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『幽☆遊☆白書』桑原和真は”漢の中の漢”だーー人間味あふれる熱血漢の魅力

リアルサウンド

20/8/17(月) 16:02

 1994年に惜しまれつつ連載が終了した『幽☆遊☆白書』。数々の個性的なキャラクターが登場し、テンポの良いストーリーは多くの読者の心を鷲掴みにした。

 ついつい蔵馬や飛影などの妖怪に目を向けてしまいがちだが、縁の下の力持ち的存在、桑原和真をなくしてこの作品は語れない。人間でありながら高い戦闘能力を持ち、数々の困難を乗り越えてきた”正義感たっぷりの不良”だ。

漢の中の漢、桑原

 普通なら「正義」と「不良」という言葉はイコールにならないと思うが、桑原の場合はこの二つが相まっているからこそ面白い。喧嘩好きだが犯罪には手を染めない、仲間を大切にするなど自分のポリシーがしっかりと固まっている、言わば”漢の中の漢”なのだ。更にそこへ猫好きというギャップが加わり、不思議な親近感を覚えさせるものがある。

 幽助と顔を合わせれば喧嘩ばかりしているが、いざという時には本気で助け合う友情もアツい。つい昨日まで普通の中学生だった男が、仲間のために命を張るなどそうそう出来ることではないだろう。

 そんな桑原の仙水戦での幽助の死を知ったあとの、悲しみに打ち震える姿は読者にとっても耐えがたいものがあった。今までお互いの友情が深いことは分かっていたものの、それを再確認させられたように思える。彼の人情深さ、そして正義感が痛いほどに伝わってくる、涙なしでは読めないシーンだ。

 そんな桑原の最大の魅力といえば、火事場の馬鹿力で勝利を掴んでしまうことだ。戸愚呂兄戦では何度体を斬っても繋げてしまい、心臓などの急所の位置を自在に変えることができる戸愚呂兄に苦戦。トドメを刺される寸前にまで陥るも、「美しい魔闘家」鈴木から譲り受けた闇アイテム「試しの剣」の力で戸愚呂兄をノックアウトした。相手の弱点を発見するまでには至らなかったが、「お前の体をぜんぶぶっ潰したらどうなるんだ」と霊剣の形を自在に変えられる「試しの剣」により球体になった霊剣で体すべてを潰すという、勢い任せな部分も彼らしい。

 追い詰められるほど火事場の馬鹿力を発揮するタイプのようで、実は映画版『炎の絆』の魔舎裏戦でも似たような戦い方となっている。予想の斜め上を行く行動で周りをアッと驚かせる、そんなカリスマ的魅力が桑原には備わっているのだ。

 魔界トーナメント編では彼の不参加を残念に思った人も多いだろう。しかし幽助の思い出の中には必ず桑原の姿があり、蔵馬とは時折顔を合わせていた。途中から登場しなくなったものの、浦飯チームとして、そして一人の人間としての存在感が大きい。

心に響く桑原の存在

 それもこれも、すべては彼の人間性から来ているものに違いない。元々は妖怪と住む世界も違い、ただ戦いを共にしただけなのならここまでの存在感は放てないだろう。いつでも全力でぶつかり、真っすぐな気持ちを忘れない桑原は我々の心にジーンと響くものがあった。彼には”最も人間らしい”という言葉がよく似合う。正真正銘の人間なのだから、当たり前なのだけれども。

 男性なら親友にしたい、女性なら夫にしたい(?)、つい側に寄りたくなってしまう男、それが桑原和真だ。『幽☆遊☆白書』は何も妖怪達だけで成り立っている作品ではない。こうした縁の下の力持ちがいるからこそ、面白味が倍増するのだ。

■たかなし亜妖
平成生まれのサブカル系ライター。ゲームシナリオライターとしての顔も持つ。得意技は飲み歩きと自炊。趣味はホラー映画鑑賞。

■書籍情報
『幽☆遊☆白書 完全版(3)』
冨樫義博 著
価格:本体1,143円+税
出版社:集英社
公式サイト

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