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杉恵ゆりかが、ラブソングで表現する人の本音 「みんな一対一で感じる世界を生きている」

リアルサウンド

16/10/26(水) 15:00

 シンガーソングライターの杉恵ゆりかが、10月26日に4thミニアルバム『スキ?』をリリースした。先日掲載したコラム(「シンガーソングライター杉恵ゆりかは“女子の本性”をどう歌ってきた? デビューから最新作まで分析」)では、今作にいたるキャリアを辿りながら、杉恵ゆりかが歌うラブソングの特徴を分析した。そして今回、彼女が音楽を表現手段として選び取った理由や、歌詞の背景にある恋愛観を探るインタビューを企画。自身の音楽が「最高の逃げ場になれれば」「ファンタジーにしたい」と語る、杉恵ゆりかの感性と詩世界に迫った。(編集部)

「寂しさや辛いことから逃げるために創作している」

ーー杉恵さんの歌は、ほとんどが好きな人に向けられたラブソングです。作る上で聴き手は女性をイメージされているのかなって思えるんですが、どうでしょうか?

杉恵:私自身、歌の中やステージの上だけでは、自分を開放しよう、自分を許そうっていう気持ちがあって。世の中には、自分に甘くなりたいけど自分に厳しくなってしまう人が多いと思うんですよね。子どもの頃は泣きわめけたけれど、大人になったら泣くなって言われて、その中で自分を抑制して、弱い自分を許せなくなっていく。でも、みんなそういうところを許せるようになれればいいなって思って書いているから、そういう意味では女性に向けた歌詞になっているかもしれませんね、無意識ですけど。でも、男の人に聴け!って言ったところで、いやいや、そういう女性の本音はちょっと、みたいな人も多いだろうから(笑)。女性なら、この人も同じ気持ちなんだって聴いて思えれば楽になれると思うし。

ーー杉恵さんご自身も、普段は自分を抑制しているところがあるんですか?

杉恵:はい! 食い気味に(笑)。好きな人にも一切本音が言えないし、自分を抑えていいカッコをしてしまうんです。嫌われるのが怖くて。おそらく友達とかに対しても、そういう気持ちはあって。隠し事があるわけではないけれど、大事な人にほど自分の気持ちを言えないっていうところがあるので、歌とステージの上だけでは自分を開放しようとは、常に心がけています。

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ーーこれだけ開放的な歌を歌っているけれど、本質的にはみんなと一緒なんですね。

杉恵:そうですね。長女に生まれて、当たり前ですけど「お姉ちゃんなんだから」って言われてきたから、そういう生い立ちも関係あるのかもしれません。類友じゃないですけど、友達も何かを我慢してそうな人が多いし、お客さんもそういう人が多いんです。我慢強そうで強がりで、でも本当は弱い人たちが多い気がします。

ーーそういう人たちの代弁者になりたい、という気持ちはあるんですか?

杉恵:それはなくて、勝手に言いたいことを言っていて、それに共感してくれる人がいたら、こんな嬉しいことはないっていう。ただ、私があなたの気持ちを言ってあげるっていう正義感はないです。私なんかがおこがましい、って思ってしまうので。

ーーじゃあ、歌い始めたきっかけも、自分の気持ちを何とかして形にしたいと思ったからなんでしょうか?

杉恵:そうかもしれないです。自分の存在が気付かれないほど寂しいことはないと思っていて。私はここにいるんだ!って主張する術として見つけたのが歌だったっていう。あと、これは最近気付いたんですけど、寂しい時や辛い時に音楽ができるんですよ。どんなに好きな人といても友達といても埋まらない寂しさがあって、そこから逃げるために創作している気がします。物を書いている時は、寂しさを忘れられるから。

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ーーだからこそ人を求める、恋愛の歌が多くなるんでしょうか。 

