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『おっさんずラブ-in the sky-』恋に破れゆく黒澤、四宮、成瀬  “好きな人の幸せを願う”愛の行方は?

リアルサウンド

19/12/15(日) 12:30

「愛があるじゃないか。“愛がある”と、俺は思うよ」

 お客さま感謝デーのイベントを一新することで、CAのみんなにさらなる負担をかけてしまったことを省みる獅子丸(山崎育三郎)。社員の温かさをファン感謝デーに活かしたかった……、そう落ち込む彼に、黒澤キャプテン(吉田鋼太郎)はこう言葉をかける。『おっさんずラブ』という題名をもってして、このドラマは常に「この世界には愛がある」ということを必死に伝えてきたように思う。まっすぐに相手のことを考えて部下を叱る姿にも、みんなの強みを活かして会社をよくしようとする意思にも、あるいは、好きな人の幸せを願って身を引く姿にも……。「相手のことを想う愛」はそこかしこに転がっていて、でもその愛が結実することはないということに気づかされてしまう『おっさんずラブ-in the sky-』(テレビ朝日系)第7話、悲しみの連鎖。

参考:次回場面写真はこちらから

 好きな人が幸せになってくれればそれでいいーー。そう言わんばかりに、相手のことを想って身を引いていくものたち。娘である緋夏(佐津川愛美)のために一度は身を引いた黒澤キャプテン。その緋夏は、春田(田中圭)には好きな人がいると感じとり、追うことをやめてしまう。四宮(戸次重幸)が春田と過ごした1週間、そのことに対して成瀬(千葉雄大)が口出しすることはなかったし、春田にしても、好きな人=成瀬が四宮にアプローチするために悩んでいると、相談に乗り、あろうことか背中を押してしまう。

 また、相手へのアドバイス・指摘が、言った本人に反射してしまうというのが、「愛がある」にも通じる第7話のテーマだったようにも思う。父親が、「ある人を好きになってしまったんだ」「何度も諦めようとしたけど、まだ諦めきれずにいる」と吐露すれば、「いいじゃん、諦めなくて。だってお父さんの人生だよ。好きにしたらいいじゃん」と緋夏は後押しする。四宮へのアプローチの仕方を間違えたと反省し、「キスまでにやらなきゃいけないことってあるんですか?」と成瀬に問われれば、「あるだろその、遊び行ったり、ごはん行ったり」と春田は答える。まるで、いきなり成瀬にキスしてしまった自分へのアドバイスみたいに、その言葉は響くことになる。また、四宮にしてもそうだ。キッパリと成瀬から向けられた想いを断ったあと、「行ってやれよ、成瀬のところ。早く!」と春田が成瀬を追うことを促す。そんな四宮は、彼らのことを思ってか、寮を出てしまう。

 そんな風に、『おっさんずラブ』の登場人物は、誰も彼もが、好きな人の悲しむ姿を見たくないと、自分の気持ちを蔑ろにしてしまう人たちなのである。そこにあるのは、紛れもなく愛だ。

 しかし一度身を引くような行動を取ったって、好きになった人への気持ちをすぐに消し去ることなんてできない。嫌いになる要素がないのだから、好きは好きのままであり続けてしまう。再度、黒澤キャプテンが春田へと想いを告げる、第7話のハイライト的場面。ファイナルアプローチはOKかと尋ねると、切なくもNOと返ってきてしまう。あそこで春田が思わず涙を流してしまったのは、結実しない愛の理不尽さを思ってのことなのかもしれない。どこまでいっても、彼らの愛は一方通行のまま。その行き場のない愛は、いったいどこにしまっておけばいいのだろう?

 そんな第7話のラストでは、黒澤キャプテンから「パイロットを辞める」というまさかの発言が。それは春田のことを真に諦めるためなのか、ほかに仕事を続けられない切迫した理由があるのか。いずれにせよ、好きな人の幸せを願いつつ、それでも諦めきれない人間の機微に触れてきた本作である。そのドラマが、最終話にしてどんな回答を示すのか。しっかりと目を見開いて、それぞれの愛の行く末を見届けることにしましょう。(文=原航平)

<次回あらすじ>
突如告げられた、黒澤キャプテン(吉田鋼太郎)のパイロット引退宣言に春田(田中圭)は、自分でも驚くほどに激しく動揺する。一方、社員寮を出て行った整備士・四宮(戸次重幸)が黒澤家に居候していることが発覚! 黒澤の“愛の境地”を学ぶべく、魁黒澤塾に弟子入りしたようで……。尊敬するキャプテンの退役を受け入れられない面々に、ある日黒澤から、呼び出し状が届く。約束の時間、土手に現れた黒澤は、おもむろに「黒澤杯相撲大会」の開催を告げる。そして迎えたクリスマスイブ、黒澤機長のラストフライト。自ら機内アナウンスを志願した春田が、最後に紡ぐ言葉とは?

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