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映画評論家・野村正昭が選ぶ私的年間ベスト発表!

ぴあ

19/12/29(日) 0:00

12月公開の日本映画、この10本

①ルパン三世 THE FIRST
②“隠れビッチ”やってました。
③ゴーストマスター
④ぼくらの7日間戦争
⑤カツベン!
⑥つつんで、ひらいて
⑦HUMAN LOST 人間失格
⑧僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ヒーローズ:ライジング
⑨屍人荘の殺人
⑩漫画誕生

正月直前という状況のせいか、例月と比べると、やや地味めに見えるかもしれませんが、それでも上位に挙げた作品は楽しめるものばかり。『ルパン三世 THE FIRST』は、シリーズお約束をキチンと遵守した上で、『ルパン三世/カリオストロの城』へのリスペクトを盛り込みつつ、CGアニメとしての新たなルパン像をも提示して、見応えのある作品になっていた。ゲスト声優の広瀬すずや、藤原竜也、吉田鋼太郎らも違和感なく物語に参入し、劇場で再見してしまいました。モンキー・パンチ、井上真樹夫、両氏を追悼しつつ、このスタッフでの続投を期待したいところですが、山崎貴監督は来夏公開『STAND BY ME ドラえもん2』の新作を控えていることだし、当分無理だろうなあ。『ルパン三世』シリーズの熱狂的なファンにとっては、いろいろ注文があるかもしれませんが、私程度の観客には、ちょうど良い案配でしたと書くと語弊があるかもしれませんが。

『“隠れビッチ”やってました。』はキラキラ系の青春映画かと思いきや、意外に真っ当(失礼!)な成長物語になっていて正直驚いた。これだから映画は実際観てみなくちゃ分かりません。『ぼくらの7日間戦争』は単純なアニメ版リメイクではなく、難民問題など現代的な視点を導入、かなり意欲的な仕上がりになっていて、並みの実写青春映画より遥かに志が高い。宮沢りえのゲスト声優出演も気が利いていて、遊び心を感じさせられました。(私が観た12月の日本映画は18本)

『“隠れビッチ”やってました。』(C)『“隠れビッチ”やってました。』フィルムパートナーズ/光文社

12月公開の外国映画、この10本

①ファイティング・ファミリー
②ドクター・スリープ
③スピード・スクワッド ひき逃げ専門捜査班
④テッド・バンディ
⑤ジュマンジ/ネクスト・レベル
⑥THE INFORMER/三秒間の死角
⑦台湾、街かどの人形劇
⑧エッシャー 視覚の魔術師
⑨ドルフィン・マン~ジャック・マイヨール、蒼く深い海へ
⑩映画 ひつじのショーン UFOフィーバー!

笑って、泣いて、ホロリとさせる。『ファイティング・ファミリー』は娯楽映画の王道とも言うべき見事な快作。アメリカのプロレス団体WWEで、一夜にしてスターとなった女子レスラーと彼女の家族を描いた実話の映画化だそうですが、このファミリーが最高に素晴らしい。隠し事は一切なしで、ヤバイ過去も明るく平気に喋ってしまう両親を見ていると、清々しい気分になってくるし、本人役で出演している“ザ・ロック”こと、ドウェイン・ジョンソンも、出番は短いながら儲け役だしね。ドウェイン・ジョンソンのプロデュース&出演作にハズレなし!『ジュマンジ/ネクスト・レベル』も、シリーズの枠組みを押さえつつ、見せ場たっぷりのバカバカしい(ホメてます)エンタテインメントに徹していて、潔いしね。

『ドクター・スリープ』は、キューブリックの『シャイニング』を観て予習してから臨むと、さらに楽しめますが、もう少し登場人物を整理してくれると恐さも増したのではと思わなくもないのですが、これは余計なお節介か。後半、例のホテルに舞台を移してからの超能力合戦は、やっぱり見応えありますし。『スピード・スクワッド ひき逃げ専門捜査班』は、先日の『EXIT』に続く韓国アクションの拾い物。この辺で、お終いかなと思って観ていると、ラストで、これでもかとばかりに押して押して押しまくる、そのサービス精神に敬服します。(私が観た12月の外国映画は23本)