杉恵:そうですね。複雑な話になりますけど、その寂しさを振り切るために、一人でも歩いてくんだっていう歌詞を歌ってたら、すごく息苦しいだろうなって。寂しさを忘れるために書いていても、そこに本音を入れないと自分も苦しいし。社会からは、大人になったら一人で頑張れって言われるし、好きな人にも僕は忙しいからって言われるし、そういうことに対して耐えていかなきゃいけない人が求める歌って、一人で生きていかなきゃいけないよねっていう歌じゃない気がして。それこそカラオケでグデングデンに酔いながら歌える歌の方が、すっきりするんじゃないかな、泣くのと一緒で。そうすれば心の負担が軽くなるから。

ーー歌う杉恵さんも、聴いた人も、寂しさから逃げられてすっきりできるっていう。

杉恵:そうですね。私も歌にすることで、ある意味ネタになってるから、ちょっと笑える時もあって。リアルすぎる時が一番辛くて、それが歌になって非現実になった時に、ネタとして昇華されているから、冷静に自分の状態を見ることができるんです。

ーーいい響きに聞こえないかもしれないですけど、逃げ場としての音楽って必要ですよね。

杉恵:ありがとうございます。私の歌は、最高の逃げ場になれればいいと思っていて。好き嫌いはあるとは思うんです。生々しい歌が好きな人もいると思うし。でも、私はサウンド面も含めて、少しファンタジーにしていたいんです。リアルなことを歌っていても、曲が明るかったり、浸れるバラードになっていたら、ネタになるので。

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「サウンドでも女の子、女の人を表現できたらアート」

ーー音もこだわっていますよね。

杉恵:はい。いつもキラキラ感がどこかにあるように、あったかい音になるように、ひりひりした音になるようにって思って作っています。サウンドでも女の子、女の人を表現できたらアートだなあって。音楽である以上、ポップスでないといけないっていうこだわりは譲れないし、歌えるリアルでありファンタジーっていうものを追求してますね。

ーーだから、エグイことを歌っててもポップに聴こえるんですよね。

杉恵:ありがとうございます。学生時代に影響を受けた歌はキャッチーだったし、言ってる意味が大人っぽくてわからなくても、メロディがいいから歌えたし、さらに今、こういう意味だったのか!ってわかるし。ここまで学生時代の思い出を持ってこれる音楽は、やっぱりポップスなのかなって。青春時代に戻れるというか、恋愛すれば常に子どもに戻るわけだから、同じことを繰り返しながら同じ曲を聴いたりするし、私の歌もそういう歌になれればいいなって。後は最近、落ち込んでいて、何も聴きたくなくなる時があって、そういう時に高校生の頃に聴いていた音楽を久しぶりに聴いてみたら、それだけは受け付けられて。あ、音楽って帰れる場所になれるんだ、家みたいになれるツールになるんだって気付いたんですよね。いつか自分も、誰かにとってそうなれる音楽を作れたらいいなって思います。

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ーーあと、さっきのエグイことっていう中に、エロティックな描写も含まれているんですが、結構踏み込んだ表現をしていますよね。

杉恵:そうですね。そういう時間って、一番本音が見え隠れするんじゃないかなって。10代の頃から、大人びた小説を読んでいたからかもしれない。山田詠美さんや島本理生さんみたいな、女性作家の恋愛小説の中の一節が、私の中ではファンタジーだったんです。どんなに近くても言えないことがあるって気付いたというか。自分たちの思いを伝え合う前に、そういう関係になった時の辛さとか。それは男性もあるかもしれないけれど、女性の方が感じるんじゃないかな。ただ、そういうことは2ndミニアルバムの『セキララガール』で存分に書いたので、今回の『スキ?』は極力セクシーさを削ったんです。意図的に聴きやすく、女の子がカラオケで好きな人の前で歌えるような歌にしたかったので。まあ、ちょろちょろと入れちゃってますけどね。

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ーーなかなか、こういう踏み込んだ表現をするシンガーソングライターっていないですよね。

杉恵:どんな恋愛してきたんだって言われますけど、普通に人のことを好きになって、心も体も成熟していけば感じることだし。好きな人のことを触りたいって、可愛らしい、綺麗な、飾らない気持ちだから。媚びて触りたいとか言ってるんじゃないですしね。

ーー恥ずかしくて歌えない、書けないっていう人もいそうですけど、杉恵さんの場合は?

