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『半分、青い。』永野芽郁が追い詰められ崩れ落ちていく 「東京・胸騒ぎ編」終幕へ

リアルサウンド

18/7/1(日) 6:00

 『半分、青い。』(NHK総合)には、“神回予告”がある。というのは、ドラマの脚本家・北川悦吏子がTwitterで、その日の放送は神回であることを宣言するものなのだが、第13週「仕事が欲しい!」に至ってはその神回が2日分あった。それが、週の頭月曜日に放送された鈴愛(永野芽郁)と律(佐藤健)が数年ぶりに再会し、律のプロポーズで終わるという衝撃展開の第73話。そして、もう一つが、土曜日に放送された第78話。結婚した律の妻・より子(石橋静河)に会うため、大阪へ行った鈴愛が追い詰められていく、週のラストとなる回だ。

参考:『半分、青い。』第79話では、締切が迫る鈴愛(永野芽郁)の携帯電話に懐かしい声が

 第13週「仕事が欲しい!」では、鈴愛が徐々に壊れていく。大好きな律からのプロポーズを「ごめん。無理だ」と断った4年後の1999年春。28歳になろうとしている鈴愛は漫画の連載も終了し、秋風(豊川悦司)のアシスタントに逆戻り。行き詰まっている鈴愛に追い打ちをかけるかのように、律の結婚報告が届く。律のプロポーズを断った鈴愛の言葉には、「(今は漫画があるから)ごめん。無理だ」という意味が込められていた。しかし、完全に振られたと解釈した律は、ユーコ(清野菜名)とボクテ(志尊淳)が言う“いつのまにか婚”により、より子と結婚。少しずつずれ始めた鈴愛と律の思いは、もう引き返すことのできない大きな溝となって、2人の前に立ち塞がる。

 明らかに鈴愛の表情に異変が現れるのは、葉書で律の結婚を知ったときから。受話器越しに母・晴(松雪泰子)へと確認する「律……結婚した?」というセリフは、幼いときから律と一緒にいた日々を知っている母が、あえて結婚を言ってこなかった意味を飲み込んだ上でのセリフ。虚脱し、さしてやそこまで意味もない実家への電話は、あまりのショックに思考が停止している鈴愛を想像させる。

 葉書に書いてある大阪の律とより子の家に向かう鈴愛。偶然、ベランダに出てきたより子に言われる「よかったら、上がってお待ちください」というセリフは、過去に律と付き合っていた清(古畑星夏)から言われたセリフ、シチュエーションと、生々しくも酷似している。東京に戻った鈴愛は、自ら傷口に塩を塗った常軌を逸した行動に、漫画の創作意欲のためと理由を付け、ネームにぶつける。

 次のシーンは、鈴愛が秋風に描きあげたネームを見せる場面となるが、ここで筆者は北川の神回予告に納得した。カメラは、鈴愛の顔をアップに捉えるが、彼女の表情が映し出すのは、何も期待していない、虚無の心情。取り繕ったような言葉を秋風にぶつけた末に待っているのは、「クソだ」という秋風からの叱咤激励、そう信じていた鈴愛に、秋風は「ああ、うん。いいんじゃないか? よくまとまっている」と投げやりな言葉を送る。すると、鈴愛の表情は虚無から落胆へと変わっていく。秋風から返ってくる言葉は分かりきっていたとしても、ユーコとボクテ、3人で学んだ秋風塾の頃のように、鈴愛は叱ってほしかった。愛の反対は憎しみではなく無関心、というのはマザー・テレサの言葉だが、鈴愛はその秋風の言葉から自分を見限ったのだと判断し、澱のように溜まっていた思いの丈をユーコとボクテにまでぶちまける。結婚の機会を逃し、漫画も売れず、28歳。鈴愛にも、とうに限界はきていた。

 けれど、秋風は鈴愛を見限ったわけではない。秋風は自分の弟子を家族のように大事にする。破門にしたボクテの漫画家としての道をさりげなく働きかけ、ユーコが出て行った秋風ハウスに居場所を残したように。秋風が鈴愛に送った愛の言葉は「漫画を描け」。10年間にも渡る鈴愛と秋風の出会いは、ネームなしでいきなり描く、ときめきに満ちた漫画『神様のメモ』から始まっていた。

 折り返し地点に入った『半分、青い。』は、およそ2カ月に渡った「東京・胸騒ぎ編」も、次週から「人生・怒涛編」へと移り変わっていく。秋風をはじめとした個性豊かな面々がメインとなる週は次がラスト。鈴愛は、漫画家として再起をかけられるのか。(渡辺彰浩)

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