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『かぐや様は告らせたい』は平野紫耀×橋本環奈の持ち味全開! 少年漫画原作ならではのユニークさ

リアルサウンド

21/1/5(火) 6:00

 映画『かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜』が、1月5日20時57分よりTBS系にて放送される。学園を舞台にした恋愛コメディという点を一括りにして考えてみれば、この『かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜』もまた、2010年代の日本映画を象徴する“キラキラ映画”の系譜に含まれるように思えるのだが、原作コミックの掲載誌が少年誌『週刊ヤングジャンプ』であるという一点によって、大多数が「少女漫画」を原作としたものである“キラキラ映画”とは一線を画す作品といえよう。それでもKing & Princeの平野紫耀が主人公を演じ、ヒロインには橋本環奈というキャスティングの華々しさは、他の“純正”なキラキラ映画よりも格段にキラキラしていると言っても過言ではないだろう。

 物語の舞台はエリートばかりが集う私立秀知院学園。頭脳明晰な生徒会長の白銀御行と、文武両道で大財閥の令嬢である副会長の四宮かぐやは、互いを意識し合う関係にあったが持ち前のプライドの高さが邪魔して、いつのまにか「先に告白した方が負け」という呪縛に囚われてしまう。そして「いかにして相手に告白させるか」のみを追求した頭脳戦を繰り広げていくというわけだが、まあ身もふたもない言い方をしてしまえば学校や周囲の人々を巻き込んだ大掛かりな“意地の張り合い”が展開するという物語である。そのポップさは、いかにも少年漫画らしい。

 そもそも少女漫画を原作とした“キラキラ映画”と、本作のように学園恋愛ストーリーが展開する少年漫画を原作とした作品とを切り分けるものは何か。そのひとつとして挙げられるのは、「超エリートばかりが集う学園」や「大財閥の令嬢」のような、良い意味で“現実性の薄い”設定である。たしかに『花より男子』や『未成年だけどコドモじゃない』もこのような設定を持つわけだが、往々にしてどこにでもいる普通の学生が、進路や家庭環境のような現実的な悩みに直面しながら、恋愛という現実の非現実な部分を追求する庶民性によって共感を生みだすことが“キラキラ映画”の暗黙のルールと言える。

 こうしたキャラクターの内面に介在する性格/性質とは異なる外的要素の設定というのは、少女漫画においては場合によってノイズになり得る危険性があるのだが、現実離れしたエンターテインメント性を追求しがちな少年漫画では決して悪目立ちすることはない。むしろその設定を活かして物語に恋愛要素を生むという異質さが(必然的にエンターテインメント性はコメディ要素に帰結しやすくなるのだが)絶妙なバランスを生むこととなり、この『かぐや様〜』や、本作でメガホンを取った河合勇人監督が以前に実写映画化した『ニセコイ』のような人気作が生まれるわけだ。

 つまりはこの映画版『かぐや様〜』は、共感性の高い恋愛ドラマではなく、コメディの方向へ舵を切れるだけ切った作品なのである。そのコメディ的要素を牽引していくのは、いうまでもなく主人公2人のギャップまみれのキャラクター性である。全国レベルの秀才であり、人を惹きつけるだけのオーラを放ちながらも、こと恋愛になればまったく使いものにならない白銀御行。それをバラエティ番組などで見せる天然純度100%のキャラが親しみやすい平野が演じることで、いわゆるおバカキャラと秀才のギャップが生じ、また『花のち晴れ〜花男 Next Season〜』(TBS系)や『ういらぶ。』で見せてきた十八番である三枚目キャラをさらにユニークなものへと昇華させていく。

 そして徹底的に澄ましたお嬢様キャラでありながらも、こちらも恋愛の駆け引きとなれば空回りしてしまう四宮かぐや。売り出し途上の頃は美少女性を前面に押し出しながらもどこかパンチに欠けていた橋本だったが、『銀魂』をはじめとした福田雄一作品でコメディ演技を開花させたことで、喜劇女優と美少女という一見相反するイメージにあるポジションを器用に往来するスキルを得た。一昨年の『午前0時、キスしに来てよ』で典型的な“キラキラ映画”ヒロインを見事に演じぬいたとはいえ、やはりその持ち味が活きるのは本作のような少年漫画ヒロインなのではないかと思わずにはいられないほどだ。

 この2人が見せる、洗練された見た目とは裏腹に、どこまでもユニークなまま画面の中を動き回る姿は実にコミカルであり、そこに原作キャラクターにかなり寄せたルックが拍車をかける。その点では、主人公2人もさることながら生徒会メンバーである藤原千花役の浅川梨奈と石上優役の佐野勇斗がほど良く主人公たちを食っているといえよう。キャラクターを全面的に立ててコメディを追求し、それでいて恋愛要素もきちんと介在させる。たしかに河合監督が手がけた“キラキラ映画”を考えてみれば、個性的な男性主人公を中心にした『俺物語!!』に、血の繋がらない兄妹を描いた『兄に愛されすぎて困ってます』と、ディテールこそ王道路線から逸脱しつつも、紛れもなく“キラキラ映画”の系譜に沿った作品ばかり。だからこそ、その職人技によって暗黙のルールを超越し、少年映画でありながら“キラキラ映画”の路線に乗ることに成功しているわけだ。

 あえて本作を括るならば “準キラキラ映画”といったところか。実はもうひとつ“キラキラ映画”と異なる部分が挙げられる。それはストーリー上の帰結点であり、“キラキラ映画”においては学園生活を構成するあらゆる要素が副次的なものとなり、恋愛の成就というシンプルなゴールにたどり着くために物語が運ばれる。しかし本作では、「生徒会」という居場所への愛おしさと、そこから生じる友情への比率が著しく高くなり、御行とかぐやの恋愛模様に進展こそあれど成就とまでは至らない。それはすなわち、この物語にいくつものゴールの可能性が残されているということでもあり(元々原作の要素をかき集めたストーリーで展開していたわけだが)、まだ次なる物語を作り出せる余地が残っているということでもあろう。

■久保田和馬
1989年生まれ。映画ライター/評論・研究。好きな映画監督はアラン・レネ、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■放送情報
『かぐや様は告らせたい ~天才たちの恋愛頭脳戦~』
TBS系にて、1月5日(火)20:57〜23:12放送
出演:平野紫耀(King & Prince)、橋本環奈、佐野勇斗、池間夏海、浅川梨奈、ゆうたろう、堀田真由、高嶋政宏、佐藤二朗
原作:『かぐや様は告らせたい ~天才たちの恋愛頭脳戦~』(赤坂アカ/集英社・週刊ヤングジャンプ連載中)   
企画プロデュース:平野隆
脚本:徳永友一
監督:河合勇人
(c)2019 映画「かぐや様は告らせたい」製作委員会 (c)赤坂アカ/集英社
公式サイト:https://kaguyasama-movie.com/

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