杉恵:泣きそうになるんです。それこそ、好きな人に直接は言えないから。触って下さいとか、触りたいとか。だから歌にしているんです。ライブでも聴いて泣いてくれる女性がいて、それは嬉しいですね。

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「“好き”は、恐ろしい言葉」

ーーまた、『スキ?』は、セクシーさは削ったとはいえ、違った形で女の子の本音が出ていますよね。一曲目から「好きってかわいくない」って、衝撃的ですよ。

杉恵:最初の恋愛の幸せな時って、物凄く世界が輝いて見えるし、恋っていいよ、恋すると可愛くなるよって言いたくなるんですけど……確かにそうなんですよ、女性ホルモンも出ますし。でも、ちょっとずつ気持ちは重くなっていくもので。そうなった時に肌が荒れたり、眠れなくなったり、知りもしない女の子に嫉妬して悪口を言ったり、どんどん嫌な奴になっていくっていう。そうなった時に、全然可愛くねえな!って思って(笑)。全然可愛くないのに、どうして恋にハマっちゃうんだろうね、おかしいねっていう曲です。

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ーー鋭いですよね(笑)。そして「オムライス」は、〈オムライス〉に象徴されるような日常と、〈二度とないほど キミに恋した〉っていう人生をかけた恋愛が、ひとつの楽曲の中で波打ちながら繋がっていて、とても興味深かったです。

杉恵:美味しいものを食べたり海を見た時に、頭に浮かぶのは好きな人で。ずっとサビは迷っていたんですけど。“好き”っていう言葉を使うことにためらいがあったんです。まっすぐじゃないですか。歌がそれ以外の何物でもなくなるくらい魔力がある言葉だから。でも、ほんとに好きになったら好きしか出てこないって思って、ちゃんと向き合ったらこの歌に13回も出てきてしまって(笑)。まっすぐな言葉を使う時ほど怖いんですよね。ひねくれた言葉を使えば、伝わりづらくはなるけれど、気持ちは楽で。ただ、好きですって言ったらそれしか伝わらないから、恐ろしい言葉だと思って。でも今回、ちゃんと使えたから良かったです。

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ーーその思いと、ミニアルバムのタイトルの『スキ?』は繋がってくるんでしょうか。

杉恵:今回いろんな好きを歌ったんですけど、でも好きって何でしょうってところに辿り着いて。未だによくわからないし、人それぞれだと思うんですけど、だから『スキ?』にしたんです。好きって何だろうねっていう意味もあるし、自分のこと好きですか? あなたは私のこと好きなの? 私はあの人のこと好きなのかな? っていう、いろんな意味はこもってるんですけど。その人が好きなように『スキ?』を受け取ってもらえたらいいなって思います。

ーーそして、ラストの『わたし』は、まさに、自分のことを好きですか?っていう歌になっていると思います。

杉恵:さんざん誰かに愛されたいって思いながら、でも自信がなくて、でも好きな人はできちゃうし、困ったもんだなって思って生きているんですけど、これは、自分なんてって思っている人や、自分自身にも伝えたいと思って書いた歌で。なかなか自分を愛そうよとは言えないですけど、生きるよ明日も、とりあえず生きてみるっていうニュアンスで書いています。

ーー杉恵さんご自身も、自己肯定ができないタイプですか?

