Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

岸井ゆきの、『浦安鉄筋家族』でコメディエンヌに開眼? 濃すぎるキャストとのやりとりに注目

リアルサウンド

20/4/24(金) 10:00

 ありとあらゆる意味で“実写化不可能”と言われた浜岡賢次の伝説のギャグ漫画を、佐藤二朗を主演に迎えて実写ドラマ化し(てしまっ)た『浦安鉄筋家族』。すでに第2話まで放送されているが、テレビ東京の深夜枠といえどもコンプラギリギリを攻めたギャグの連発に、途方もないほどのテンションの高さ。良い意味で“やらかした”異質さと、暴走列車のような無軌道なスピード感は、不思議と見応えがある(が、金曜の夜中に観るにはいささかカロリー消費が激しい)。

参考:【ほか場面写真】喫茶店で見つめ合う岸井と染谷将太

 もっとも「人気漫画の実写化」と「佐藤二朗」、「コメディ」の三つが組み合わさると、勝手に福田雄一作品なのではと思ってしまうのだが、本作の監督を務めるのは『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)の瑠東東一郎。そして脚本を上田誠をはじめとした劇団「ヨーロッパ企画」の面々が手がけているとあって、大沢木家の家の中をメインに繰り広げられるほぼワンシチュエーションのドタバタ感には、舞台劇らしい面白味があふれている。いずれにしても、ヨーロッパ企画作品といえば昨年秋に人気キャラクターをアニメ化して想像を超える大ヒットとなった『映画 すみっコぐらし』が記憶に新しく、その振れ幅の大きさからはヨーロッパ企画の裾野の広さを改めて感じずにはいられまい。

 そんなヨーロッパ企画のメンバーである本多力が見せる長男・晴郎のオタクぶりであったり、十数年前にアクション女優として注目を集めたこともある水野美紀が持ち前の身体能力をムダ遣いして演じる母・順子など、キャスト陣の振り切った演技も見どころのひとつである本作。原作に登場するアクの強いキャラクターを驚異的なまでに再現した花丸木くん役の染谷将太や仁ママ役の宍戸美和公などもインパクト抜群で、なかなか語りどころが尽きないわけだが、ここでは長女・桜役を演じる岸井ゆきのにフォーカスを当ててみたい。

 岸井が本格的にブレイクの波に乗ったのは2018年度後期に放送されたNHK連続テレビ小説『まんぷく』であろう。安藤サクラ演じる主人公の姉夫婦の娘役として、当時26歳でありながら14歳の役を演じ注目を集めた。そして昨年のちょうど今頃に公開されていた今泉力哉監督の『愛がなんだ』では、今泉映画のヒロインらしい不器用な恋にハマる主人公を見事に演じ、先頃発表された日本アカデミー賞では新人俳優賞を受賞。最近ではSOYJOYのCMに出演するなど、大きな飛躍を遂げることになったわけだ。

 もともと10年ほど前からドラマや映画の端役、さらには舞台劇など様々なフィールドで着実にキャリアを積み上げてきた岸井。公式プロフィールを見ると、身長148.5cmと小柄であるが、映像作品で彼女の姿を見ると個性の強さからくる圧倒的なシーンスティーラーとしてのパワフルさがそれをカバーしているようにも映り、まったく小柄な印象を受けないというのが正直なところだ。たとえば2016年に放送されたドラマ『99.9-刑事専門弁護士-』(TBS系)は代表的な例で、彼女が演じたのは松本潤演じる主人公に想いを寄せる売れないシンガーソングライター。毎週のようにドラマのギャグパートとしての色が強い居酒屋のシーンで登場し、空気の読めないキャラクター性で場をかっさらっていくのである。

 そうした限られたシチュエーション下でのコメディ性の強いシーンというのは、いかにインパクトを残すかという瞬発力が求められるものだ。そうした点で今回の『浦安鉄筋家族』も、そのある種舞台演劇ライクなシチュエーションと、共演者たちのこれでもかと言わんばかりのインパクト合戦が軸となっているだけに、現時点での岸井のコメディ適性を試す格好の舞台といえるだろう。しかも岸井自身『前田建設ファンタジー営業部』ですでにヨーロッパ企画作品のコメディを経験しているのも強みだ。今週放送される第3話(3発目)では彼女の演じる桜と、染谷の花丸木の物語がフィーチャーさ れるだけに、とくに楽しみなエピソードとなりそうな予感がただよう。 (文=久保田和馬)

新着エッセイ

新着クリエイター人生

水先案内

アプリで読む