか。生き急いでるなあ。

鈴木 本当に。バスキアが日本で大々的に紹介されたのは、1982年のこと。『BRUTUS』で「ブルータスのニューヨーク・スタイル・マニュアル」(1982年9月15日号)という特集が組まれて、そのエディターの一人が都築響一さんだったんだけど、そこでバスキアのアトリエを取材に行ってるわけ。

遠山 すごい先見の明というか、そこに目をつけたんだ。でもその頃って、そこまでバスキアは日本では有名じゃなかったよね?

鈴木 グラフィティ界では「スッゲー面白い奴がいる!」っていうので有名だったけど、勢いのある若手って感じだった。

遠山 そりゃそうだよね。まだ若干22歳だし。
 で、今回の映画はバスキアの10代の時に焦点を当てたドキュメンタリーだけど、都築さんはそれより数年後にバスキアに会ってるわけだ。どんな人だったんだろう。その時のこととか話聞いてる?

鈴木 雑誌の内容もよく覚えてるし、都築さんからも少し聞いたんだけど、取材に行ったらけっこう歓迎してくれたって。で、“よかったら食えよ”って冷めたピザを勧められたと(笑)。

遠山 なんかそのピザ、大丈夫かなって疑心暗鬼になっちゃう(笑)。だってすでにバスキアはクスリやってたでしょ?

鈴木 そうそう、その時もクスリやってたからテンション高いし、何より眠らない。しかもそのピザは何日も前のもの。それを時々思い出したように食べるらしいんだけど、ひたすら並行して何枚も描き続けるんだって。

遠山 自分の時間の終わりを予感してたのか、やっぱり生き急いでるよね。描きたくて仕方なかったんだ。しかし恐ろしい創作意欲というかなんというか。
 じゃあ都築さんを挟んでバスキアだったわけだ。となると、勝手に身近な存在って思ってしまいそう(笑)。

鈴木 そしてこの後に偶然なんだけど、日比野克彦くんのトークに行ったらバスキアの話になって。その時、日比野くんはニューヨークから帰ってきたばっかりだったんだけど、ニューヨークのギャラリーをひたすらまわってた時に、ソーホーでバスキアに会ったんだって。

遠山 バスキアも徘徊というか、よく街をうろうろひたすら歩いたりしてたっていうもんね。

鈴木 で、バスキアが日比野さんが持ち歩いてた作品のファイルを見せてくれって言われて見せたら、すごい気に入ってくれて、ハグしてくれた。でもあまりにもハグがキツくて、嬉しかったけど……ってなんだか複雑な気分になっちゃったって(笑)。

遠山 まさしく知り合いの知り合いだったわけだ。

鈴木 でも僕は会えなかった。それで僕なりに再接近遭遇を試みたわけです。

遠山 それはどんな?

鈴木 神宮前(当時)のギャラリー360°でサイン入りの画集を買いました。以上(笑)。

遠山 実は芳雄さん、バスキア好き?

鈴木 実は好き。

フォンダシオン ルイ・ヴィトンの展示風景。左は前澤友作氏が約123億円で落札した《無題》photo/ Yoshio Suzuki
フォンダシオン ルイ・ヴィトンの展示風景。ドローイングのセクション photo/ Yoshio Suzuki
ルイ・ヴィトン財団所蔵作品《Grillo》。photo/ Yoshio Suzuki

遠山 いまパリのフォンダシオン ルイ・ヴィトンで、エゴン・シーレと同時開催のバスキア展にも行ってるよね?(2019年1月14日まで)

鈴木 行ってる。これもすごいよかった。会場には約120点のバスキア作品が並んでて圧巻。半立体の作品もあって、見応えあったね。2010年のパリ市立近代美術館でやったバスキア展も見てるし、海外行った時にやってたり、日本で何かバスキア関連の展覧会があったらもちろん見る。

遠山 立派な追っかけだ(笑)。

2010年、パリ市立近代美術館での展示。展示室内は撮影禁止。photo/ Yoshio Suzuki

この冬オススメのアート映画
『バスキア、10代最後のとき』

映画『バスキア、10代最後のとき』(C)2017 Hells Kitten Productions, LLC. All rights reserved. LICENSED by The Match Factory 2018 ALL RIGHTS RESERVED Licensed to TAMT Co., Ltd. for Japan

鈴木 バスキアはペインティング・マシーンだったんだと思う。ご飯食べるよりも描く。寝るよりも描く。描かずにいられない。

遠山 確かにそうかも。その片鱗はすでに10代の時からあるよね。それはこの映画から知ることもができる。「10代」という限定した期間だけを追ったドキュメンタリー映画。

鈴木 証言が多い映画だったから、いままであまり知られてなかったバスキアの10代の姿を知ることができるのはいいよね。みんなが思ってるバスキアって、例えば近年すごい値段で買われた作家とか、ウォーホルと一緒にいた人とか、バスキアという人そのものにあまりフィーチャーされてなかったと思う。

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