杉恵:物凄く自己否定型です。それも曲になっていると思えば大事な要素ですし、自分をいじめることでハングリー精神が生まれたりしましたけど、いろんな経験をして、いろんな話を聞いて、やっと前向きになれたっていう。防衛反応ですよね。誰から嫌いって言われる前に、自分で嫌いって言って逃げてきたっていう。そういうことで自分を保っていた気がします。

ーーじゃあ、今は強くなれたからこそ、こういう歌が歌えるんですね。

杉恵:強くなったかもしれないですね。

ーー自分をさらけだしてきて、強くなれたんでしょうね。

杉恵:今も怖いんですよ。ステージに立つのも。だけど、ピエロをやるつもりはなくて。演技で素晴らしいパフォーマンスをする方もいますけど、私は無理で、普段は演技とまではいかなくても、本音を言えずに生きてるから、逆の要素が働いているのかもしれないですね。

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ーーこれだけいろいろと考えてらっしゃることが、楽曲にまとまるとラブソングになっていくのは、なんでなんでしょうね。

杉恵:学生時代に聴いていたのが恋愛の歌で。恋愛の歌が、一番押しつけがましく聴こえなかったですよね。恋愛を通して大事なことを伝えてくれると、素直に聴けて。恋愛って一番感情が動くと思うし、私はどんな歌でも恋愛に絡めていたいんです。伝えたいこと一個をそのまま描くと強過ぎるというか、私がそれをするのは似合わない気がして。恋愛のフィルターを通すと、ほんとに身近なものにしやすいんです。あと、サウンド面も含めて遊べる気がしますね。堅苦しい曲にしなくて済むというか。世界がどうのこうの、っていう歌だと、壮大なサウンドにしなきゃいけないですけど、恋愛がテーマならちっちゃい世界でまとめられるし、面白い音も入れやすいです。

ーーサウンドはポップスでも、恋愛っていうちっちゃい世界でまとめたいっていう発想が新鮮です。

杉恵:独りよがりになりたくないから、誰かに聴かせる以上は、なるべく共通の言葉とかを探してはいるけれど、みんな一対一で感じる世界を生きているから、私対みんなみたいな描き方は苦手で。私とあなたの世界、それってちいさくて、たまに色っぽくていいなって。あとは、狭い部屋が好きっていう(笑)。今も5畳の家に住んでいるんですけど。でも、大きいステージには立ちたくて。そこに立った時も、みんなに身近に感じてもらいたいっていうのが夢ですね。

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(取材・文=高橋美穂/撮影=三橋優美子)

■リリース情報
『スキ?』
発売:2016年10月26日(水)
【CD+DVD】 ¥2,592(税込)
CD収録内容
01 好きってかわいくない
02 夏空トリップ
03 むねのうち
04 オムライス
05 わたし
DVD収録内容
・ オムライス -Music Video-
・ 杉恵ゆりか presents 月刊ウラスジ8月号 「夏の終わり、いっしょにいようよ」@原宿STROBE CAFE 5曲収録

【CD】 ¥2,052(税込)
CD収録内容
01 好きってかわいくない
02 夏空トリップ
03 むねのうち
04 ピポパポ彼氏
05 オムライス
06 わたし

■ライブ情報
『杉恵ゆりか Presents 月刊スージー10月号「たまには甘いのちょーだいよ。」』
2016年10月29日(土)13:00 open / 13:30
原宿 STROBE CAFE

『ニューアルバム”スキ?”レコ発ツアー「スキ?キライ?スキ?キライ?スキ?キライ?スキ!!!!!」』
【広島公演】
2016年11月3日(木・祝)17:30 open / 18:00 start
広島 LIVE Cafe Jive
【大阪公演】
2016年11月5日(土)12:00 open / 12:30 start
大阪 Music Club JANUS < http://www.arm-live.com/janus/ >
【東京公演】
2016年11月23日(水・祝)17:30 open / 18:00 start
代官山 晴れたら空に豆まいて

『杉恵ゆりか バースデースワンマンライブ ★ビバスジバッ2017★』
2017年3月4日(土)17:30 open / 18:00 start
渋谷 CLUB QUATTRO

http://sugieyurika.com/

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