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峯田和伸(銀杏BOYZ)のどうたらこうたら

クラッシュは本当に「獣を野に放て」と思っていたかどうか

毎週連載

第130回

前回、昔のレコードの映えなさの話をしたけど、僕、あんまり収集癖ってないけど、唯一ずっとハマっているのが、レコードを買うこと。

レコードを買うのは10代後半からずっとやってるけど、第1期は「その音が聴ければなんでも良い」っていう感じで、できるだけ安くレコードを買って聴いてた。

さらに第2期は、もともと好きだったパンク以外でも、「ロックの名盤」とされるものをだいたい買って、それまでの僕自身の文脈にないものもだいたい網羅した。

そして、今が第3期なんだけど、昔のイギリス、アメリカのバンドのレコードの日本盤を買うことにハマってるの。「日本盤」ってことにこだわって買っているとさ、すでに持っているイギリス盤、アメリカ盤、と改めて買った日本盤がカブるようになっちゃうんだけど、それも含めて楽しみながら買い集めてる。

日本盤のLPレコードって、左側に帯がついているでしょ。あれは日本特有のものなんだ。その希少価値によって中古レコード市場では値段が上がってるんだけど、僕にとってはそういう株のような上がり下がりを楽しむこととは違って。日本盤の何が面白いって、帯に書かれた邦題とか文言なんだよね。

有名なやつだと、セックス・ピストルズの『ネバー・マインド・ザ・ボロックス』。邦題だと『勝手にしやがれ!!』って書き換えられてる。あとはラモーンズのファーストが『ラモーンズの激情』って邦題になって、急にピンクの帯をつけちゃったりして。さらにクラッシュのセカンドも『動乱(獣を野に放て)』っていう、すごい文学的な攻撃性のある邦題になってる。クラッシュ、本当に「獣を野に放て」みたいなことを歌っていたのかな? とも思うけど(笑)、たぶんレコード会社の担当者が好き勝手にタイトルを作っちゃったんだろうね。

でも、僕が生まれ変わったら、この時代のレコード会社に勤めてさ、「洋楽の邦題を付ける」仕事に就きたいと思ってる。メチャクチャ楽しかっただろうね、邦題を付ける仕事の人(笑)。

こうやってさ、勝手な邦題によって日本独自の付加価値がつくことは面白いんだけど、ただ僕が好きなパンクとかポストパンク、ニューウェーブとかの帯付きのレコードってそんなに多くないんだよね。

パンクが日本に来たのがだいたい70年代後半で、その後もイギリス、アメリカの色んなバンドの日本盤のレコードが出たんだけど、帯付きは1986年までなんだ。何故かと言う、1986年を境にCDの時代に入っていき、イギリス、アメリカのバンドの日本盤っていうのがなくなっちゃったから。「このバンドのこの作品はどうしてもレコードで聴きたい」っていう場合は、輸入レコード専門店で、輸入盤を買うようになっていったんだよね。だから、ニルヴァーナ、オアシス、スマッシング・パンプキンズとかは90年代のロックなので、輸入盤しかないってことなんだ。

こんな風に、レコードをいろんな側面から楽しんでいる今なんだけど、この後、レコード収集第4期が来るとしたら、どんな感じになるのかな。たぶんこの趣味だけは一生やめないと思うから、この先も今から楽しみです。

キャッチコピーには「70年代のすべてを破壊して、新しい英雄伝説はもう始まっている」とあります

構成・文:松田義人(deco)

プロフィール

峯田 和伸

1977年、山形県生まれ。銀杏BOYZ・ボーカル/ギター。2003年に銀杏BOYZを結成し、作品リリース、ライブなどを行っていたが、2014年、峯田以外の3名のメンバーがバンド脱退。以降、峯田1人で銀杏BOYZを名乗り、サポートメンバーを従えバンドを続行。俳優としての活動も行い、これまでに数多くの映画、テレビドラマなどに出演している。


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