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ファンの店 第回 浜田省吾ファン歴40年のシェフが営む岐阜の洋食店

ナタリー

19/5/24(金) 18:00

自らがファンであるという理由から、お店を好きなアーティストの色に染め上げてしまった“筋金入りの〇〇ファン”な店主たちがいる。ここには、同じアーティストのファンたちが全国から集まる。今回は浜田省吾のファンが営む岐阜県の洋食店を紹介する。

ハマショーと木の温もりが融合

岐阜県岐阜市、JR岐阜駅から徒歩15分ほどの静かな住宅街にある、ビストロ ホームバウンド。2001年9月のオープン以来、フランス料理店で修業したオーナーシェフの辻孝信さんが手間ひまかけて作る料理が地元客に愛される、人気の洋食店だ。ログハウス風のアットホームな雰囲気の店で、店内に一歩入ると浜田省吾の音楽と映像が流れ、ポスターなどのハマショーグッズがあふれている。

辻さんが初めて浜田省吾の曲を耳にしたのは小学6年生の頃。「7歳年上の兄の影響で、小学生の頃からかぐや姫や伊勢正三、荒井由実など同級生があまり聴かないような大人っぽい曲ばかり聴いていました」という辻少年は、当時日清カップヌードルのテレビCMに使われていた浜田省吾の7thシングル曲「風を感じて」を聴き、心惹かれた。この曲が収録されたアルバム「君が人生の時」を兄からこっそりと借り、カセットに録って何度も繰り返し聴いたという。

数年後、辻さんは音楽好きの親友から「すごいアーティストのライブに行ってきた」という話を聞いた。友人によると、そのアーティストはアンコールが終わって観客が帰ったあと、会場内に残った20~30人ほどの熱狂的なファンが名前を呼び続けると、再びステージに現れ「OH YEAH! OH YEAH! OH YEAH!」とコールアンドレスポンスをして去るというファンサービスを3回ほど繰り返したそうだ。興奮気味の友人からそのアーティストのレコードを借りて聴いたところ、「『あれ、この曲知ってるぞ! カップヌードルの曲だ!』とすぐ気付きました。それが浜田省吾との再会だったんです」とのこと。

料理の道に進んだ辻さんは、土日に休みを取ることが難しかったこともあり、なかなかライブには行けずにいたそうだ。やっと生で見ることができたのは21歳のとき。岐阜のホテルを辞め、東京に移るまでの休暇中にふらりと立ち寄ったチケットショップのガラスケースに浜田省吾のライブチケットが置かれているのを目にし「これは行けってことかな?」とチケットを購入した。このとき初めて足を運んだライブが、1988年8月20日に静岡県浜名市の渚園で開催され、5万2000人を動員した伝説の野外ライブ「A PLACE IN THE SUN」だった。「省吾さんのアカペラでライブが始まったんですけど、生声を聴いて鳥肌が立って。その日からどっぷりとハマりました」。

大好きな作品を店名に

店名は浜田省吾の6枚目のアルバム「Home Bound」に由来する。「この作品は本格的なロックへと音楽性が大きく変化した重要作だと言われています。『Home Bound』っていう言葉は造語ですけど、自分の夢に帰っていくというような意味だそうです。若い頃の省吾さんの曲は、『自分は絶対に成功してやるぞ』って夢に向かって走っている曲ばかりです。『Home Bound』の最後の曲『家路』のサビに『どんなに遠くてもたどり着いてみせる』という歌詞があるんですが、こういう詞が一番好きですね。当時は夢に向かって走っている省吾さんの姿と、店を持つという夢に向かっている僕自身の姿がリンクしたんだと思います」と懐かしそうに振り返った。

修業時代に浜田省吾ファンが集うバーに通っていた辻さんは、「ファンが集まるアットホームな雰囲気を自分の夢に取り入れたら面白いな」と考えたそうだ。17年前に念願叶ってお店を持つと、BGMは浜田省吾の楽曲オンリーに。店内には「Home Bound」のジャケットの世界観をモチーフにした古びたレンガの柱を配置し、レコードやポスターを展示した。

入口横に置かれた「A PLACE IN THE SUN」のライトボックスは、「僕が違う店で店長をしていたときに、お祝いでハマショーファンがプレゼントしてくれたんです。それを自分のお店をオープンしたときに持ってきました。グッズはまだいっぱいあって、たまに入れ替えたりしています」。今では辻さんが集めたもの以外にミニツアートラックなどの常連客が作った手作りグッズがたくさん飾られている。

ボリューム満点な絶品洋食が地元に愛される店

看板メニューは、濃厚でローカロリーな愛知県三河産のブランド卵・めぐみを2個使ったボリューム満点のオムレツライス(980円)。ケチャップライスの上に乗るふわふわのオムレツは卵の味わいを引き出すため乳製品を使わずに仕上げている。それをナイフで割り開くと、つやつやの半熟卵がトロッと中からとろけ出す。たっぷりの玉ねぎなどの野菜を1週間じっくり煮込んだ、甘めでコクのあるデミグラスソースとの相性も抜群だ。この自慢のデミグラスソースを使った野菜たっぷり煮込みハンバーグ(1280円)も人気。

激辛カレーライス(1080円)、本日のパスタ 鉄板ナポリタン(1280円)は常連客にリピーターが多い隠れた人気メニューだ。いずれのセットにもスープ、サラダ、小鉢2品、ミニデザートとフリードリンクが付く。

店の客層はファン以外の地元のお客さんが多いそうだ。だが、2001年のオープン当初から毎年9月の第1日曜日に開催している周年祭のときは、店が浜田省吾ファン一色になるのだとか。このイベントには、全国各地からハマショーファンが60人以上集い、コピーバンドのライブを楽しむ。告知してから1週間で予約がいっぱいになるほどの人気ぶりだ。

この店には、長く浜田省吾のバックバンドを務める町支寛二、古村敏比古が岐阜でライブを行った際、打ち上げで来店したことがあるそうだ。「もし省吾さんが来たら仕事にならないでしょうね。だから忙しいときにサングラスを外して来てほしいですね。全然気が付かずに、帰っちゃったあとで『来てたんだー』って悔しがるみたいな(笑)。いや、やっぱりそれもちょっと寂しいですね」。辻さんは今日もフライパンを振りながら、そのときを待ちわびている。

店舗情報

住所:岐阜県岐阜市加納奥平町2-40
電話番号:058-273-3992
営業日時:火~日(不定休)
[ランチ]OPEN 11:30 / CLOSE 15:00 (ラストオーダー / 14:00)
[ディナー] OPEN 17:30 / CLOSE 22:00(ラストオーダー / 21:00)
曲のリクエスト:可(混雑時不可)
一番好きな曲:「家路」

取材・文・撮影 / 山田智子

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