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【おとな向け映画ガイド】

ダメ親父が突然変異!『Mr.ノーバディ』、オーダーメイドの時間旅行『ベル・エポックでもう一度』の2本をご紹介。

ぴあ編集部 坂口英明
21/6/6(日)

イラストレーション:高松啓二

今週末(6/11〜12)に公開される映画は21本(6/4時点)。6/1(火)からほとんどの映画館が21時までの時短営業で再開しています。ご鑑賞の際は作品や映画館の公式サイトで上映時間などに変更がないことをご確認いただきお楽しみください。今回ご紹介する作品は、6/11、12に公開予定の2本。おとなが楽しめるハリウッド・アクションものと、フランスのロマンティック・コメディです。

ふつうのおじさんを怒らすと怖い!
『Mr.ノーバディ』



映画が始まると、わけもわからないうちに取調室のシーンです。被疑者とおぼしき、手錠をかけられて、顔に傷を負った男が、タバコに火をつけ、懐から子猫をだし、キャットフードの缶を開けて、猫に与えはじめます。ややあっけにとられた取調官が尋ねます。「いったいアンタは何者なんだ?」、「俺か……、Nobodyだ」。ノーバディ、どういうこと? バックに流れる音楽は『悲しき願い』。かなりシブい! 日本では、アニマルズのというよりは、尾藤イサオのカバー「ベイビー、俺の負けだ。あきらめよう」の方がなじみ深いのでは。ホントにアンタ、何やらかしたんだ、とツッコミたくなる導入です。

ここからポンポンポンと、映画に引き込んでくれます。で、取調室にいたるまでのいきさつは、になるわけです。

男は、妻子を持つごく普通の市民。郊外の自宅から路線バスで勤め先の工場に通う日々を送っています。これといった個性もなく、どちらかというと気弱で地味め。深夜、家に入った泥棒と出くわした時も、何もできず、あっさり持ち逃げされてしまいます。それが原因で妻や息子からますます冷たい視線をあびるようになり……。悶々とする日々が続いたある日、路線バスの中で、突如、彼の隠されていた一面が表に現れるのです。

そこからは、もう痛快アクションの連続! 冴えない親父の豹変に爽快感さえ感じます。

その、ひげづらの中年男、”Mr.ノーバディ”を演じるのは、ボブ・オデンカーク。アクション俳優ではありませんが、この役のために2年間ボディ・トレーニングに通い、スタントマンなしで、ハードなアクション・シーンをこなしています。ダメ親父が突然ヒーローと化す、その意外さ。さらに行動は意表をつき、アドレナリン満開にさせてくれます。強盗に入られたときのくだりは、オデンカーク自身の経験によるもので、そのとき何もできなかったトラウマを映画でリベンジしようとした、らしいです。監督は、サイボーグ化された主人公の視線で描くSFアクション『ハードコア』で話題となったロシア出身のイリヤ・ナイシュラー。上映時間92分、いやー、面白かったなあ。

【ぴあ水先案内から】

伊藤さとり(映画パーソナリティ)
「……シリーズ化希望の痛快作。なんと言っても1時間半くらいのサクッと楽しめる展開で、余計な説明が無く、想像で穴埋めできる伏線が絶妙な脚本がお見事……」
https://bit.ly/3uPDgFo

高松啓二さん(イラストレーター)
「……ボブ・オデンカークの特徴の無い顔が本作にピッタリで、後の派手なアクションのギャップにも効果的に作用している……」
h https://bit.ly/3uSdaBr

あの日に帰りたい!
『ベル・エポックでもう一度』



タイムトラベル、といってもSFの世界ではありません。なるほどこれは実現不可能ではない……、と思える「時間旅行」のお話です。

思い出の、あの場所、あの日に帰りたい、誰もがふと考えますよね。“時の旅人社”が経営する「タイムトラベルサービス」は、行きたい時代と場所を再現する、いわば究極の体験型エンタテインメント。広大な敷地に映画の撮影所のような巨大セットを作り、当時の衣装を身にまとったエキストラや、希望する人物を用意してくれます。もちろん、時代考証や記憶のインタビューも念入りに、その場にいる人物のセリフ、行動など、すべてを再現するのです。

デジタル化時代の流れに乗れず、仕事も妻も失いつつある初老のイラストレーター、ヴィクトルは、配信ビジネスで羽振りのいい息子にそのトラベルサービスをプレゼントされ、利用することになりました。オファーしたのは、「日時:1974年5月16日、場所:フランス・リヨンの街のカフェ」です。その日そこで、彼は人生を変える運命の女性と出会ったのです。時の旅人社の社長で旅の演出家でもあるアントワーヌは、息子の友人。ヴィクトルのため、出会う運命の女性役に自分の恋人で一番魅力的な女優マルゴをキャスティング、こころをこめて過去の“ひとコマ”を再現します。舞台となるカフェの名は、「ラ・ベル・エポック」。あの日は帰ってくるでしょうか、あの熱い感情は戻ってくるでしょうか……。

この映画、「時間旅行」という仕掛けの魅力もさることながら、フランス映画界の至宝と言われるダニエル・オートゥイユ(ヴィクトル役)とファニー・アルダン(妻マリアンヌ役)が演じる、珠玉のラブコメディ。フランス本国でも大ヒットした作品です。観終わっていろいろ話題はつきません。しゃれたエンディングのこと、どの時代どの場所に行きたいか、とか、日本でやるとしたらこのサービス、いったいいくらかかるんだろう?とか。

【ぴあ水先案内から】

波多野健さん(TVプロデューサー)
「……仕掛けがなかなかよくできていて、舞台裏からインカムで監督が指示を出したりと、あたかも『スパイ大作戦』を観ているような気分になり楽しい……」
https://bit.ly/3cbSAWb

夏目深雪さん(著述・編集業)
「…リアリティある展開で、70年代のレトロな美術も豪華、懐メロも気が利いているとなれば、2019年の仏の興行収入1位を『ジョーカー』から奪ったというのも頷ける……」
https://bit.ly/3uO8sET

首都圏は、6/12(土) からシネスイッチ銀座他で公開。中部は、6/12(土)から伏見ミリオン座で公開。関西は、6/25(金)からシネ・リーブル梅田で公開。

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