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LiLiCoのこの映画、埋もらせちゃダメ!

大人の心をほんわかさせる『ノッティングヒルの洋菓子店』

月2回連載

第59回

青春時代に覚えた味は歳を重ねれば重ねるほど欲しくなるもの

今回ご紹介する2作品は、どちらも私個人的に2020年を代表するミニシアター作品、と感じたものです。まずは『ノッティングヒルの洋菓子店』。イギリス、ノッティングヒルを舞台にした人間ドラマです。

イザベラは、親友のパティシエ・サラとともに長年の夢だった自分たちの店を開くことを決めます。サラは有名店で修行を積んで、物件も決まり、あと一歩で無事オープン……という矢先、事故で他界。失意のなか、イザベラとサラの娘・クラリッサは、サラの遺志を引き継ぐ意味もこめ、パティシエ不在のままで店のオープンに向けて動き出します。

『ノッティングヒルの洋菓子店』

まず、サラの母・ミミを巻き込むことに成功。その後突然、サラが20年前に付き合っていた元カレ・マシューが現れ、パティシエとして名乗りをあげます。

彼はミシュラン2つ星レストランで活躍するシェフですが、サラとの別れは最悪。そのため、イザベラらは最初断ろうとしたものの、マシューもある目的を持って店のために働くことを決めており、彼ら4人で“ラブ・サラ”を開くことに……。

『ノッティングヒルの洋菓子店』

見た目にもかわいいスイーツがたくさん出てきますし、女性を中心にした人間ドラマなので、いわゆる“女子映画”を期待するかもしれませんが、ちょっと違います。

大人の心をほんわかさせる、さまざまな人生模様を描いた良作です。大きな事件は、冒頭のサラの死以外はありません。3人の女性とひとりの男性が、亡くなったサラのことを思いながら、お店を立ち上げていく物語を、本当にほのぼのと描いています。

『ノッティングヒルの洋菓子店』

これを観ていて思ったのは、青春を過ごした時代に覚えた味というのは忘れられないもので、歳を重ねれば重ねるほど欲しくなるものだな、ってこと。

私にとっての懐かしい味は、スウェーデンのプリンセスケーキ(クリームを挟んだスポンジケーキを緑のマジパンで覆った、スウェーデンの伝統的なお菓子)。日本ではあまり見ることがなかったお菓子ですが、最近ではオスロ コーヒーなどの北欧系のカフェで出すようになり、見かけるとつい注文してしまいます。

『ノッティングヒルの洋菓子店』

おふくろの味とか郷土の味なんて言葉がありますが、プリンセスケーキは私にとってまさにそれ。それって、絶対に売れるんですよね。この作品でも、さまざまな国の味を取り入れて、多様な人が暮らす街での商いに工夫を凝らしていきます。

どんな商売でもそうだし、どんな仕事でもそうだと思うんですが、やりたいことがあったとしても、ある程度の柔軟性をもっていないとうまくいくものもうまくいかない。かたくなになってしまうと、せっかくのアイデアも台無しになるんですよね。そんなところを、うまく描ききっている作品です。

自分の幸せのために自分で行動をする、というテーマに共感!

もうひとつの作品は『また、あなたとブッククラブで』。めちゃくちゃ元気になる群像劇です。

夫を失ったショックから立ち直れないダイアン、離婚のトラウマから抜け出せないシャロン、夫婦の危機を抱えたキャロル、複数の男性との交際を楽しんでいるビビアン。それぞれに不安を抱えた長年の友人である彼女らは、読書の感想を語り合うブッククラブを楽しみにしていました。

ある日、ダイアンの提案で、次のブッククラブでは大ヒット官能小説『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』を取り上げることに。それを読んだ彼女らは、それまで読んだことがない官能の世界に感化され、どんどんと大胆になっていきます。ダイアン・キートン、ジェーン・フォンダなど、名女優たちが揃って主演した最高の作品です。

『また、あなたとブッククラブで』

いや、2020年最後にして、私のベストムービーがきました! 歳を重ねた人、特に女性が自分の幸せのために自分で行動をする、というテーマには共感しかありません。それもまさかの『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』で目覚めちゃうなんて最高! 歳を重ねれば、それだけ苦労もあるし、悩みも増えるものですが、それを仲良し同士で本を共有し、考えや感想を語り合うのって本当に素敵なことですよ。

『また、あなたとブッククラブで』

じつは私の父もブッククラブをやっていて、ここで描かれていることは現実にも起きうることす。気の知れた仲間と、文化的なことを共有するのって、大事な時間だと思いますよ。

そして、ダイアン・キートンがとても素敵。ファッションもインテリアも彼女にぴったりのセンスだし、演じている役においても、私の考えと同じ。彼女が演じたダイアンは、それまで自分よりも夫や子供のために生きてきた女性。でも、夫をなくしたあと、自分の人生を歩むにあたって、自分自身の幸せを求めることに葛藤します。

『また、あなたとブッククラブで』

家庭のために自分のことを後回しにしてしまう、というのは、どこでも誰でもあることだと思いますが、もうホント、これやめましょうよ! 自分が幸せにならないと、家族だって幸せになれないもの。この作品を観たら、きっとその気持ちがわかってもらえると思います。

※次回は1月8日(金)に更新予定です!

取材・文:よしひろまさみち 撮影:源賀津己
(C) FEMME FILMS 2019
(C)2018 BOOKCLUB FOR CATS, LLC ALL RIGHTS RESERVED

プロフィール

LiLiCo
1970年11月16日、スウェーデン・ストックホルム生まれ。18歳で来日し、芸能界へ。01年からTBS『王様のブランチ』に映画コメンテーターとして出演するほか、女優、ナレーター、エッセイの執筆など幅広く活躍。

夫である純烈の小田井涼平との夫婦生活から、スウェーデンで挙げた結婚式の模様、式のために2カ月で9kgに成功したダイエット術、スウェーデン育ちならではのライフスタイルまで、LiLiCoのすべてを詰め込んだ最新著書『遅咲きも晩婚もHappyに変えて 北欧マインドの暮らし』が、2019年9月に講談社より発売された。

『遅咲きも晩婚もHappyに変えて 北欧マインドの暮らし』

講談社 1400円(税別)
発売中

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