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山村浩二が“言葉から作り上げる”アニメーションに共感、「新しい街 ヴィル・ヌーヴ」試写会

ナタリー

20/9/2(水) 22:52

「新しい街 ヴィル・ヌーヴ」特別試写会にて、左から山村浩二、土居伸彰。

長編アニメーション「新しい街 ヴィル・ヌーヴ」の特別試写会が、本日9月2日に東京のアンスティチュ・フランセ東京で行われ、上映後トークイベントにアニメーション作家・山村浩二と、本作を配給したニューディアー代表・土居伸彰が登壇した。

レイモンド・カーヴァーの短編小説「シェフの家」にインスパイアされて生まれた本作。1995年のカナダ・ケベック州独立運動を背景に、思い出の地“ヴィル・ヌーヴ(新しい街)”で再会したアルコール依存症の詩人ジョゼフと元妻エマの物語が全編手描きによる墨絵で紡ぎ出される。

上映前にはビデオメッセージが上映され、本作の監督であるフェリックス・デュフール=ラペリエールが「豊かなアニメ文化のある国の人々に観てもらえるのは夢のよう」「親密で政治的な作品です。小さなケベックの物語ですが、私たちにとっては重要な物語です」と観客に語りかけた。

山村はまず「しっかりした情熱を持って作られた作品」だと評価したうえで、「(本作を配給したのは)勇気があるなと思いました。監督もあまり知られていないですし、日本ではケベックも文化的になじみのない人が多いと思うので」と率直に述べる。これまで「父を探して」などのインディペンデントアニメーションを日本に紹介してきたニューディアー。土居は「こんな作品を作るのかというものに出会ったとき、自分の使命感というか、その勇気に報いたいと思って配給するんです。本作はアニメーション映画祭よりも、ヴェネツィア国際映画祭など実写との境目のところで評価されていて、そこに可能性を見ました」と経緯を説明する。

ケベック州の住民独立運動において、現実にはわずか1%の差で否決となったが、本作では同じく1%で賛成票が上回った“パラレルな世界”が舞台に。山村は「登場人物たちは過去にも未来にも行きようがないというか。ケベック州の独立もほぼ半々で、前進か現状維持かというグレーのまま。そんな停滞感を長編で描いているのが面白かったです」と感想を伝える。また「言葉の力に重きを置いてるのも印象に残りました。特に『歯がゆさを叫んでいるようだ』というセリフがありましたが、この映画に出てくる人々の心情であり、監督が伝えたかったことでもあるのかな」と推測。

それを受け、土居は本作の制作過程について解説する。最初にデュフール=ラペリエールが登場人物のモノローグを書き、言葉の土台から組み立て、いくつかのシーン以外はアニメーターにすべて任せたという。また監督自身は短編アニメが好きで、ヤン・シュヴァンクマイエルやフレデリック・バック、ノーマン・マクラレンらの影響を受けているが、詩的な部分を追求していくうちに自分は長編向きだと気付いたらしい、というエピソードも語られた。

山村は納得しながら「テキストを重ねて、さらにイメージも重ねるのは短編だと容量オーバーになってしまう。言葉から発想していったという作り方は長編向きだと思います」とうなずく。また山村は、日仏合作による長編アニメーション「幾多の北(A Dozen Norths)」の製作を発表したばかり。2021年の完成を目指しているという本作について「僕が今作っている作品も言葉が重要となっています」と明かし、「20代、30代の頃はビジュアル中心に考えていましたが、次第に言葉の重さを感じ始めてきました。若いときは『新しい街』のよさを理解しきれなかったかもしれませんが、今はこの言葉を映像に載せたかったんだなと理解できます」と続けた。

「新しい街 ヴィル・ヌーヴ」は9月12日より東京のシアター・イメージフォーラムほか全国で順次ロードショー。

(c)L'unite centrale

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