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安達祐実、見事な母親像で説得力をもたせる 『ケンカツ』山田裕貴が見つけた母親への寄り添い方

リアルサウンド

18/8/8(水) 6:00

 8月7日に放送されたドラマ『健康で文化的な最低限度の生活』(カンテレ・フジテレビ系)第4話。1年前に夫のDV(家庭内暴力)が原因で離婚し、現在は生活保護を受けながらシングルマザーとして奮闘する岩佐朋美(安達祐実)と、えみる(吉岡里帆)の同期である七条竜一(山田裕貴)の関係がフォーカスされた。

【写真】安達祐実と向き合う山田裕貴

 朋美は、傍目から見てもかなり苦境に立たされているようには思えるが、求職活動にも積極的な、一見、はつらつとした明るい女性である。そんな彼女に対して七条は、女手一つで自分を育ててくれた母のことを重ねてみてしまう。

 番組公式ホームページの人物相関図で七条のところには、「一生懸命働いて育ててくれた母親を見てきたため、何かと理由をつけて働かない人が許せない、という考えの持ち主」とある。恐らく七条は、いつも母の背を見て過ごしてきたのだろう。そして母は、彼の前で弱音など吐かない(吐けない)人だったのかもしれない。

 そんな彼は朋美に「頑張ってほしい」「踏ん張ってほしい」「負けてほしくない」と声をかけ、熱心に応援する姿勢を示す。彼女もまた、それに応えようとする。しかし、これで問題が明るみになる。やはり外側からでは分からない、人それぞれの苦労というものがあるのだ。彼女の懸命さは嘘ではない。何を楽しいと感じるか、何を辛いと感じるかは人それぞれだ。この場合で言えば、七条は朋美に“寄り添えたつもり”になってしまっていただけなのである。だが、彼の必死に応援する姿もまた嘘ではない。

 現在36歳の安達は、現実にも二児の母。であるからこそなのか、今作で演じる朋美役として、娘・咲(吉澤梨里花)の手を引く姿などは、やはり真実味がある。しかし安達といえば、『海月姫』(フジテレビ系)での最強のオタク女子・ノムさん役の衝撃も記憶に新しい。どこかあどけなさを残した少女のようなルックスに、語尾に「でしゅ~」をつけたセリフ回し。芸歴34年の彼女だからこそ、なせるわざなのだろうか。演技力の振れ幅だけでなく、見た目の説得力の幅も計り知れない、何にでも変身してしまう稀有な女優である。今作でも、責任感が強く、それが原因で自身を追い詰めてしまう母親像を見事に作り上げた。

 そんな安達の演じる朋美と対峙したのが、山田演じる七条。朋美の異変に気づいたえみるは、「あまり追い込まないほうがいい」と彼に助言するが、朋美の側につき、そして同じように母子家庭で育った自分こそ「彼女のことを分かっている」のだという。

 今回は、いつも彼ら新人ケースワーカーに厳しいながらも温かさを見せる上司・京極大輝(田中圭)のセリフが胸に響いた。「誰よりも母親の気持ちを分かっているはずだろ」の一言である。そこに重なるのは、「自分の口から“助けて”と言えない母親は多い」のだと口にする七条の母の姿である。それを受けた七条は走る。そして、もうすでに精神的にかなり追い込まれている朋美に「頑張っている母親より、頑張っていない母親の方が好きだった。一緒にいられる時間が長かった。だから今は、頑張らないでほしい」という言葉を贈るのだ。これが彼の寄り添い方である。

 そんな彼に対して朋美は、「頑張ります」という言葉を返す。だがそれは、七条に勢いづけられ、無理をして口をついて出た「頑張ります」ではなく、ここからまたゆっくり歩きだしていこうと、そんな決意とも取れる明るい言葉であった。そこで見せた朋美の笑顔は、もっとも優しいものであった。

(折田侑駿)

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