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現代日本を泳ぐ気鋭のクリエイターに聞く「現代クリムト講座」

三浦崇宏とクリムトは、石を投げる

特集

第1回

19/3/2(土)

現代クリムト講座の第1回は、「The Breakthrough Company GO」の代表、三浦崇宏に話を聞きます。大手広告代理店の出身でありながら、広告に留まらない様々なクリエイティブ・ディレクションに挑み、挑発的な表現を発信している三浦。そんな彼のアティチュードは、19世紀末ウィーンを騒がせた稀代の画家グスタフ・クリムトの制作態度に重なります。

三浦崇宏。2018年の1年で、急速に彼の名前をTwitterやwebメディアなどで見かけるようになった。そのハッキリした物言いと、キャッチーでありながら思索に富んだ言葉によって彼は、氾濫する140字の激流を巧みに泳ぎ、サバイブし、そして着実に突き進んでいる。

三浦は、2017年に設立された広告やプロモーションのプランニング会社「The Breakthrough Company GO」の代表であり、彼自身もクリエイティブ・ディレクターとして活動する。2017年にカンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルプロダクトデザイン部門銅賞を受賞したTESS社「COGY」や、2018年の年末に公開された「メルカリ」のチラシ広告が代表作として挙げられるだろう。

代表作 ──という単語を無思考に使ってしまったが、他者が三浦自身とその活動を過去のものとして一方的に評価するのは、彼の意にそぐわないかもしれない。そう思わせるほど、三浦は「現在性」を重要視する。

大手広告代理店・博報堂から独立してGOを立ち上げた三浦は、両社の大きなちがいに「速さ」を挙げる。

「大企業だとどうしても、ひとつの変化を決裁するのに、課長、部長、局長、役員、社長……と承認が必要になりますよね。時代の変化よりも社会の変化、企業の変化のほうがやっぱり遅くなってしまいがちです。変化があったときに如何に前もって対応できるか、あるいはその変化に乗り遅れないで乗っかるかが現代社会では問われているので、意思決定の速度を徹底的に上げたかったんですよ。それが独立のいちばんのきっかけでしたね。なので僕にとっては、大企業とか中小企業、零細企業という規模よりも、速さ ──低速企業か高速企業か、が重要だと思っています」。

現在性を重視し高速に変化し続けることを求めた三浦は、独立後にGOを設立し、社名の通り成長と変容を繰り返してきた。広告の制作だけでなく企業のコンサルティング、アーティストの支援、プロダクトのプロデュースにまで実績を広げ、現在は小説の執筆も進めていると言う。果たして、彼がそこまでに高速であろうとする「変化」とは、何を求めてのことなのだろうか。

「よく僕は、作品をつくるのでなく現象をつくるのが仕事だって言っているんです。世の中の広告を見ていて、なんでみんな可愛いオシャレなCMばかりをつくるんだろう、と思っている。そういう、世の中のお行儀がいいヤツらを挑発したいんです」。

依頼主から求められているものとは異なる、ということをおそらく自覚しながら、クリムトは1900〜1903年に三部作《哲学》《医学》《法学》をスキャンダラスに描き、多くの批判を浴びることとなる(そしてこのことはのちに、画家のアーティストとしての方向性を決定づける出来事となった)。この一連を、クリムトは「賞賛を求めていた」のではなく、広告やPRの世界で扱われる話題づくりの手法と同様に「議論を起こしたかった」のでは、と三浦は考える。あえて裸の女性を大学講堂に描くことで“知”や“女性”のあり方を問題提起し、話題化を図りたかったのではないだろうか。

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