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興収2週連続1位の『アクアマン』 その空前の大ヒットがDC映画に与える影響は?

リアルサウンド

19/2/20(水) 16:00

 先週末の動員ランキングは、『フォルトゥナの瞳』が土日2日間で動員14万1000人、興収1億8800万円をあげて初登場1位に。これは初動の興収比で、百田尚樹原作映画としては前作にあたる『海賊とよばれた男』の66%、三木孝浩監督作品としては前作にあたる『坂道のアポロン』の235%、神木隆之介と有村架純の共演作としては前作にあたる『3月のライオン 前編』の130%という成績。興収の評価の基準をどこに置いたらいいのか少々困惑してしまうが、原作者、監督、出演者、そして恋愛と生死の問題を絡めた作品のテーマも含め、まるで現在の実写日本映画のトレンドの最大公約数的な作品という印象が拭えない本作は、その成績もまた平均的なものになりそうだ。

参考:『アクアマン』4DXが全世界で200万人動員突破目前! ド派手ながらも絶妙な“水と揺れ”の演出

 動員2位の『アクアマン』は、土日2日間で『フォルトゥナの瞳』を上回る興収1億9600万円をあげて、これで興収では2週連続1位となった。ファンムービーの要素が強いこともあって動員が初週に偏りがちなアメコミヒーロー映画にあって、例外的に2週目以降も好調を維持しているというのは、日本以外のマーケットでの同作の傾向とも一致している。先週の本コラムでも書いたように、やはり『アクアマン』はヒーロー映画の歴史においてエポックメイキングな作品だったということだろう。

 さて、2017年の『ワンダーウーマン』で息を吹き返しかけて、同年の『ジャスティス・リーグ』で何回目かの躓きを喫して、今回の『アクアマン』でようやく本格的に新たなスタート地点に立ったと言えるDC映画だが、2019年は今後も話題作が目白押しだ。

 4月9日には、全米公開(4月5日)から間髪を入れず『シャザム!』が日本でも公開される。1940年の初登場時の名前はキャプテン・マーベル(ちなみに「マーベル・コミックス」の設立は1957年)、その後、スーパーマンのパクりだとDCから訴えられて一度は廃刊、版権がDCに買収されて1970年代に復活するというなかなか複雑な生い立ちをもつシャザム。そのような因縁もあって、同作にはスーパーマンもカメオ出演する予定だった。昨年の秋、ヘンリー・カヴィルがスーパーマン役を降板するという第一報が流れたきっかけは、『シャザム!』への参加をスケジュールの理由から断ったことだった。

 また、日本公開日はまだ未定だが、今年10月4日には『ジョーカー』の全米公開が決定している。同作でジョーカーを演じるのはホアキン・フェニックス。舞台の設定は宿敵バットマンが登場する前の時代ということもあって、一連のDC映画とはユニバースも異なる作品となるが、『ダークナイト』を例に挙げるまでもなく、ジョーカーといえばDC作品で最も解釈の自由度と表現のポテンシャルを秘めたキャラクター。大成功か大失敗しかない、今後のDC映画にとって非常に重要な作品となるはずだ。

 興味深いのは、『シャザム!』の監督は『ライト/オフ』『アナベル 死霊人形の誕生』と、これまでホラー映画しか撮ったことのない若手のデビッド・F・サンドバーグで、『ジョーカー』の監督は『ハング・オーバー!』シリーズでお馴染みのコメディ畑どっぷりのトッド・フィリップスであること。さらには、2020年2月公開予定(米国)のマーゴット・ロビーが演じるハーレイ・クインを主人公とする『バーズ・オブ・プレイ』の監督には中国系女性監督キャシー・アンを抜擢。そしてつい先日、ハーレイ・クインも活躍する『スーサイド・スクワッド』続編の監督と脚本を、マーベルから追放されたジェームズ・ガンが手がけるという嬉しいニュースまで届いた。そのラインナップとスタッフの陣容から伝わってくるのは、ユニバースとしての連続性や一貫性などを度外視した、DCの恐ろしいほどの「攻め」の姿勢だ。

 まるでそれらの作品の煽りを食ったかのように、既に撮影を終えてポスト・プロダクションに入っていた『ワンダーウーマン』の続編『ワンダーウーマン 1984』の全米公開日は、2019年11月から2020年6月と大幅に後ろ倒しとなった。こちらも『ジョーカー』同様に過去(1984年)が舞台とはいえ、空前の大ヒットとなった『アクアマン』、現在進行形のシリーズとしてはキャストが宙に浮いてしまっているスーパーマンやバットマン(つい先日、ベン・アフレックがバットマン役からの卒業を正式に表明した)とも関わりの深いキャラクター/シリーズだけに、製作スタート時と大きく変わってしまった現在の状況にどのように対応していくのかが気になるところ。

 現状、スーパーマン役のヘンリー・カヴィルの去就についてはまだ正式な発表はされていないが、もし降板があったとして、それは必ずしもヘンリー・カヴィル側の意向だけによるものとは限らないだろう。『アクアマン』の大ヒットで勢いづいて、この先かつてない変革期へと突入していくDC映画にとって、ヘンリー・カヴィルがスーパーマンを演じることは過去のイメージを引きずることになるという判断があっても不思議ではない。もっとも、まだ作品を観れていないので何とも言えないが、これまでのDC映画のサイクルでいくと次の『シャザム!』でいきなりコケたりする可能性もなきにしもあらずなのだが……。(宇野維正)

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