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米津玄師「感電」とドラマ『MIU404』に通じるバランスとセンス 主題歌として流れるタイミングにも注目

リアルサウンド

20/7/3(金) 12:00

 いよいよ放送が始まったTBS系金曜ドラマ『MIU404』。その主題歌として書き下ろされた米津玄師の新曲「感電」が、6月26日放送の第1話で解禁された。

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 『MIU404』は、米津が主題歌「Lemon」を提供した2018年のドラマ『アンナチュラル』のチームが再集結したことでも話題になっている。脚本の野木亜紀子、監督の塚原あゆ子、プロデューサーの新井順子、劇伴の得田真裕をはじめとした『アンナチュラル』チームと米津玄師のタッグが2年ぶりに実現したのだ。不自然死の謎を究明する研究機関・UDIラボを舞台にした『アンナチュラル』。遺された者の喪失と悲しみ、祈りを歌う「Lemon」。共鳴し、互いのさらなる魅力を引き出し合った両者は、ドラマとその主題歌における理想的な関係を結んでいた。『アンナチュラル』が名作と言われる理由の一つは「Lemon」だったし、「Lemon」が名曲と言われる理由の一つは『アンナチュラル』だった。それだけに、今回米津が『MIU404』に対してどのような曲を書いたのか、注目していた人も多かったのでは。

 『MIU404』は、警視庁・機動捜査隊にスポットを当てたドラマ。第4機動捜査隊、通称“4機捜”に配属された伊吹藍(綾野剛)と志摩一未(星野源)はバディを組むことになった。勤務は24時間制。2人1組で覆面パトカーに乗ってパトロールをし、事件があれば現場へ急行、初動捜査を行い、そこで解決できそうにない場合は他の課に引き継ぐ。この働き方に対し、「もう、張り合いがない!」とこぼすのが伊吹、「検挙率を上げるためのパーツとして働く。自分の満足のためじゃない」と割り切っているのが志摩だ。

 バディものといえば、Aの長所がBの短所を、Bの長所がAの短所を補いながら、成長していく物語が多い。しかし伊吹&志摩の場合、“伊吹が熱血タイプ、志摩が冷静タイプ”というふうに一概には言えなさそうだ。例えば、伊吹は“野生の勘”で動いているようだが、それが言語化できていないだけで、一応彼なりの理屈があるのでは、ということを示唆させる場面があった。一方、伊吹の無茶な運転を叱っていた志摩は、犯人を追いかける際、伊吹よりもよっぽど荒い運転をしていたし、挙句には車を横転、廃車させた。伊吹がヤバいやつなのは誰の目にも明らかだが、志摩にはパッと見では分からないヤバさがある。そんな2人が組んでいるのだから、物語は(見事に伏線を回収しながらも)予想外の方向に転がっていく。

 「感電」が流れたのは、ラスト5分に迫ったところ。物語のクライマックス、伊吹&志摩が犯人と対峙する――というよりは、天使と悪魔を一つの身体に住まわせた人の心のメタファーかのように、犯人を挟んで伊吹と志摩が対峙する場面の直後だった。BGMのないシーンが続いていたことも相まって、まず、出だしのホーンセクションに驚かされる。米津の曲でホーンが鳴っているのは初めてではないが、こういうポップファンク調の曲はこれまでになかったのではないだろうか。第一印象は、肩の力が程よく抜けた洒脱な曲。しかしよく聴くと、犬と猫の鳴き声をサンプリングする遊び心も見受けられる(「いぬのおまわりさん」からの連想?)。2番サビのあとに予想外の展開が待ち受けているのも楽しいし、ジャズドラムも最高。全体を通じて、色気とユーモアの配分が絶妙で、シングル曲とカップリング曲のいいとこ取りのような温度感がある。このバランスとセンスはドラマ自体にも通ずるもの。それは、米津とドラマの制作陣、それぞれの創作活動を経て、今再会したからこそ実現したものではないだろうか。

 歌詞は公開されていないため、聞き取れた限りの言及になってしまうが、信じるものに人が熱くなり、スイッチの入る瞬間が“電撃”というモチーフに託されているように感じた。そうなると、タイトルに掲げられた“感電”(=自分の発した電流が相手の体内に流れる)とは、伊吹と志摩の、そしてドラマ『MIU404』と主題歌「感電」の関係性を表したワードとしても受け取れる。要所要所の言葉選びからは、既存曲に通ずる米津らしさを読み取ることができた。

 『アンナチュラル』における「Lemon」がそうだったように、主題歌が流れるタイミングさえも作品における重大なメッセージになっているのがこのチームの特色だ。「感電」が流れるタイミングに注目しながら、今後の放送回も楽しみたい。(蜂須賀ちなみ)

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