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いま、最高の一本に出会える

星野源は現代日本ならではのポップスター “POP VIRUS”を最大限に発揮した東京ドーム公演

リアルサウンド

19/3/22(金) 12:00

 星野源が2月2日から3月10日にかけて、5大ドームツアー『星野源 DOME TOUR 2019「POP VIRUS」』を開催した。

 星野源という人は本当にオールラウンダーだと思う。曲も作れるし、歌も上手い。演奏だって素晴らしい。約3時間のライブを通して、バンドのアンサンブルを楽しめる曲もあれば、ギター1本で弾き語る場面もあり、かと思えばダンサーが登場して会場中が踊れる瞬間もある。バンドメンバーとのやり取りは微笑ましく、幕間で流される映像「“一流ミュージシャン”たちからのお祝いのメッセージ」には涙が出るほど笑わせてもらった(ビヨンセはずるいって!)。曲に目を向ければ、先鋭的な楽曲から国民的ヒットソングまであり、朝ドラ主題歌から映画主題歌まで揃いに揃っている。アンコールではすでにおなじみとなったニセ明の登場も含めこれ以上、何を望むのだろう?

 正直なところ、東京ドームという箱は反響音も大きいし、どの席からもステージまで距離があり、個人的にネガティヴな印象を持っていた。しかし、2018年の最後の月に星野源という日本の音楽シーンの第一線で多くのリスナーを魅了するミュージシャンが自分のアルバムに付けた「POP VIRUS」というタイトルのその“両義性”を最大限に発揮するためには、ドームで華々しく開催する以外に選択肢はないだろう。周りを巻き込みながら徐々に人びとを“感染”させていく光景というのは、ドデカい会場でやるからこそ意味がある。

 今回、ライブ本編は大きく分けて三段構成となっていた。開演から「ドラえもん」までの前半部分。それから幕間映像を挟み、セカンドステージでの「ばらばら」から「くせのうた」までが中盤部分。再び幕間映像を挟んで、「化物」から始めて「恋」や「SUN」「アイデア」といったヒットナンバーを経由して「Family Song」へと着地させるラストスパートの終盤部分。特に中盤では『POP VIRUS』ツアーならではの試みが行われ、前半からの流れに変化を与えていた。終盤はヒット曲を畳み掛けることで会場の興奮をこれでもかと押し上げていた。こうして公演の中に起承転結をしっかりと生んだことで、観客を終始飽きさせないライブ作りが行われていた。

 しかし、今回の公演で特筆すべき場面はいきなり冒頭に訪れる。それがイントロダクションとしての「歌を歌うときは」と「Pop Virus」の2曲だ。開演と同時に暗転し、会場中央に彼が登場してひとりで弾き語りし始める。静かに始まる弾き語りから「Pop Virus」のビートとともに、この、なにかがじわじわと侵蝕していくような雰囲気の幕の開け方が後半のカタルシスを生み出す土台のように機能していた。この“感染”していくようなスタートにこそ今回のツアーの真髄があるように思う。

 また、「ばらばら」をサプライズで客席から歌い、次の「KIDS」を演奏するセンターステージまでに空いた移動時間で披露された「STUTS SHOW」(STUTSが星野源の曲のサンプリングのみで構成したDJタイム)では、ミラーボールの反射光が四方八方に散らばり、ドーム会場が瞬時に煌びやかディスコ空間へと変貌した。

 こうしたライブ構成や演出もさることながら演奏自体もまた素晴らしい。ギターを長岡亮介、ベースをハマ・オカモト、ドラムを河村”カースケ”智康、キーボードを石橋英子、MPCをSTUTSが担当し、息の合ったトークとパフォーマンスを披露する。星野源の音楽というのは主旋律ももちろん良いのだが、楽器同士の掛け合いやアンサンブルも見逃せない。「桜の森」のイントロで行われたギター2人のカッティング合戦や、「プリン」で見せる息ぴったりのバンド演奏は、紛れもなく彼のライブの見所のひとつである。

 本編終了後には会場中がすっかり彼の音楽の虜になっていた。筆者の両隣に座っていた記者陣も、アンコール中は心なしか笑顔で溢れていた。ポップという名のウイルスに取り憑かれ、日常を忘れて音楽に合わせて踊る人びとたち。その光景は、まさしく〈歌う波に乗っていた〉〈一拍の永遠〉そのものであった。

 そういえば、筆者が足を運んだ東京ドーム公演では、会場に入るとBGMにマイケル・ジャクソンの1979年のアルバム『Off The Wall』が丸ごとかかっていたが、キング・オブ・ポップの異名を持つマイケルこそ歌からダンスまで何でもできるエンターテイナーであった。星野源もまた日本を代表するエンターテイナーのひとりだが、カジュアルなパーカースタイルの似合う彼のような親しみやすい人柄のミュージシャンは、現代の日本ならではのポップスターなのだと思う。“ポップ”という今最もその存在意義に疑問符のつく言葉に、現代なりの解を与える存在が星野源という人物ではないだろうか。

 歌も歌えて曲も作れる、笑いも取れて親しみ易い。ダンスからバンド演奏まで難なくこなす。まさにオールラウンダーな魅力を目の当たりにした東京ドーム公演だった。

(文=荻原梓/メイン写真=西槇太一)

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