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竹野内豊×C・ケイト・フォックス、実在の人物を見事に表現 『いだてん』が描いた夫婦愛の形

リアルサウンド

19/3/4(月) 18:30

 オリンピック開催地であるストックホルムへ向かう金栗四三(中村勘九郎)らの道中が描かれた大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』(NHK総合)第9話。四三と弥彦(生田斗真)の監督として同行する大森兵蔵(竹野内豊)と安仁子(シャーロット・ケイト・フォックス)の強い夫婦愛が伝わる回となった。

参考:『いだてん』は“ダメな庶民のダメな話”を綴る? 通常の大河ドラマとは異なる2つのポイント

 四三と弥彦は、新橋駅を出てストックホルムに向け旅立つ。ストックホルムまでは、ウラジオストクやハルビンを経由し、述べ17日間の旅である。四三はそこで監督の兵蔵と安仁子のハネムーンのような態度や外国人の横柄さを目にすることになり、不安を募らせる。

 日本人選手団の監督として同行している兵蔵は、アメリカへの留学経験があり、日本にバレーボールとバスケットボールを持ち込んだパイオニアとされている。物腰の柔らかい男性ではあるが、“キザな男”に映ってしまうため、四三らとともにストックホルムへ向かいたがっていた可児(古舘寛治)や永井(杉本哲太)からはやっかまれている。

 竹野内豊は、可児らにやっかまれても、外国人の横暴な態度に触れても決して動じない、終始穏やかな兵蔵を演じている。シベリア鉄道の長い旅路の中、四三や弥彦が慣れない環境や不安になるような出来事に戸惑おうとも、兵蔵の物腰は柔らかいままだ。

 兵蔵の表情は、感情が表に出やすい四三や弥彦とは違い、あまり豊かではない。どちらかといえば、何を考え、何を思っているのかが伝わりにくいキャラクターである。しかし竹野内が表情豊かに兵蔵の感情を表さないことには理由があったと気づかされる。中盤、妻・安仁子の口から、兵蔵は肺を患っておりもう長くはないということが明かされる。兵蔵はそんな体でありながら、日本にスポーツを浸透させる一心で監督に名乗り出たのだ。道中、兵蔵の体調は悪化する。

 だが、兵蔵は自身の病気について語ることはない。妻・安仁子への深い愛情と、日本のオリンピック初出場への強い思い。その2つの思い以外を阻む自身の病気については口にせず、表情にも表そうとしないのだ。決して表情豊かなキャラクターではなくとも、兵蔵の強い信念は伝わってくる。

 兵蔵を支える妻・安仁子は、夫とは対照的に感情をあらわにすることが多い。初登場時から特徴的な高笑いと強気な発言で、兵蔵と同じく可児や永井からやっかまれる存在だった。しかし兵蔵の強い信念を横で見守り続けてきたからこそ、強気な態度を崩さず、四三や弥彦にテーブルマナーや英語を厳しく指導し続けたのだろう。

 兵蔵にだけ見せる安仁子の甘い表情、ハネムーンのような態度に対して、四三や弥彦は冷めた表情を見せる。しかし劇中盤で明かされた兵蔵の病状を考えると、安仁子演じるシャーロットが見せた柔和な表情は、限られた兵蔵との時間を大切に過ごす、彼女にとって束の間の時間だということが伝わってくる。妻として、パートナーとして、夫を支え続ける安仁子の強さを、シャーロットは凛とした表情で演じているのだ。

 ドラマ本編放送後に放映される『いだてん紀行』では、元々画家であった安仁子が描いた兵蔵の肖像画が放送された。兵蔵の横顔が描かれたその肖像画からは、安仁子がどれだけ彼を愛していたかが伝わってくる。劇中やっかまれがちな大森夫妻だが、国も社会的立場も超えて結ばれた2人の関係は、その振る舞いから確かに伝わってくる。史実に基づいた2人の関係を、竹野内とシャーロットが丁寧になぞっていることが伺える。

 第9話最後、ストックホルムへ到着した四三ら一行。オリンピック会場に降り立ったシーンでは、四三や弥彦の目線をなぞるように映像が1人称視点となり、彼らが感じたであろう興奮がそのまま伝わるような演出も魅力的だった。ストックホルムオリンピックまであと1カ月。どのような運命が彼らを待ち受けているのだろうか。(片山香帆)

※古舘寛治の「舘」の字は、正しくは、外字の「舎官」。

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