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ぴあ

いま、最高の一本に出会える

写真左から遠山正道、鈴木芳雄、小川信治

遠山正道×鈴木芳雄「今日もアートの話をしよう」

小川信治とヴァンナチュールの夜

月2回連載

第16回

19/4/19(金)

唯一無二の方法論と制作手法

鈴木 なんと今回は、遠山さんも作品をコレクションしている作家の小川信治さんが奥様と一緒にゲストとして来てくださいました。しかも小川さんの作品の前で、お二人のオススメのヴァンナチュールを飲みながらという、とても贅沢な形でお話を聞いていきたいと思います。

遠山 ご夫婦はヴァンナチュールの愛好家でもあるから、ワインのお話も聞きたいけど、まずは作品について聞きたいな。

鈴木 遠山さんは小川さんの作品を2点持ってるんだよね?

遠山 そう、大きな《ロンド4》という作品と、絵葉書の作品。

鈴木 じゃあまずは、小川さんとの出会い、そして《ロンド4》を買った経緯から教えてください。

《ロンド4》2017、アルシュ紙に鉛筆、75.8 X 149.8 cm

遠山 小川さんを紹介してくれたのは、千葉市美術館の学芸員・畑井恵さん。ある時、2016年に千葉市美術館で開催された「小川信治−あなた以外の世界のすべて」(2016年9月7日~ 10月30日)のカタログをくれたんです。前から気になっていた作家さんだったんだけど、畑井さんが“遠山さんと小川さん絶対合うと思います。お二人ともワイン大好きだから”って、猛プッシュしてくれて。

鈴木 マッチングみたい(笑)。

遠山 まさしくそんな感じ(笑)。それで、MAHO KUBOTA GALLERYでやってた小川さんの個展「干渉法 – 鏡像とロンドによる」(2017年10月13日〜11月15日)に出てた、《ロンド4》に出会ったわけ。個展の中でもひときわ大きな作品で、代表作なのかな?

小川 代表作ですね。

鈴木 でもここで即決購入したんじゃなかったよね? ギャラリーで見てからずっと“いいんだよねえ。欲しいんだよなあ、欲しい”って言ってたのをすごい覚えてる。

小川 え! そうなんですか。

鈴木 うん、片思い時期があったんですよ。

遠山 そう(笑)。一目惚れだけど、即決できなかった……。でもこの作品にいろんな「価値」が詰まっているということは一目見てわかってたから、いつか買うとは確信してた。

鈴木 迷う楽しみっていうのを、楽しんでる感じだったな。でもそういう迷う楽しみって、手に入れた時の嬉しさもひとしおじゃない。

遠山 そうなんだよね、だからいま手元にあるのがすごく嬉しい。しかもご本人も認める代表作だし。小川さんの作品は、一見すると実在の、既存の風景を描いているように見えるんだけど、小川さんの手で操作された風景なのが面白い。そしてその作品は写真と見紛うほど緻密。

鈴木 まずは小川さんの作品コンセプトを教えてください。

小川 僕はいつもアイディアを思いつく時、まず「記号」で思いつくんです。僕にとって動的な現実をそのままを扱うことはあまりにめまぐるしく、リアルすぎ、意味が強すぎてそれに囚われてしまうからできないんだと思います。だから、ありえない角度から切り込む自由を得るために、いったん描く対象を記号化しているんだと考えています。

鈴木 《ロンド4》はどういった記号なんですか?

小川 後ろに描かれているお城と山を「A」として、前景の馬車を「B」、右の少女を「C」と考え、画面構成的には「ABACA」という形になります。

鈴木 なるほど。じゃあ作品アイディアってどこから生まれるの?

小川 作品のアイディアは突然ひらめくので、アトリエのいたるところにメモ帳が置いてあり、すぐに書きとめられるようにしています。名古屋大学の秋庭史典さん(美学)に、僕は「記譜法」を用いていると指摘されました。未だ記録されたことのないものや形のないものに出会った時、それをどのように記録するのか? と考えた時に、例えば既成の楽器を使わないノイズのような現代音楽などでは、作曲家は五線譜を捨て、現代アートのような楽譜を自ら考案することもありますよね。僕の場合、それが言葉だったり、記号だったり、殴り書きの絵だったりするんですが、その時思いついたイメージにふさわしいやり方を瞬時に選んで、忘れてしまったり、安易に解釈して変質してしまわないようにとにかくそのまま残すようにしています。
 そしてそこから、僕が集めている、旅先の蚤の市なんかで買った古い絵葉書や、家族のアルバムなんかを見て、イメージに合いそうなものを選び、箱に入れていく。同時にラフスケッチを行い、構図を決めます。構図に基づいて実際に制作する画面を、箱に入れた写真や絵葉書などをもとに組み立てていきます。

遠山 いつも海外とか行った時に、そういった絵葉書とか、家族のアルバムを買って帰るの?

小川 買って帰りますね。家族アルバムとか、個人的なものが案外無造作に売られているんです。

鈴木 いろんな情景を組み合わせてるってことだけど、簡単に構図って決まるものなんですか?

小川 簡単には決まりません。この作品だと、馬車や少女の位置を変えたり、何パターンか作成します。何度もオーディションを繰り返して納得のゆく下絵を作っていきます。

鈴木 オーディション!(笑)でも、そんな制作手法をとっている作家さん、聞いたことない。

小川 僕も僕以外知らないです(笑)。でも僕にとってはこれが一番自然な制作手順なんです。

遠山 「ロンド」もシリーズで描かれているけど、どういったコンセプトなんですか?

小川 そうですね。「ロンド」は、有限と無限を対比することで永遠を表現しています。この作品だと、奥のお城は無限連続で、永遠を表現。手前の風景は有限な世界ですが、人物、馬車、樹木などの配列で永遠を表現しており、二つの永遠が表現されています。

鈴木 僕はこの作品を見た時に、有限無限というよりは、「時間モデル」と「非時間モデル」が1枚の絵の中に収められているって思ったの。

小川 それめちゃくちゃ面白い!

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