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『FINAL CUT』は今の現実社会とつながっている? 藤木直人の演技などから考察

リアルサウンド

18/1/30(火) 6:00

 『FINAL CUT』(カンテレ・フジテレビ系)は、数年前に母親を亡くした主人公の中村慶介(亀梨和也)が、その死の要因となった人間たちを、一人ひとり追い詰めていく話である。母親は保育園の園長をしており、その園の女児殺害の犯人として疑われたことを気に病み、自宅で自殺してしまう。母親を追い詰めたのは、とある報道番組に関わる人たちで、その番組のスタッフが復讐のターゲットとなっていく姿を1話完結で描いていく。

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 この母親役を23年ぶりに日本の連続ドラマに復帰した裕木奈江が演じているのだが、犯人と疑われて、きつくカメラを見据える姿に、多くは語らないが芯の強さが見えた。

 彼女の死に関わったスタッフたちは、今も『ザ・プレミアワイド』という番組を作っている。彼らに近づき慶介が制裁を加える手法が、隠し撮りしたVTRをつなげた番組であるというのが、毎回のお約束になっている。これまでになかなか見たことのない設定である。

 第1話では杉本哲太演じる番組プロデューサーが、第2話では水野美紀演じる番組ディレクターがその隠し撮りVTRの報復を受ける。そして第3話では林遣都演じる若手ディレクターがそのターゲットとなった。彼は主人公の母親の葬儀の場で、彼女の死に顔の隠し撮り動画を撮ろうとした過去があったのだった。

 ターゲットに共通しているのは、報道現場にいて、世の中の不正をあぶりだし、自らは正義の味方ぶっていると表向きは思っているということかもしれない。慶介の事件に対しても、いかにも遺族のことを考えているかのように近づくが、それは単にスクープが欲しいだけという心の動きも描かれる。誰もが、そんな神聖な動機で動いているのではなく、結局は自分の虚栄心を満たすことが動機のような人間として登場するのだ。

 しかし、『ザ・プレミアワイド』の面々を追い詰める慶介は、手を下すまではしない。彼らに自分の過去の過ちを自覚させる“FINAL CUT”を突きつけるだけで、それ以上の仕打ちは決してしないのだ。だから、彼らは、次週の放送でも同じ会社で同じ仕事を続けているという不思議な状態が続いていく。

 なぜ、報復は寸止めで終わるのかというと、復讐される側もちょっとした心の揺れから非道な行動をしてしまっただけで、決定的な悪人ではないとも描かれるからだ。林遣都演じるディレクターの場合は、慶介の母親の顔を隠し撮りをしようとはしたが、上から指示されただけで、臆病でその仕事を全うできず、最終的には母親に手を合わせたという事実もあった。

 慶介にとっても、彼らを追い詰めるのは個々を復讐するためではない。本当に追い込むべきは、当時、母親殺害の真犯人を突き止めながらも、それを報じないように命じた人物だ。その真相を掴むため、ディレクターたちに“FINAL CUT”を突きつけ(昔あった「FINAL ANSWER?」と尋ねるクイズ番組を思い出すが、まあそういう意味合いではないだろう)、自分の復讐のための駒になってもらうという目的もあるのだ。

 毎回、主要キャストを本当の悪人にはしたくないだろうし、主人公が一回一回非道な手段で復讐をしていたのでは後味が悪すぎる作品になってしまう。この展開は、その間をうまくとった策にも見える。

 最後にはラスボス的な人物に行き当たるのだろう。いまのところ、番組のMCを務め、企画会議での絶対的な決定権を持つ藤木直人演じる百々瀬塁あたりではないかと思われる。このいまどきの司会者の、表向きは人当りが良いように見せながらも、どこか腹黒そうなキャラクターが妙に印象に残る。

 あるときは、著名な歌手が亡くなり、番組冒頭のVTRまでの時間稼ぎのために、生放送で彼女の持ち歌であった「愛の賛歌」を突然歌いだす。一見すると臭い演出に見えるかもしれないが、このタイプのドラマには、ちょうどいいくらいに映る。個人的には、実際に報道番組MCを務めるような男性の局アナや元局アナには、なにかタレントや俳優やお笑い芸人とは微妙に異なる、特殊なナルシシズムや自意識があるように思うため(もちろん、人前に出る人々がそうした部分を持っているのは当然である)、むしろ藤木の演技は、“リアルには見えないリアリティ”なのではと思えた。

 藤木演じるMC以外にも、慶介が働く警察の上司を演じる佐々木蔵之介もなんらかの事情を抱えていそうな空気を出しているし、事件の真相をにぎる男の姉妹(栗山千明、橋本環奈)とも慶介は近づいているから、そこも見どころになっていくだろう。

 このドラマは、完全にフィクションとして現実とは離して観るべき種類の作品だ。だが、正義感や使命感を持っているような顔をしながら、部数や視聴率主義で他人の秘密を単に暴いているだけのマスコミの姿は、デフォルメはしているが今の現実社会とつながっているようにも見える。(西森路代)

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