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菅田将暉、祐太郎の“表と裏”を絶妙に体現 ほんの少しの後味の悪さが『dele』の魅力に

リアルサウンド

18/8/4(土) 12:30

 8月3日に金曜ナイトドラマ『dele』(テレビ朝日系)の第2話が放送された。このドラマの主人公は、クライアントの依頼を受け、死後に不都合なデジタル記録をすべて“内密に”抹消する仕事を請けもつ坂上圭司(山田孝之)と真柴祐太郎(菅田将暉)の2人である。2人は度々、死亡した依頼者の人生や隠された真実と向き合うことになる。依頼者が亡くなっているにも関わらず、依頼者のPCやスマホのデータは生きている。生きているデータから、亡くなった人の人生を知ることになるのが、このドラマの醍醐味だ。

参考:菅田将暉の溢れ出る“優しさ”が物語の鍵に? 『dele』ワールドが持つ誘引力を分析

 第2話で注目したのは祐太郎である。第1話では、圭司の姉・舞(麻生久美子)が「この子は人を少しだけ優しい気持ちにすることができる」と話している。人を優しい気持ちにする祐太郎は、常に「相手」のことを考えながら行動しているように見える。そのため、依頼者の周りにいる人たちとコミュニケーションをとることに抵抗がない。

 菅田が演じる祐太郎は、第2話冒頭で圭司に対し「他人の感情を汲み取る速さ」を発揮している。圭司のPCに連絡が入り、依頼者が死亡した可能性が生じた。その際、圭司は死亡確認をとるよう祐太郎に命じようとするが、彼はすでに緊急連絡先への連絡を実行し、死亡確認をとろうとしていた。このとき、圭司は一瞬呆気にとられたような目つきを見せる。偏屈な圭司の表情により、祐太郎のこの「速さ」がどんな人にも通用することが見てとれるが、当の本人はあっけらかんとしているのが、祐太郎の魅力といったところだろうか。

 依頼者・宮内詩織(コムアイ)の住むマンションの管理人や宮内の両親、友人と接するときも、宮内との関係性をなめらかに偽るが、誰もがその関係性を疑っても彼そのものを拒絶しようとはしない。それはおそらく祐太郎が「相手が何を望んでいるか」を汲み取れているからだ。そして演じている菅田自身に、相手に警戒心を持たせないよう適切な距離を保とうとする優しさがにじみ出ているからこそ、視聴者も彼の行動をたしなめようとは思えないのではないだろうか。菅田の警戒心を抱かせない笑顔と、人の話を聞く際の真剣な眼差しは、相手に寄り添い行動する祐太郎らしい表現である。

 菅田はそんな祐太郎のひょうひょうとした印象だけでなく、祐太郎の過去を匂わすような陰の部分も醸し出した。圭司を連れて宮内に焼香をあげに行った際、圭司は宮内の父親に「言わなくても大体察しがつく」と、想定し得る宮内と家族の関係を冷たく言い放つ。このとき横で話を聞いている菅田の表情は厳しく、目は鋭い光を放っていた。圭司の冷たい物言いに体を硬くしていただけかもしれないが、圭司の発言や宮内の家族との関係に、祐太郎の陰の部分がすり合わされているようにも感じた。この場面での真の主役は圭司なのだが、暗い車内で顔に影を落とし、ひょうひょうとした雰囲気なしに鋭い眼光で圭司を見つめる菅田の演技に感じるものがあった。直後には、宮内の両親に「娘さんは音楽を続けていた」と伝え、圭司に「余計なお節介だ」と指摘される“いつもの”祐太郎なのだが、あのわずかなシーンの中で祐太郎の陰を感じさせるのは驚く。

 『dele』では、まるで「菅田将暉=真柴祐太郎」と勘違いしてしまうほど、劇中で祐太郎のキャラクターはいきいきとしている。人懐っこい表情には、依頼者との関係を悟られてはいけないために、嘘が隠されているとも言える。それでも嫌な雰囲気を感じないのは、菅田がごく自然に祐太郎を体現しているためだろう。視聴者には明かされていない祐太郎の陰の部分もひっくるめて、彼のキャラクターを自分のものにしている。

 『dele』は物語の終わりに感じる、ほんの少しの後味の悪さが生々しくて魅力的だ。両親との関係が良くなかった宮内が「やっぱりデータは消さないでください」と依頼したデータ、その内容は友人達を家族だと話す宮内の生前葬のデータだった。データを消さないよう依頼した理由について、最後の最後に圭司がつぶやいた「復讐」という2文字。本当のところは、亡くなってしまった依頼人にしか分からない。生きているデータから読み解けるのは、依頼者が歩んできた人生だけなのだ。(片山香帆)

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