『ドクター・スリープ』(C)2019 Warner Bros. Ent. All Right Reserved

2019年の日本映画、この10本

①火口のふたり
②蜜蜂と遠雷
③i-新聞記者ドキュメント-
④閉鎖病棟―それぞれの朝―
⑤愛がなんだ
⑥旅のおわり世界のはじまり
⑦世界一と言われた映画館
⑧人生をしまう時間
⑨メランコリック
⑩キュクロプス

マンスリー・テンを選ぶ場合、試写で観逃してしまい、劇場で観た作品は公開した翌月扱いになり、マンスリーからは、どうしてもはみ出してしまう。それに試写で観て面白かったものを劇場で再見して粗が目についたり、その逆のケースもあったりするわけで、マンスリー・テンに選ばせてもらっても、年間テンには入らなかった作品もあり、その逆のケースも出てきてしまったので、悪しからず。特にアニメーションやドキュメンタリーも、かなりの本数を観てしまっているので、ベスト30本でも足りないほど。ちなみにアニメーションでは『HELLO WORLD』『ルパン三世 THE FIRST』『空の青さを知る人よ』『青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない』『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 - 永遠と自動手記人形 -』『映画ドラえもん のび太の月面探査記』なども堪能しましたが、本数が急増している昨今、来年はアニメーションも年間ベストテンを選んでみたいものですが、レベルアップが著しいので十分可能かも。

ただ、ここ数年の『この世界の片隅に』や『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』『花筐/HANAGATAMI』のように、個人的には決定的な1本を決めかねて、他の媒体に寄稿したベストテンでは、上位何本かの順番を微妙に入れ替えたりして、それだけ悩みまくった次第です。マンスリー・ワンに挙げた『七つの会議』や『アルキメデスの大戦』『キングダム』『新聞記者』『コンフィデンスマンJP』などが、はみ出してしまいましたが、どれも水準以上の作品なので、番外ベスト5として、お薦めします。

『蜜蜂と遠雷』(C)2019映画「蜜蜂と遠雷」製作委員会

2019年の外国映画、この10本

①アイリッシュマン
②ハッピー・デス・デイ
③ハッピー・デス・デイ 2U
④ラスト・ムービースター
⑤運び屋
⑥T-34 レジェンド・オブ・ウォー
⑦ファイティング・ファミリー
⑧盲目のメロディ~インド式殺人狂騒曲~
⑨EXIT
⑩キューブリックに愛された男

日本映画テンと同様に、外国映画テンも、タイミングの問題で、マンスリー・テンとは相当ズレが生じてしまっているので、苦慮しました。それに最近では公式試写を一切しない作品も急増し、もう対処のしようがないというのが正直なところです。だから『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』のように、試写をしない話題作は当欄では扱えず、残念といえば残念ですが、これは私も一観客として劇場で楽しむつもり。

というわけで、これが私の年間ベストテンですが、どれも大好きな作品ばかり。『アイリッシュマン』の大河ドラマの迫力。『ハッピー・デス・デイ』2作のSF+ミステリー+コメディの醍醐味、『ラスト・ムービースター』の映画愛——と、どれをとっても文句なし。マンスリー・ワンに選出した『ホテル・ムンバイ』『スノー・ロワイヤル』『ディリリとパリの時間旅行』『ザ・フォーリナー/復讐者』『バーニング 劇場版』『ハンターキラー 潜航せよ』なども入れたかったのですが、そう考えていくと、キリがないので、この辺りにしておきます。来年もよろしく!

『ハッピー・デス・デイ』(C)Universal Pictures

プロフィール

野村正昭(のむら・まさあき)

野村正昭(のむら・まさあき) 1954年山口県生まれ。映画評論家。年間新作800本を観る。旧作も観るが、それを数えると空恐ろしい数になるので、数えないことにしている。各種ベストテンの選考委員を務めている。

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