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サンダンス映画祭:ジョン・ボイエガ主演『892』

ぴあ

『892』 (c)Sundance.org

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ジョン・ボイエガ主演の『892』は、実話にもとづく衝撃のスリラー。ボイエガ演じるブライアン・イーズリーは、退役軍人。妻と別れ、安いモーテルで暮らす彼は、ある日、爆弾を持って銀行を訪れ、ふたりの職員を人質に取る。だが、彼の狙いはお金を盗むことではない。彼にはまた、人質を傷つけるつもりもない。国のために奉仕した彼が本来もらえるべき手当が支払われないことで絶望的になった彼は、こんな強引な形でメッセージを送ろうとしているのだ。

アビー・ダマリス・コービン監督は、2018年にオンラインに出たこの事件についての記事を読み、強く心を打たれた。「この話は語られなければならない」と思った彼女は、早速、イギリス人の戯曲家クワメ・クウェイ=アーマーと一緒に脚本を書き始める。執筆を終えると、クウェイ=アーマーはすぐボイエガのエージェントに連絡。上映後のヴァーチャル会見で、ボイエガは、「僕の最初の仕事はクワメの作品。一周して戻ってきた気がしたよ」と語っている。

映画の中では、ボイエガが銀行の中から外と電話で話すシーンが多数出てくるが、それらのシーンでは、実際にそのキャラクターを演じる俳優が休みの日でも出てきてくれて演じてくれたともボイエガは明かす。人質のひとりを演じるオリヴィア・ワシントンは、「みんな喜んで休日出勤してくれたわ。それはありがたかった。別の人がセリフを読むのとは明らかに違うから」と述べている。

今作でのボイエガの演技を誰よりも先に評価したのは、イーズリーの元妻。「ジョンはまさに私の元夫のように見えた。彼をあんなふうに演じてくれて嬉しい」と、元妻は監督らに語ったそうだ。強いメッセージを持つ今作について、コービン監督は「観客に今のこの状況を知ってほしい。そして、映画を見た後も忘れないでほしい」と語った。

文=猿渡由紀

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